25 / 44
第二章 人間の国
第25話 純血と混血
しおりを挟む
「──なあ、アスカ。どうして、固有能力の存在を隠す必要があるんだ? 『純血』の中にも固有能力を持つ者はいるんだろう?」
俺は、ベッドに腰掛けるとアスカに尋ねた。
ギルドで、無事に依頼を見繕う事が出来た俺達は、討伐に行くのは明日に回し、宿に戻っていた。ようやく今、これからの行動も指針が決まり、ホッと一息ついた所だ。
「固有能力は、持っているだけでも注目を浴びる……まして、私達はまだ若い。必ず、混血を疑われる」
そう答えながら、アスカは自分の肩に目を向けた。なるほど。確かに、少しでも疑われて、肩を見せろと言われたらお終いだ。何しろ、俺達の肩にある紋様は純血の『星』では無い。お互いに意匠こそ違うが、梵字の様な紋様だ。俺に至っては、レベルが上がると同時に、その意匠は更に禍々しくなっている。
「だけど、何故、ギルドは固有能力を持っているかどうかはチェックしないんだ?」
「固有能力を確認するには、教会の協力がいる。だから、ギルドはそこまで調べない。ギルドは依頼の達成が全てだから。それに、純血の『固有持ち』は、すぐに噂が広まる。自ら、吹聴する者が殆どだから」
なるほど。ようやく理解出来た。どうやら、ギルドと言うのは、そこまで純血には拘っていないらしい。寧ろ、依頼さえこなしてくれるなら、知りたくないと言うのが本音なのかも知れない。それに、純血の『固有持ち』はすぐ噂になる、と言うのもわかる気がする。人と違う能力……そんな物を持って生まれれば、確かに自慢したくなるのが普通だろう。
「ギルドと教会って仲が悪いのか?」
教会の協力が無ければ、固有能力の有無は調べられない。裏を返せば、教会が協力さえすれば済む話だ。なのに、ギルドは教会に頼まない。そこまで拘っていないと言えばそれ迄だが……どうにも引っ掛かる。
「ギルドは良くも悪くも、中立。結果が全ての組織だから。例え犯罪者でも、依頼をこなせば評価される。過去には、亜人を使った事もあるくらい……勿論、混血も」
依頼の為なら、亜人や混血でも使う組織……と言う事か。中々、俺好みだ。しかし、アスカは更に付け加える。
「だけど、それはあくまでギルドだけ。ギルド独自の考え。冒険者達も皆、そうとは限らない」
混血への差別の事だろう。アスカは、少し寂しそうにそう告げた。
「だから、極力隠した方がいいと言う事か。混血を疑われるかも知れない、固有能力の存在は……」
「そう。それに、私達は特に……」
俺は、言いかけたその言葉で思い出した。アスカと同じ、俺の目に嵌められた黒いコンタクト。村を出る時に、アンクから渡された物だ。俺の、紅い瞳が光るのを隠す為に……。
悪魔の子。
やはり、その存在は混血とは比べ物にならないらしい。
「──なあ、アスカ。ギルドのあの水晶、固有能力を見抜けないと知っていたのか?」
俺は、敢えて話題を反らした。アスカは、それに対して淡々と答える。
「あのアリスが言っていた、神の加護……つまり、一般能力。だけど、彼女の言うその神とは『純血教』の神。『純血の神』の加護では、混血の能力を見破る事は出来ない。なぜなら、固有能力は『混血の神』の能力だから」
要点を簡潔に纏め、アスカはそう説明した。
純血の神?
その上、混血の神?
サッパリ理解出来ない俺は、アリスに詳しい説明を求めた。そして、ようやく全てを知る事になる。純血とは、そして、混血とは何なのか。
アスカは語りだす。
その、本当の意味を。
そして、この世界の成り立ちを──。
俺は、ベッドに腰掛けるとアスカに尋ねた。
ギルドで、無事に依頼を見繕う事が出来た俺達は、討伐に行くのは明日に回し、宿に戻っていた。ようやく今、これからの行動も指針が決まり、ホッと一息ついた所だ。
「固有能力は、持っているだけでも注目を浴びる……まして、私達はまだ若い。必ず、混血を疑われる」
そう答えながら、アスカは自分の肩に目を向けた。なるほど。確かに、少しでも疑われて、肩を見せろと言われたらお終いだ。何しろ、俺達の肩にある紋様は純血の『星』では無い。お互いに意匠こそ違うが、梵字の様な紋様だ。俺に至っては、レベルが上がると同時に、その意匠は更に禍々しくなっている。
「だけど、何故、ギルドは固有能力を持っているかどうかはチェックしないんだ?」
「固有能力を確認するには、教会の協力がいる。だから、ギルドはそこまで調べない。ギルドは依頼の達成が全てだから。それに、純血の『固有持ち』は、すぐに噂が広まる。自ら、吹聴する者が殆どだから」
なるほど。ようやく理解出来た。どうやら、ギルドと言うのは、そこまで純血には拘っていないらしい。寧ろ、依頼さえこなしてくれるなら、知りたくないと言うのが本音なのかも知れない。それに、純血の『固有持ち』はすぐ噂になる、と言うのもわかる気がする。人と違う能力……そんな物を持って生まれれば、確かに自慢したくなるのが普通だろう。
「ギルドと教会って仲が悪いのか?」
教会の協力が無ければ、固有能力の有無は調べられない。裏を返せば、教会が協力さえすれば済む話だ。なのに、ギルドは教会に頼まない。そこまで拘っていないと言えばそれ迄だが……どうにも引っ掛かる。
「ギルドは良くも悪くも、中立。結果が全ての組織だから。例え犯罪者でも、依頼をこなせば評価される。過去には、亜人を使った事もあるくらい……勿論、混血も」
依頼の為なら、亜人や混血でも使う組織……と言う事か。中々、俺好みだ。しかし、アスカは更に付け加える。
「だけど、それはあくまでギルドだけ。ギルド独自の考え。冒険者達も皆、そうとは限らない」
混血への差別の事だろう。アスカは、少し寂しそうにそう告げた。
「だから、極力隠した方がいいと言う事か。混血を疑われるかも知れない、固有能力の存在は……」
「そう。それに、私達は特に……」
俺は、言いかけたその言葉で思い出した。アスカと同じ、俺の目に嵌められた黒いコンタクト。村を出る時に、アンクから渡された物だ。俺の、紅い瞳が光るのを隠す為に……。
悪魔の子。
やはり、その存在は混血とは比べ物にならないらしい。
「──なあ、アスカ。ギルドのあの水晶、固有能力を見抜けないと知っていたのか?」
俺は、敢えて話題を反らした。アスカは、それに対して淡々と答える。
「あのアリスが言っていた、神の加護……つまり、一般能力。だけど、彼女の言うその神とは『純血教』の神。『純血の神』の加護では、混血の能力を見破る事は出来ない。なぜなら、固有能力は『混血の神』の能力だから」
要点を簡潔に纏め、アスカはそう説明した。
純血の神?
その上、混血の神?
サッパリ理解出来ない俺は、アリスに詳しい説明を求めた。そして、ようやく全てを知る事になる。純血とは、そして、混血とは何なのか。
アスカは語りだす。
その、本当の意味を。
そして、この世界の成り立ちを──。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる