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職業 《 勇者 》
65話 約束と覇王の宝石
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ワルターがラードロのハッフ=ワルフから鈍い金色の宝石を貰って翌日、メーシャが『真・ダンテ焼き屋さん タコタコ』をオープンして軌道に乗せ引き継ぎをしたその夕方。
メーシャは港で潮風を浴びて夕日をながめながら電話をしていた。
『──そのチャピさんのツテで魔王国にもタコタコのお店を置けそうなんだね? じゃあ、手続きとか土地のお話はこちらでやっておくから、メーシャちゃんはシグルドさんに事業拡大の旨とそれに伴うタコの消費量が増えることを伝えてくださいな』
メーシャのスマホからリラックスした雰囲気のカーミラ声が聞こえてくる。
「おけ、ここから輸出するってことね。じゃあ伝えとくわ。カーミラちゃん色々ありがと」
チャピがダンテ焼きが気に入ったとの事で、魔王国でも出店したいと申し出てくれた。
4英雄のひとりダンテは魔王を封印した後、魔王国に終の住処をかまえたという話であり、第二の故郷とも呼ばれゆかりのあるその魔王国で出店できれば名物にもなりそうだ。
『いえいえ。……そうだ、メーシャちゃん』
カーミラは少しおそるおそるといった雰囲気で違う話題を切り出す。
「なあに?」
『まだ先のことなんだけど、ドラゴン=ラードロを倒した後はどうする予定か訊いても良いかな?』
「ん? 詳しくは決まってないけど……幹部がいるなら倒して、ウロボロスの宝珠を取り返して、邪神ゴッパを倒すよ。それがどうかした?」
『……より過酷な戦いになりそう、だよね? なら、仲間も必要かな……と思ったんだけど、さ。どうかな?』
「仲間か……メインはヒデヨシとサンディーのふたりだけ。灼熱さんはドラゴン=ラードロを倒した後わからないとなると、いた方がいいのかな? 一応、宝珠を取り返したらデウスにも戦ってもらおうとは思うけど、上手くいくか分かんないし。でも、そこそこ強くて信頼できるひとがいいよね。背中を任せられないと思う存分戦えないから」
メーシャはちゃっかりものである。
チカラを継承した今、宝珠を取り返したとてデウスがウロボロスのチカラをふたたび手にできるかは分からない。だが、もし可能なら戦力にしてしまおうと言うのだ。
ただそれだけでなく、デウスが邪神にボコボコにされたとのことで、メーシャなりに仕返しの手助けをしたいという気持ちの表れでもあった。
『じゃ、じゃあさっ! 例えば私──』
カーミラが切り出そうとしたその時。
「メーシャさん、昨日の宝石について情報共有をしたく参りました」
ワルターのパーティの副リーダーのアメリーがやって来た。
「金色の……魔王のチカラがどうこうっていう宝石だっけ?」
「そうです」
ラードロ、ハッフ=ワルフが渡した石で、ワルターは町に帰ってきてすぐに解析にかけたのだ。そして、その結果が一夜明けて今日ようやく出たらしい。
ワルターは他の冒険者ギルドシタデルにも情報共有するらしく、代わりにアメリーがメーシャのところに来てくれたのだった。
『あ……。忙しそうだし、これで……』
しょんぼりした様子のカーミラが電話を切ろうとする。
「あ、待って!」
しかし、そこでメーシャが慌てて呼び止めた。
『どうかした?』
「仲間の話!」
『ああ、うん。誰か必要なら……また手配しておくね』
カーミラはタイミングを見失い、あきらめてしまったようだが……。
「ちがうちがう! カーミラちゃんがはいってくれるんでしょ? さっき『例えば私』って言ってたじゃん。カーミラちゃんなら大歓迎だからさ、タイミング良くなったらいつでも言って。
……待ってるからね!」
メーシャにはちゃんと聞こえていた。
『…………はい! 待っててください、馳せ参じます! ……またね』
カーミラはメーシャからの予想外の言葉にさっきまでの曇天のような気持ちが消え去り、晴れやかな早朝のような気分で通話を切るのだった。
「うん、またね」
「……お邪魔しましたか?」
アメリーが確認する。
「ううん、大丈夫だった。……それで、石について何か分かったの?」
「はい。まず──」
アメリーは事細かく結果を報告してくれた。
あの宝石はその内側に炎、水、雷、地、風、光、闇の7つの属性を同じ魔力量だけ内包しているが、それぞれが影響し合い制御し合い、ギリギリの所でバランスをとって形を保っていた。
手のひら大のサイズの石であり魔力量も相応だが、ひとたびチカラを解放すれば町をひとつ更地にできる爆発力があるという。
