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第二章 樹海の森編
第26話 魔神
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「おっと……これは失礼。久しぶりに愉快な気持ちにさせて頂いた物で、つい挨拶が遅れました。私には名前等ありませんが……この辺では魔神とか呼ばれているみたいですね」
「「魔神!?」」
「…………」
楓とウォルフが一斉に反応した。確かに予想外の風貌だ。
俺は黙って男の話の続きを待った。
「勿論、私は魔神なんかじゃありませんよ? 勝手にそう呼ばれているだけです」
ほう。ウォルフの言っていた魔神はこいつで間違いない無さそうだが、実際は本物の魔神では無いらしい。じゃあ、こいつは何者なんだ?
「で、その魔神もどきが一体何の用だ?」
「これは手厳しいですねぇ。魔神ではありませんが、魔神並には強いですよ? 私は」
そいつはニヤニヤと笑いながら答えると続けて話を続けた。
「私はしがない悪魔です。更成る力を求めてこの森で研鑽を重ねておりました。しかし私に挑んで来るのは不甲斐無い連中ばかりで……私は退屈していました。しかし突然、凄まじい力を感じたのです。私はすぐに、それが貴方だとわかりました。そこで、失礼ながら試させて頂いたのですが……この様な雑魚では試金石にもならなかった様ですね」
そう言うと、その魔神──いや悪魔はクククッと嬉しそうに、咳払いする様な仕草で口に手を当てて笑い始めた。どうやら、さっきの魔物はこいつの仕業みたいだ。
「え、A級が雑魚……」
楓は自分の常識外の力に戸惑っている。
「真人殿、今度こそ逃げた方がいい。あの魔神……いや悪魔は普通じゃない」
傍に来たウォルフが額に汗を浮かべながら小声で呟いて来た。
「何言ってんだウォルフ。折角お目当てが向こうからやって来てくれたって言うのに。まあ、魔神じゃ無かったけどな。ハハハッ」
どうやらこの悪魔は好戦的なタイプらしい。予想が当たってたみたいだ。俺も相手の出方次第では、腕試しくらいはするつもりだったし……丁度いい。ウォルフは心配してくれているみたいだか……安心しろ。実は俺も普通じゃないんだ。
「つまり俺の力を試しに来たって事だな?」
「フフフッ。言ってしまえば、そう言う事です」
その悪魔は嬉しそうに笑みを浮かべて答えた。
「ま、真人殿……」
「真人様……」
「んじゃあ、戦るか──」
『──来ます!』
キイィィィィィィィィィンッ!!
呆然とする楓達を他所目に戦いを始めようとしていると、悪魔はいきなり襲い掛かってきた。
早いっ!
俺は悪魔の伸びた爪での斬撃を刀で受け止めた。
加速した時間軸だから苦もなく反応する事が出来たけど、逆に言えば加速していなければとんでもない早さだったと言う事だ。こいつ、魔神とか言われるだけの事はある。俺じゃなければ反応する事すら難しかったはずだ。
「……のやろぉ」
「まさかっ!? これに反応しますかっ!!」
悪魔の奴、言ってる割にめちゃくちゃ嬉しそうだ。全身が喜びて打ち震えている。よっぽど相手が居なかったんだろうな。俺の能力もチートだから、気持ちは分かる様な気がする。残念ながら俺の方は全力で行けそうに無いけど。
「安心して全力でかかって来い。これくらいなら何の問題もない。この程度じゃ俺の能力は試せんぞ?」
「クッ……クハハハハハッ!! 最高ですっ! 私は貴方の様な方を待ち焦がれていたっ!」
悪魔は堪え切れなくなった様に満面の笑みを浮かべながら笑った。両手を広げ、仰々しく嬉しさを表現している。
「そりゃあ良かった。俺も色々試したいんだ……死ぬなよ?」
「死ぬなんて、そんな勿体無い事出来ませんよっ!」
悪魔は羽根をバタつかせて俺から離れると、少し距離を置いた宙で静止した。
「では遠慮なく……全力を出させて頂きます──」
そう言った悪魔の顔から笑みが消え、真剣な表情になると全身を薄い光が包み始めた。頭から二本の羊の様な角が生え、鋭い爪が更に鋭く伸びて、細く長い尻尾が現れ垂れ下がった。まさに悪魔という風貌なのだが、何故かそこまで禍々しくは無い。気品すら感じられる雰囲気だ。
「【地獄の爆炎】」
「なっ! じょ、上級魔法っ!?」
俺の足下が爆発する様に弾けると、一気に爆炎が俺を取り囲んだ。炎がうねりを上げながらグルグルと捻れる様にして俺を包み込み、立ち昇って行く。まるで炎の竜巻が生きているみたいだ。
楓は上級魔法を見るのは初めてらしく、腰を抜かしそうな程驚いている。まあ、俺も見るのは初めてだけど……そもそも魔法自体、初めて見た。
「これが魔法か……」
俺は別の意味でも驚いていた。【荷重力世界】の能力で身体能力が爆発的な力を発揮するのは知っている。それは防御力においても例外では無い。実際、これまで怪我らしい怪我等した事も無かった。そして、どうやらそれは魔法に対しても適用されるらしい。
──そう。全く熱くない。
チートにも程がある。何か、この悪魔の悩みが自分の事と重なり始めた。明らかに凄い魔法なのに、何だか申し訳ない気持ちにすらなって来た。
