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職業 《 勇者 》
56話 異世界のたこ焼きもどきを探して
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先に出て行った灼熱さんと合流しつつ、ヒデヨシのために色んな国の穀物を大量に買い込み、デウスの言っていた『たこ焼きもどき』を探していた。
「タコスみたいなのと、ホットドッグと唐揚げと……食べ物自体はあるけどなかなか見つかんないね」
メーシャはモグモグしながら辺りを見回すが、それっぽい屋台や食べ物屋さんは見つからない。
ただ、アメリーは確信はないながらもなんとなくの方向は見当がついているような足取りだった。
「……ええっと、確かこの辺りに」
建物の間の路地を通り、古いアパートの横を過ぎ、今はほとんど使われていないさびれた商店街に入った。
「……あ、香ばしい匂いがします」
商店街に入るや否や、小麦粉が焼けるような香りが風に乗ってやってきた。
「でも、まだ見るまではお嬢の望んだものか分かんねえな。ドキドキだぜぃ」
「そ、そうだね。ドキドキだ。てか、何が入ってんだろ? いや、何も入ってないのかな?」
緊張した面持ちでメーシャは一歩、また一歩とはやる気持ちを抑えながら確かな足取りで進んでいく。
「丸いもの……でしたよね? こちらでしょうか?」
そして、とうとうメーシャたちは対面したのだった。
「たこ焼き! 形と大きさは完璧にたこ焼きだ! かかってるソースが赤とか緑だけどっ」
「もどきとしては完璧です!」
築50年以上のさびれてガタが来た出店で店員は熟練した手つきのふくよかなおばあちゃん。メニューには魚と貝、エビ、豚肉と書いてある。看板は日光や経年劣化で色あせてほとんど読めないが、1番大きく書かれた名称の『ダンテ焼き』だけは読み取れた。
「いらっしゃいませ。おや珍しいねえ若い子がこの通りに来るのは」
おばあちゃんは嬉しそうな顔だったが、どことなく切なさを感じさせた。
「そうなの? 確かにあんま人いないけど」
こお店だけでなく、商店街の他のお店もひとりふたり居たら良い方で、殆どのお店はひとりもいない。
そもそも、空いているお店より閉店したお店の方が多いレベルで、これでは人を呼ぶのも難しいだろう。
「昔はここ賑わってたんだけどね、再開発で新しくできた大通りにたくさん大きなお店ができてね、一部の常連さんは来てくれるけど、ほとんどの人はもうこっちを通りすらしなくなっちゃったんだよ」
「そうなんだ」
「それでも夫が切り盛りしてくれたお店だし、四英雄のダンテさんが残した由緒ある食べ物だしと頑張ってきたんだけどねえ……近頃身体も痛いし、お客さんもひとりも来ない日が増えたから、今日でお終いにしようと思ってたんだよ」
どうやらメーシャは最終営業日に来てしまったらしい。
「え!? 閉めちゃうの!?」
「まあでも、食べに来てくれる人がいて良かったよ。最後に誰も来ないのは、さすがにさびしいからねえ」
「マジか……」
無理には止められないだろうが、このまま見過ごせばせっかく見つけたたこ焼きもどきとはまたお別れになってしまう。
それに、笑顔ではいるがおばあちゃんは元気がなく、表情の節々に切なさと無力感からくる憤りのようなものがかい見えた。
メーシャは考えた。このままたこ焼きもどき……もとい、"ダンテ焼き"を食べてお別れをしても良いものか?
「ねえ、おばあちゃん!」
メーシャは決心した。
「な、なんだい?」
おばあちゃんは戸惑ったが、メーシャのまっすぐな目を見て真剣に聞く体勢に入る。
「全盛期は無理でも身体の痛みが取れて、この先大盛況になるとしたら、まだ続けてくれる?」
「……そりゃあ、やりたいけどねえ。でも」
そんな上手い話があるはずない。おばあちゃんは口にはしなかったが、そう心で反芻した。
「あーしの故郷じゃ、こんなカンジの食べ物がめちゃくちゃ売れてんの。しかもひとりじゃない。色んな人があって、色んなお店があって、色んな食感とかダシの配分とか工夫してさ」
「ダンテ焼きが……。今じゃもうここだけかと」
こ世界、フィオールにはもうダンテ焼きのお店がほとんど残っていないのだ。
「今その材料を探しててさ、明日獲れるかもってとこなの。だから……お休みはして良いけど、ちょっと帰ってくるまで待ってて! 実はあーしも故郷では焼いてたんだ! だから、そのノウハウもあるしさ! ……このままさみしく閉店するのは嫌なの! もし信じらんないなら、ちょっと鉄板借りるけどすぐ試食作るし。お願い!」
お店をまわすには足りないが、試食くらいならさっき手に入れたタコ足で足りるだろう。
「……分かった。どうせもう終わるお店だし、そこまで言うならお願いしようかね」
表情の迷いや諦めの気持ちはあっただろうが、おばあちゃんはなんとか了承してくれた。だが、ここからが勝負だ。
おばあちゃんのダンテ焼きを試食し、受けが良いように改善点を見つけ出し、たこ焼きとの調和。出来上がったとしても、そこから販促のための作戦を練らなければならない。
