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職業 《 勇者 》
54話 ハーレムってなんぞ?
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メーシャはタコの足を譲ってもらい、店長に獲った方を紹介してもらう約束を取り付けた。ただ、今日は忙しいらしく会えるのは明日。それまで自由時間となったので観光、兼たこ焼きっぽい食べ物探しをする事にした。
そして、ワルターの厚意で1番信頼しているという人を呼んでくれたのだった。
「私は"アメリー"。ワルター率いる"ハーレムパーティ"の副リーダーで、魔法使いです。どうぞお見知りおきを」
アメリーは若いダークエルフの女性で、身長は170弱で肌は暗めの茶褐色、瞳は黒く、背中まで伸びた髪は銀色にきらめいていた。
上は紺色のローブで下は黒いタイトな長ズボンに茶色のブーツを履いている。戦闘時には、背中にある紫の宝石がはまっている短い杖を使って戦うのだろう。
「副リーダーのアメリーさんね。あーしは勇者のメーシャだよ、よろしくだし~!」
メーシャは元気よく挨拶をしてアメリーとこころよく握手をした。が、瞬間ふとアメリーの言葉が引っかかった。
「……ハーレムってなんぞ?」
メーシャは思わず武士みたいな口調になってしまう。
ハーレムといえば1人の男性を多くの女性が取り囲む、もしくはその逆の娯楽物語ではよくあるやつである。
「ハーレムはハーレムです」
アメリーはそう言うと、ちらっとワルターの方を見て小さく笑ってペラペラとメーシャに教えてくれた。
「……近接戦闘にも魔法にもこれと言って才能がなく、相手を傷つけることも好まない、むしろ落ちこぼれだった子供の頃のワルターはよく女子とおままごとやお絵描きをして過ごしていました。
そんなワルターは他の男子から『男らしくない』揶揄われたり、仲間はずれにされ孤立していきました。
そこに10年ほど前アレッサンドリーテの現ギルドマスターであるデイビッドさんと偶然出会い、師弟関係を築き、厳しすぎるくらいの修業をこなしていきました。そう、男らしくないと言われたのを気にしていたんです。私はワルターはワルターであれば良いと思いましたが、本人はそれだけでは足りなかった様ですね。
……とある日の修業後、デイビッドさんに相談したワルターは今に繋がる考えのひとつに至りました。
『女の子と遊ぶのが男らしくないんじゃない。女の子に隠れてコソコソしているのが男らしくない』のだと。──"初級地魔法"」
「ちょっ、アメリー! 俺ちゃん動けないんだけど……あ、ごめんって! 口までふさがないで……」
止めようとしたワルターの足元を岩魔法で固めてアメリーはもう少し語ってくれた。
「ただ、男らしいというのは自分らしいのか? そう私が問うと、ワルターは少し困った様でした。
そして数ヶ月後デイビッドさんが離れるという日に、ワルターは自分なりの答えを出してひとつ決心しました」
「なになに?」
「自分を慕ってくれる"プリティーベイベー"を守り抜く。それが漢らしさであり、理想の自分の在り方であると。そしてそのハーレムパーティを率いてビッグな存在になると宣言したのでした。
……ちなみに、プリティーベイベーはデイビッドさんの受け売りです。ハーレムというのも当時ワルターの周りに居たのが女の子だけだったので、そうしようとデイビッドさんと相談して決めた様です。……私は"月光の双翼"が良かったんですが、案を言いに行った時には決まっていました」
アメリーはいまだに心残りなのか、ワルターをジト目で見ながらつぶやいた。
「へぇ~。そのハーレムパーティって10年くらい? 結構ベテランだし数十人規模だって話だけど、初期は何人スタートだったの? やっぱり同じ故郷の初期メンバーの絆って強い?」
メーシャはアメリーと下半身が岩漬けにされたワルターに訊く。
「……ふたりです。初期メンバーはワルターと私のふたりだけです。他の女の子たちはそもそも戦いに興味がなかったので。……最初はワルターも弱いし、ふたりとも13、14くらいの子どもですし、ネーミングのせいで近寄りがたいしで2年くらい仲間に入ってくれる人はゼロでしたよ」
「アメリーめちゃくちゃ赤裸々に語るじゃん……。そう言えば、その頃ギルド名を"月光の双翼"に変えないかってアメリーから何度も提案されたっけ」
「駆け出しとは言え、月光の双翼なら入ってもいいと言ってくださった方が10人以上居ましたからね」
それほどネーミングはギルドにとって大切な要素なようだ。
「まあ、今じゃ入りたいってベイベーたちがいっぱいいるし良いんじゃん? ……って、ゴメン呼び出しだわ!」
ワルターのパルトネルに緊急の連絡が入ったようだ。
「私もいきますか?」
アメリーの表情が引き締まる。どうやら戦いのようだ。
「いや、これは俺ちゃんだけで片付けるからアメリーはメーシャちゃんと楽しんでおいで。俺ちゃんが離れてる間データ整理したり、面接したりメンバーの役割を決めたり、近隣で暴れるモンスターを倒したりでで忙しかったっしょ。俺ちゃんもオーク前にちょいと肩慣らししたいし、任せてよ」
ワルターは片手剣を使い、下半身を固めていた岩の脆い部分を器用に切り刻む。
「……分かりました。では、行ってきます」
アメリーは心配する素振りを見せず、むしろ穏やかな表情で挨拶を口にした。ワルターのことを信頼しているのだろう。
「ほいほい。アメリー行ってらっしゃい。メーシャちゃんも、ヒデヨシちゃんも灼熱ちゃんもトゥルケーゼを楽しんでね」
ワルターはそう言うと踵を返して背中を向け、親指をグッと立ててから敵ちへと走っていった。
「……みんな、あの頼もしい背中に憧れてギルドに入りたいと言ってくれるんですよ」
「ありゃ、漢の背中だもんなぁ」
灼熱さんが頷く。
「それで、どこか行きたいところはありますか?」
アメリーがメーシャたちに尋ねた。
「僕は色んな国の穀物を見てみたいです」
ヒデヨシは穀物が大好きで、特に豆には目がないのだ。
「あーしはたこ焼き……小麦粉の生地を丸く焼いたやつがあれば、それを売ってるお店に行きたいかも。あと、ご当地グルメ的なの。あとはなんか有名な観光スポットとかあればそれも」
たこ焼きっぽいものであってたこ焼きは存在しないので、メーシャは説明を少し工夫した。
「あっしは、武具屋を少々覗ければと。武器や防具は装備しねぇが見るのは好きでね。それに、炎の効果が上がるアクセサリーとかあれば買っときてぇ」
灼熱さんは次の戦を見据えているようだ。
「分かりました。ご期待に添えるかは分かりませんがご案内します」
アメリーはニコリと笑い、ついてくるよう手でジェスチャーをする。
「ふふっ。楽しみだな~」
メーシャが広がる町の景色を見て心を躍らせていると、アメリーがふと思い出したように足を止めて口を開いた。
「……そうだ。ハーレムギルドではありますが、男女の割合は6対4で結構男性も多いんですよ。ちなみに、最近ではゴブリンとその上位種のホブゴブリンも仲間に加わったんです」
「……ハーレムってなんぞ?」
メーシャが困惑してまたも武士っぽい口調になってしまう。
「私もそう思います。月光の双翼ななら変にならずに済んだんですけどね」
アメリーはそう付け加えつつも、楽しそうで少しも不満を感じさせなかった。
きっとそのチグハグ感の面白さやワルターとの仲がそうさせてくれるのだろう。
そして、ワルターの厚意で1番信頼しているという人を呼んでくれたのだった。
「私は"アメリー"。ワルター率いる"ハーレムパーティ"の副リーダーで、魔法使いです。どうぞお見知りおきを」
アメリーは若いダークエルフの女性で、身長は170弱で肌は暗めの茶褐色、瞳は黒く、背中まで伸びた髪は銀色にきらめいていた。
上は紺色のローブで下は黒いタイトな長ズボンに茶色のブーツを履いている。戦闘時には、背中にある紫の宝石がはまっている短い杖を使って戦うのだろう。
「副リーダーのアメリーさんね。あーしは勇者のメーシャだよ、よろしくだし~!」
メーシャは元気よく挨拶をしてアメリーとこころよく握手をした。が、瞬間ふとアメリーの言葉が引っかかった。
「……ハーレムってなんぞ?」
メーシャは思わず武士みたいな口調になってしまう。
ハーレムといえば1人の男性を多くの女性が取り囲む、もしくはその逆の娯楽物語ではよくあるやつである。
「ハーレムはハーレムです」
アメリーはそう言うと、ちらっとワルターの方を見て小さく笑ってペラペラとメーシャに教えてくれた。
「……近接戦闘にも魔法にもこれと言って才能がなく、相手を傷つけることも好まない、むしろ落ちこぼれだった子供の頃のワルターはよく女子とおままごとやお絵描きをして過ごしていました。
そんなワルターは他の男子から『男らしくない』揶揄われたり、仲間はずれにされ孤立していきました。
そこに10年ほど前アレッサンドリーテの現ギルドマスターであるデイビッドさんと偶然出会い、師弟関係を築き、厳しすぎるくらいの修業をこなしていきました。そう、男らしくないと言われたのを気にしていたんです。私はワルターはワルターであれば良いと思いましたが、本人はそれだけでは足りなかった様ですね。
……とある日の修業後、デイビッドさんに相談したワルターは今に繋がる考えのひとつに至りました。
『女の子と遊ぶのが男らしくないんじゃない。女の子に隠れてコソコソしているのが男らしくない』のだと。──"初級地魔法"」