不安定で危険なものであるが、もし安定化させることができれば空気中の魔力を支配下に置き、己の魔力量を超えたエネルギーを使うことも可能。
7属性を合わせてできた……ワルフの言う『覇王のチカラ』は魔法を元の魔力に戻したり、理論上は魔王やウロボロス以外不可侵の"準・万能"属性の魔法も使用可能らしい。
そして、ここからは可能性の話でしかないが、この準・万能属性魔法は攻撃だけでなく防御にも使える他、付与魔法を応用すれば似た特性の(この場合はウロボロスや魔王のチカラ)も操れるかもしれないとのことだった。
「…………じゃあ、そのハッフ=ワルフが言ってた……その覇王のチカラを使って、取り込んだウロボロスのチカラの本領を発揮させるってのはあながち間違いじゃないんだ」
メーシャが目を細める。
もし相手がこの技術を確実なものとしてしまえば、最悪メーシャにとって天敵のような存在になりかねない。
確実なことは言えないが、デウスが邪神に倒されてしまったのも、魔王や覇王のチカラの前身となる技術が原因の可能性もある。
それに、幹部のひとりも自ら戦うことを考えれば、今度のオーク討伐戦は今まで以上に気合と慎重さが要求されるだろう。
「オーク討伐作戦は1週間後。アレッサンドリーテギルド、トゥルケーゼギルド、アレッサンドリーテ軍、王家近衛騎士団長率いる有志団の連合軍で、一夜のうちに決める予定です。準備をしておいてください」
「分かった。ヒデヨシとサンディーにも伝えとくね」
メーシャとヒデヨシとサンディーはカーミラの率いる有志団、灼熱さんはギルドマスターであるデイビッドが率いるアレッサンドリーテギルド、ワルターやアメリーはトゥルケーゼギルドに割り振られている。
アレッサンドリーテ軍は軍と銘うっているが、その大半を対ドラゴン=ラードロに割いているため実際は1000人程度で練度も低く強いモンスターは任せられない。いわゆるつゆ払いだ。
騎士とギルドは精鋭部隊ではあるが、他のモンスター被害やオーク進行の2次被害の対処にも割り当てられるため、実際に戦場に立つのは合計200人前後で、そこから複数あるオークの拠点を手分けして攻めるため、1部隊につき20~30人いればいい方だった。
対するオーク軍は5000まで膨れ上がり、オーク自体は練度の低い兵士でも対処できるが、オークキングやそれ以上の強さの敵が現れるとギルドの精鋭や騎士、メーシャたち実力のある者でなければ対処できない。
ボスたりえる覇王オーカスとラードロにも戦力を奪われるため少々連合軍側が兵数で不利だろう。
「……っし! 作戦まで修業しまくるかっ!!」
メーシャは港で潮風を浴びて夕日をながめながら電話をしていた。
『──そのチャピさんのツテで魔王国にもタコタコのお店を置けそうなんだね? じゃあ、手続きとか土地のお話はこちらでやっておくから、メーシャちゃんはシグルドさんに事業拡大の旨とそれに伴うタコの消費量が増えることを伝えてくださいな』
メーシャのスマホからリラックスした雰囲気のカーミラ声が聞こえてくる。
「おけ、ここから輸出するってことね。じゃあ伝えとくわ。カーミラちゃん色々ありがと」
チャピがダンテ焼きが気に入ったとの事で、魔王国でも出店したいと申し出てくれた。
4英雄のひとりダンテは魔王を封印した後、魔王国に終の住処をかまえたという話であり、第二の故郷とも呼ばれゆかりのあるその魔王国で出店できれば名物にもなりそうだ。
『いえいえ。……そうだ、メーシャちゃん』
カーミラは少しおそるおそるといった雰囲気で違う話題を切り出す。
「なあに?」
『まだ先のことなんだけど、ドラゴン=ラードロを倒した後はどうする予定か訊いても良いかな?』
「ん? 詳しくは決まってないけど……幹部がいるなら倒して、ウロボロスの宝珠を取り返して、邪神ゴッパを倒すよ。それがどうかした?」
『……より過酷な戦いになりそう、だよね? なら、仲間も必要かな……と思ったんだけど、さ。どうかな?』
「仲間か……メインはヒデヨシとサンディーのふたりだけ。灼熱さんはドラゴン=ラードロを倒した後わからないとなると、いた方がいいのかな? 一応、宝珠を取り返したらデウスにも戦ってもらおうとは思うけど、上手くいくか分かんないし。でも、そこそこ強くて信頼できるひとがいいよね。背中を任せられないと思う存分戦えないから」
メーシャはちゃっかりものである。
チカラを継承した今、宝珠を取り返したとてデウスがウロボロスのチカラをふたたび手にできるかは分からない。だが、もし可能なら戦力にしてしまおうと言うのだ。
ただそれだけでなく、デウスが邪神にボコボコにされたとのことで、メーシャなりに仕返しの手助けをしたいという気持ちの表れでもあった。
『じゃ、じゃあさっ! 例えば私──』
カーミラが切り出そうとしたその時。
「メーシャさん、昨日の宝石について情報共有をしたく参りました」
ワルターのパーティの副リーダーのアメリーがやって来た。
「金色の……魔王のチカラがどうこうっていう宝石だっけ?」
「そうです」
ラードロ、ハッフ=ワルフが渡した石で、ワルターは町に帰ってきてすぐに解析にかけたのだ。そして、その結果が一夜明けて今日ようやく出たらしい。
ワルターは他の冒険者ギルドシタデルにも情報共有するらしく、代わりにアメリーがメーシャのところに来てくれたのだった。
『あ……。忙しそうだし、これで……』
しょんぼりした様子のカーミラが電話を切ろうとする。
「あ、待って!」
しかし、そこでメーシャが慌てて呼び止めた。
『どうかした?』
「仲間の話!」
『ああ、うん。誰か必要なら……また手配しておくね』
カーミラはタイミングを見失い、あきらめてしまったようだが……。
「ちがうちがう! カーミラちゃんがはいってくれるんでしょ? さっき『例えば私』って言ってたじゃん。カーミラちゃんなら大歓迎だからさ、タイミング良くなったらいつでも言って。
……待ってるからね!」
メーシャにはちゃんと聞こえていた。
『…………はい! 待っててください、馳せ参じます! ……またね』
カーミラはメーシャからの予想外の言葉にさっきまでの曇天のような気持ちが消え去り、晴れやかな早朝のような気分で通話を切るのだった。
「うん、またね」
「……お邪魔しましたか?」
アメリーが確認する。
「ううん、大丈夫だった。……それで、石について何か分かったの?」
「はい。まず──」
アメリーは事細かく結果を報告してくれた。
あの宝石はその内側に炎、水、雷、地、風、光、闇の7つの属性を同じ魔力量だけ内包しているが、それぞれが影響し合い制御し合い、ギリギリの所でバランスをとって形を保っていた。
手のひら大のサイズの石であり魔力量も相応だが、ひとたびチカラを解放すれば町をひとつ更地にできる爆発力があるという。
不安定で危険なものであるが、もし安定化させることができれば空気中の魔力を支配下に置き、己の魔力量を超えたエネルギーを使うことも可能。
7属性を合わせてできた……ワルフの言う『覇王のチカラ』は魔法を元の魔力に戻したり、理論上は魔王やウロボロス以外不可侵の"準・万能"属性の魔法も使用可能らしい。
そして、ここからは可能性の話でしかないが、この準・万能属性魔法は攻撃だけでなく防御にも使える他、付与魔法を応用すれば似た特性の(この場合はウロボロスや魔王のチカラ)も操れるかもしれないとのことだった。
「…………じゃあ、そのハッフ=ワルフが言ってた……その覇王のチカラを使って、取り込んだウロボロスのチカラの本領を発揮させるってのはあながち間違いじゃないんだ」
メーシャが目を細める。
もし相手がこの技術を確実なものとしてしまえば、最悪メーシャにとって天敵のような存在になりかねない。
確実なことは言えないが、デウスが邪神に倒されてしまったのも、魔王や覇王のチカラの前身となる技術が原因の可能性もある。
それに、幹部のひとりも自ら戦うことを考えれば、今度のオーク討伐戦は今まで以上に気合と慎重さが要求されるだろう。
「オーク討伐作戦は1週間後。アレッサンドリーテギルド、トゥルケーゼギルド、アレッサンドリーテ軍、王家近衛騎士団長率いる有志団の連合軍で、一夜のうちに決める予定です。準備をしておいてください」
「分かった。ヒデヨシとサンディーにも伝えとくね」
メーシャとヒデヨシとサンディーはカーミラの率いる有志団、灼熱さんはギルドマスターであるデイビッドが率いるアレッサンドリーテギルド、ワルターやアメリーはトゥルケーゼギルドに割り振られている。
アレッサンドリーテ軍は軍と銘うっているが、その大半を対ドラゴン=ラードロに割いているため実際は1000人程度で練度も低く強いモンスターは任せられない。いわゆるつゆ払いだ。
騎士とギルドは精鋭部隊ではあるが、他のモンスター被害やオーク進行の2次被害の対処にも割り当てられるため、実際に戦場に立つのは合計200人前後で、そこから複数あるオークの拠点を手分けして攻めるため、1部隊につき20~30人いればいい方だった。
対するオーク軍は5000まで膨れ上がり、オーク自体は練度の低い兵士でも対処できるが、オークキングやそれ以上の強さの敵が現れるとギルドの精鋭や騎士、メーシャたち実力のある者でなければ対処できない。
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