しかし、弱気でいても成功は掴み取れない。
「任せて! このいろはメーシャが、世界をまたぐ至高の真・ダンテ焼きを作ってあげる!!!」
「タコスみたいなのと、ホットドッグと唐揚げと……食べ物自体はあるけどなかなか見つかんないね」
メーシャはモグモグしながら辺りを見回すが、それっぽい屋台や食べ物屋さんは見つからない。
ただ、アメリーは確信はないながらもなんとなくの方向は見当がついているような足取りだった。
「……ええっと、確かこの辺りに」
建物の間の路地を通り、古いアパートの横を過ぎ、今はほとんど使われていないさびれた商店街に入った。
「……あ、香ばしい匂いがします」
商店街に入るや否や、小麦粉が焼けるような香りが風に乗ってやってきた。
「でも、まだ見るまではお嬢の望んだものか分かんねえな。ドキドキだぜぃ」
「そ、そうだね。ドキドキだ。てか、何が入ってんだろ? いや、何も入ってないのかな?」
緊張した面持ちでメーシャは一歩、また一歩とはやる気持ちを抑えながら確かな足取りで進んでいく。
「丸いもの……でしたよね? こちらでしょうか?」
そして、とうとうメーシャたちは対面したのだった。
「たこ焼き! 形と大きさは完璧にたこ焼きだ! かかってるソースが赤とか緑だけどっ」
「もどきとしては完璧です!」
築50年以上のさびれてガタが来た出店で店員は熟練した手つきのふくよかなおばあちゃん。メニューには魚と貝、エビ、豚肉と書いてある。看板は日光や経年劣化で色あせてほとんど読めないが、1番大きく書かれた名称の『ダンテ焼き』だけは読み取れた。
「いらっしゃいませ。おや珍しいねえ若い子がこの通りに来るのは」
おばあちゃんは嬉しそうな顔だったが、どことなく切なさを感じさせた。
「そうなの? 確かにあんま人いないけど」
こお店だけでなく、商店街の他のお店もひとりふたり居たら良い方で、殆どのお店はひとりもいない。
そもそも、空いているお店より閉店したお店の方が多いレベルで、これでは人を呼ぶのも難しいだろう。
「昔はここ賑わってたんだけどね、再開発で新しくできた大通りにたくさん大きなお店ができてね、一部の常連さんは来てくれるけど、ほとんどの人はもうこっちを通りすらしなくなっちゃったんだよ」
「そうなんだ」
「それでも夫が切り盛りしてくれたお店だし、四英雄のダンテさんが残した由緒ある食べ物だしと頑張ってきたんだけどねえ……近頃身体も痛いし、お客さんもひとりも来ない日が増えたから、今日でお終いにしようと思ってたんだよ」
どうやらメーシャは最終営業日に来てしまったらしい。
「え!? 閉めちゃうの!?」
「まあでも、食べに来てくれる人がいて良かったよ。最後に誰も来ないのは、さすがにさびしいからねえ」
「マジか……」
無理には止められないだろうが、このまま見過ごせばせっかく見つけたたこ焼きもどきとはまたお別れになってしまう。
それに、笑顔ではいるがおばあちゃんは元気がなく、表情の節々に切なさと無力感からくる憤りのようなものがかい見えた。
メーシャは考えた。このままたこ焼きもどき……もとい、"ダンテ焼き"を食べてお別れをしても良いものか?
「ねえ、おばあちゃん!」
メーシャは決心した。
「な、なんだい?」
おばあちゃんは戸惑ったが、メーシャのまっすぐな目を見て真剣に聞く体勢に入る。
「全盛期は無理でも身体の痛みが取れて、この先大盛況になるとしたら、まだ続けてくれる?」
「……そりゃあ、やりたいけどねえ。でも」
そんな上手い話があるはずない。おばあちゃんは口にはしなかったが、そう心で反芻した。
「あーしの故郷じゃ、こんなカンジの食べ物がめちゃくちゃ売れてんの。しかもひとりじゃない。色んな人があって、色んなお店があって、色んな食感とかダシの配分とか工夫してさ」
「ダンテ焼きが……。今じゃもうここだけかと」
こ世界、フィオールにはもうダンテ焼きのお店がほとんど残っていないのだ。
「今その材料を探しててさ、明日獲れるかもってとこなの。だから……お休みはして良いけど、ちょっと帰ってくるまで待ってて! 実はあーしも故郷では焼いてたんだ! だから、そのノウハウもあるしさ! ……このままさみしく閉店するのは嫌なの! もし信じらんないなら、ちょっと鉄板借りるけどすぐ試食作るし。お願い!」
お店をまわすには足りないが、試食くらいならさっき手に入れたタコ足で足りるだろう。
「……分かった。どうせもう終わるお店だし、そこまで言うならお願いしようかね」
表情の迷いや諦めの気持ちはあっただろうが、おばあちゃんはなんとか了承してくれた。だが、ここからが勝負だ。
おばあちゃんのダンテ焼きを試食し、受けが良いように改善点を見つけ出し、たこ焼きとの調和。出来上がったとしても、そこから販促のための作戦を練らなければならない。
しかし、弱気でいても成功は掴み取れない。
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