「ちょっ、アメリー! 俺ちゃん動けないんだけど……あ、ごめんって! 口までふさがないで……」
止めようとしたワルターの足元を岩魔法で固めてアメリーはもう少し語ってくれた。
「ただ、男らしいというのは自分らしいのか? そう私が問うと、ワルターは少し困った様でした。
そして数ヶ月後デイビッドさんが離れるという日に、ワルターは自分なりの答えを出してひとつ決心しました」
「なになに?」
「自分を慕ってくれる"プリティーベイベー"を守り抜く。それが漢らしさであり、理想の自分の在り方であると。そしてそのハーレムパーティを率いてビッグな存在になると宣言したのでした。
……ちなみに、プリティーベイベーはデイビッドさんの受け売りです。ハーレムというのも当時ワルターの周りに居たのが女の子だけだったので、そうしようとデイビッドさんと相談して決めた様です。……私は"月光の双翼"が良かったんですが、案を言いに行った時には決まっていました」
アメリーはいまだに心残りなのか、ワルターをジト目で見ながらつぶやいた。
「へぇ~。そのハーレムパーティって10年くらい? 結構ベテランだし数十人規模だって話だけど、初期は何人スタートだったの? やっぱり同じ故郷の初期メンバーの絆って強い?」
メーシャはアメリーと下半身が岩漬けにされたワルターに訊く。
「……ふたりです。初期メンバーはワルターと私のふたりだけです。他の女の子たちはそもそも戦いに興味がなかったので。……最初はワルターも弱いし、ふたりとも13、14くらいの子どもですし、ネーミングのせいで近寄りがたいしで2年くらい仲間に入ってくれる人はゼロでしたよ」
「アメリーめちゃくちゃ赤裸々に語るじゃん……。そう言えば、その頃ギルド名を"月光の双翼"に変えないかってアメリーから何度も提案されたっけ」
「駆け出しとは言え、月光の双翼なら入ってもいいと言ってくださった方が10人以上居ましたからね」
それほどネーミングはギルドにとって大切な要素なようだ。
「まあ、今じゃ入りたいってベイベーたちがいっぱいいるし良いんじゃん? ……って、ゴメン呼び出しだわ!」
ワルターのパルトネルに緊急の連絡が入ったようだ。
「私もいきますか?」
アメリーの表情が引き締まる。どうやら戦いのようだ。
「いや、これは俺ちゃんだけで片付けるからアメリーはメーシャちゃんと楽しんでおいで。俺ちゃんが離れてる間データ整理したり、面接したりメンバーの役割を決めたり、近隣で暴れるモンスターを倒したりでで忙しかったっしょ。俺ちゃんもオーク前にちょいと肩慣らししたいし、任せてよ」
ワルターは片手剣を使い、下半身を固めていた岩の脆い部分を器用に切り刻む。
「……分かりました。では、行ってきます」
アメリーは心配する素振りを見せず、むしろ穏やかな表情で挨拶を口にした。ワルターのことを信頼しているのだろう。
「ほいほい。アメリー行ってらっしゃい。メーシャちゃんも、ヒデヨシちゃんも灼熱ちゃんもトゥルケーゼを楽しんでね」
ワルターはそう言うと踵を返して背中を向け、親指をグッと立ててから敵ちへと走っていった。
「……みんな、あの頼もしい背中に憧れてギルドに入りたいと言ってくれるんですよ」
「ありゃ、漢の背中だもんなぁ」
灼熱さんが頷く。
「それで、どこか行きたいところはありますか?」
アメリーがメーシャたちに尋ねた。
「僕は色んな国の穀物を見てみたいです」
ヒデヨシは穀物が大好きで、特に豆には目がないのだ。
「あーしはたこ焼き……小麦粉の生地を丸く焼いたやつがあれば、それを売ってるお店に行きたいかも。あと、ご当地グルメ的なの。あとはなんか有名な観光スポットとかあればそれも」
たこ焼きっぽいものであってたこ焼きは存在しないので、メーシャは説明を少し工夫した。
「あっしは、武具屋を少々覗ければと。武器や防具は装備しねぇが見るのは好きでね。それに、炎の効果が上がるアクセサリーとかあれば買っときてぇ」
灼熱さんは次の戦を見据えているようだ。
「分かりました。ご期待に添えるかは分かりませんがご案内します」
アメリーはニコリと笑い、ついてくるよう手でジェスチャーをする。
「ふふっ。楽しみだな~」
メーシャが広がる町の景色を見て心を躍らせていると、アメリーがふと思い出したように足を止めて口を開いた。
「……そうだ。ハーレムギルドではありますが、男女の割合は6対4で結構男性も多いんですよ。ちなみに、最近ではゴブリンとその上位種のホブゴブリンも仲間に加わったんです」
「……ハーレムってなんぞ?」
メーシャが困惑してまたも武士っぽい口調になってしまう。
「私もそう思います。月光の双翼ななら変にならずに済んだんですけどね」
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