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第一章 転生
第16話 旅立ち
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「──本当に出ていくの……?」
寂しそうな表情で、アスカが尋ねて来る。
俺は、この村を旅立つ準備に取り掛かっていた。準備と言っても、村で分けて貰った僅かばかりの食料と、幾つかの備品をリュックに詰め込むだけだが。腰には、アンクに貰った短剣も装備した。
「ああ。ずっとここに居ても、これ以上、有益な情報は無さそうだからな。世話になった」
特に、確固たる目的がある訳では無い。ただ、せっかく異世界に転生して来たのだから、少し色々と見て回りたい。それだけだ。自分の事も、わかるならもう少し知りたいし。
俺の瞳。悪魔の子。結局、アンクからは、アスカ以上の話を聞く事は出来なかった。やはり、アンクも俺みたいな例は初めて耳にしたらしい。俺が悪魔の子だと知って驚いてはいたが、特に何かが変わる様子も無かった。アスカの前列もあるから、免疫が出来ているのかも知れない。
手早く荷物を纏め、小屋から出て行こうとすると、アスカに呼び止められた。何事かと思い、振り返る。すると、アスカは突拍子も無い事を言い出した。
「……私も、行く」
「はあ?」
こう言っては何だが、アスカは『悪魔の子』だ。事情を知る、この村で暮らすのが一番いい。確かに、貧しい村ではあるが。村人達も理解があるし、そうするべきだ。俺は、そう考えていた。しかし、アスカは少し違う様だ。
「……やっと、出会えた。運命の人。クロスは誰にも渡さない」
運命の人?
そりゃあ、確かにこの世界では『悪魔の子』と言うのは、相当、珍しい存在らしいけど。運命の人ってのは大袈裟だろう。それに、誰にも渡さないって……ちょっと怖い。
俺が、アスカを宥め、諦める様に促そうとしていると、思わぬ援軍がアスカに現れた。アンクだ。
「ふぉっふぉっふぉっ。アスカも年頃じゃて。それに、同じ境遇に生まれたお主となら、幸せな家庭を築けるやも知れん。儂の可愛い孫娘、連れて行くがいい」
「おいおいおい! 何言ってんだ? それに、家庭って……俺はまだ、所帯を持つ気なんかねえよ!」
敬語も忘れ、思わず素が出た。しかし、アンクは全く気にしていない。アスカに至っては、俯いて頬を赤らめてしまっている。
確かに、アスカは美少女だ。それも、超絶。正直、お嫁さんにしたい。だが、俺の中身はおっさんだ。流石に、罪悪感と言う物がある。何しろ、アスカはまだ16かそこらだ。幾ら何でも、若すぎる。それに、何だか怖いし……たまに。
「私では、駄目……?」
「あ、いや……」
潤んだ目で、懇願する様に見上げて来る。その上目使いは反則だ。
「アスカよ。この旅で、しっかりクロスの心を掴むのじゃぞ?」
「ん。精一杯、尽くす」
強引に話を進めるアンクと、勝手に話を纏めるアスカ。これが、孫と祖父の連携と言う物か。恐ろしい。
「クロスよ。少ないが餞別じゃ……孫を頼むぞ? 何かあれば、何時でも戻って来るがいい」
そう言って、麻の小袋を手渡して来るアンク。
ああ……。
もう、駄目だ。これは。
俺は、悟った。完全に聞く耳を持っていない。既に、アンク達の中では決定事項になっている。俺が、アスカを連れて旅立つ事が。
「はあ……。わかりましたよ。ただ、嫁に貰うとは限りませんよ? あくまで、旅の連れです」
ギリギリの妥協案。最悪、断れる道だけは残しておかなければ。
「構わぬ、構わぬ。儂の自慢の孫娘じゃ。気に入らぬ訳がなかろうて。ふぉっふぉっふぉっ」
アンクは、意にも介して無い。確かに、アスカなら誰でも、男なら惚れてしまいそうだ。俺だって、例外では無い。だが、問題はそこじゃない! 俺は、中身がおっさんなんだ……。
「これから宜しく。クロス……」
控え目に俺のコートの袖を摘み、上目使いで言うアスカ。だから、反則だって言っただろ、それ……。
俺は、抵抗する事を諦めた。
「ハァ……。ああ、宜しくな。アスカ」
──こうして、俺の異世界の旅は、アスカと言う超絶美少女を連れて始まる事になった。
寂しそうな表情で、アスカが尋ねて来る。
俺は、この村を旅立つ準備に取り掛かっていた。準備と言っても、村で分けて貰った僅かばかりの食料と、幾つかの備品をリュックに詰め込むだけだが。腰には、アンクに貰った短剣も装備した。
「ああ。ずっとここに居ても、これ以上、有益な情報は無さそうだからな。世話になった」
特に、確固たる目的がある訳では無い。ただ、せっかく異世界に転生して来たのだから、少し色々と見て回りたい。それだけだ。自分の事も、わかるならもう少し知りたいし。
俺の瞳。悪魔の子。結局、アンクからは、アスカ以上の話を聞く事は出来なかった。やはり、アンクも俺みたいな例は初めて耳にしたらしい。俺が悪魔の子だと知って驚いてはいたが、特に何かが変わる様子も無かった。アスカの前列もあるから、免疫が出来ているのかも知れない。
手早く荷物を纏め、小屋から出て行こうとすると、アスカに呼び止められた。何事かと思い、振り返る。すると、アスカは突拍子も無い事を言い出した。
「……私も、行く」
「はあ?」
こう言っては何だが、アスカは『悪魔の子』だ。事情を知る、この村で暮らすのが一番いい。確かに、貧しい村ではあるが。村人達も理解があるし、そうするべきだ。俺は、そう考えていた。しかし、アスカは少し違う様だ。
「……やっと、出会えた。運命の人。クロスは誰にも渡さない」
運命の人?
そりゃあ、確かにこの世界では『悪魔の子』と言うのは、相当、珍しい存在らしいけど。運命の人ってのは大袈裟だろう。それに、誰にも渡さないって……ちょっと怖い。
俺が、アスカを宥め、諦める様に促そうとしていると、思わぬ援軍がアスカに現れた。アンクだ。
「ふぉっふぉっふぉっ。アスカも年頃じゃて。それに、同じ境遇に生まれたお主となら、幸せな家庭を築けるやも知れん。儂の可愛い孫娘、連れて行くがいい」
「おいおいおい! 何言ってんだ? それに、家庭って……俺はまだ、所帯を持つ気なんかねえよ!」
敬語も忘れ、思わず素が出た。しかし、アンクは全く気にしていない。アスカに至っては、俯いて頬を赤らめてしまっている。
確かに、アスカは美少女だ。それも、超絶。正直、お嫁さんにしたい。だが、俺の中身はおっさんだ。流石に、罪悪感と言う物がある。何しろ、アスカはまだ16かそこらだ。幾ら何でも、若すぎる。それに、何だか怖いし……たまに。
「私では、駄目……?」
「あ、いや……」
潤んだ目で、懇願する様に見上げて来る。その上目使いは反則だ。
「アスカよ。この旅で、しっかりクロスの心を掴むのじゃぞ?」
「ん。精一杯、尽くす」
強引に話を進めるアンクと、勝手に話を纏めるアスカ。これが、孫と祖父の連携と言う物か。恐ろしい。
「クロスよ。少ないが餞別じゃ……孫を頼むぞ? 何かあれば、何時でも戻って来るがいい」
そう言って、麻の小袋を手渡して来るアンク。
ああ……。
もう、駄目だ。これは。
俺は、悟った。完全に聞く耳を持っていない。既に、アンク達の中では決定事項になっている。俺が、アスカを連れて旅立つ事が。
「はあ……。わかりましたよ。ただ、嫁に貰うとは限りませんよ? あくまで、旅の連れです」
ギリギリの妥協案。最悪、断れる道だけは残しておかなければ。
「構わぬ、構わぬ。儂の自慢の孫娘じゃ。気に入らぬ訳がなかろうて。ふぉっふぉっふぉっ」
アンクは、意にも介して無い。確かに、アスカなら誰でも、男なら惚れてしまいそうだ。俺だって、例外では無い。だが、問題はそこじゃない! 俺は、中身がおっさんなんだ……。
「これから宜しく。クロス……」
控え目に俺のコートの袖を摘み、上目使いで言うアスカ。だから、反則だって言っただろ、それ……。
俺は、抵抗する事を諦めた。
「ハァ……。ああ、宜しくな。アスカ」
──こうして、俺の異世界の旅は、アスカと言う超絶美少女を連れて始まる事になった。
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