炎は俺の周りの全てを焼き尽くし、一瞬で消えた。地面は窪んで真っ黒な煤塵と化し、焦げ臭い匂いと硝煙が辺りに立ち込めている。とんでもない威力だ。そう、とんでもない威力なんだが……
(…………)
『…………』
「なっ!? む、無傷……」
悪魔は顎が外れんばかりに驚愕の表情で固まっている。うん。わかる。そりゃそうだよな……
『相変わらずですね。さすがです』
(…………言うな)
「「「…………」」」
俺は遠い目で雪に答えた。
楓やウォルフ達は何が起こったのかすらわかっていないみたいだ。三人共、無言で固まっている。
「くっ! 【悪魔の爪】!」
悪魔が先程よりも黒く鋭い爪で斬り掛かってきた。俺は刀で受けずにスッと躱すと、後に跳ねて距離をとった。
「ぐぐっ……!! 【火矢】!! 【火球】!!」
悪魔が火の球と火の矢を乱れ打ちして来た。半ば、やけくその様にも見える。俺は避ける事なく魔法の爆煙に包まれたまま刀を振るった。
「【死神の刃】」
「ぐっ!!」
爆煙を掻き分け、死神の刃が悪魔の右肩を掠めた。どうやら咄嗟に反応して躱したようだ。しかし悪魔の右腕は肩から先が無くなっていた。
「くくっ……ここ迄とは……」
悪魔は驚きながらもその表情はどこか嬉しそうだ。
「今のを避けれるだけでもたいしたもんだ」
「フフフッ。どうやら貴方を試すなんて、おこがましい考えだった様です……私では貴方のお相手は務まらない様だ」
「いや、たまたま相性が悪かっただけだろ。お前は結構、強いと思うぞ?」
この悪魔が強いのは本当だ。実際、俺の動きにも反応してたし、俺は加速しなければ危なかった。それに、この悪魔が長い間強さを求めて来た事に対して、何だか悪い様な気がした。何せ俺、チートだし。気が付けば俺は悪魔を労う様な言葉を口にしていた。
「フフッ、お戯れを。私の……完敗です」
そう言った悪魔は悔しそうではあるが、やはりどこか嬉しそうでもあった。意外に晴れやかな表情で薄く笑みを浮かべている。そして、そのまま話を始めた。
「私は……慢心しておりました。自分は強さを極めたのだと。少なくとも、簡単に負ける様な事は無いと驕っておりました。しかし、どうやら私は自分で強さの限界を決め付けてしまっていた様です。そして強さにはまだまだ上がある事を知りました。私にはまだ、目指すべき上がある。もっと強くなれる。それは私にとって何よりも喜ばしい事です。そして、それを教えて下さった貴方様には感謝の意が絶えません」
悪魔は自らの想いを吐き出すように話し終えると、俺の前で片膝を付いて頭を垂れ、敬意を示した。
どこまでも紳士的な悪魔だ。本当に強さにしか興味がないのかも知れない。悪魔はひと呼吸おくと、跪いたまま更に続けた。
「悪魔は強き者には忠誠を誓い、仕えるもの。私は魔界で仕えるべき主に出会う事が叶いませんでした。ですが、ようやくここに仕えるべき主を見出だす事が出来た様です。どうか、この私を貴方様の配下にお加え下さい」
何っ!?
は、配下?
いきなり何を言い出すんだ、この悪魔は。完全に油断していた。俺は自分の悪人面は自覚しているんだ。この上、本物の悪魔を連れて歩いてどうする!?
『いいんじゃないですか?』
雪が少し笑っている様な声で割り込んで来た。
(どう言う事だ?)
『この悪魔が配下に加われば、この樹海での暮らしはずっと楽になります。それに、この悪魔の真人さんに対する敬意……見所があります』
(いや、見所って……)
雪の変な暴走はさておき、確かに樹海での生活にはメリットがあるな。一応、魔神だと思われてるし。いろいろと樹海の事情にも詳しいかも知れない。うん。配下って何だか偉そうだけど、一人くらいはいてもいいか──
「わかった。俺に仕える事を許そう。俺は真人、瀬上真人だ。今日からお前は俺の唯一の配下になる。お前には今後、腹心としての働きに期待するっ」
やっぱ最初は肝心だからな。ちょっと偉そうだけどこれくらい威厳があった方がいいだろう。
「ははっ! 有難き幸せっ!」
うん。やっぱりこれくらい大げさで丁度いいみたいだ。しかし悪魔とかお前とか、名前が無いと不便だな。
「なあ、お前……名前とか無いのか? なんて呼べばいいか困るんだけど」
「私はただのはぐれ悪魔です。名前の様な物はございません」
「あ、そう……」
悪魔ってそういう物なのか?
だったら勝手に付けてしまおう。名前が無いのは不便過ぎる。
「じゃあ俺が勝手に付けても問題ないか?」
「主より名を頂戴出来るなど、感激の極みにございます」
んー……名前か。どうしよう。悪魔……魔神……マジン……
「よし。今日からお前は『ジン』だ」
適当すぎるかな……
「はっ! このジン。身命を賭して真人様にお使え致します」
まあ、よしとしよう。
『フフフ。これであの女と二人ではなくなりましたね』
(………………)
こうして悪魔『ジン』が俺の配下に加わった。
「「魔神!?」」
「…………」
楓とウォルフが一斉に反応した。確かに予想外の風貌だ。
俺は黙って男の話の続きを待った。
「勿論、私は魔神なんかじゃありませんよ? 勝手にそう呼ばれているだけです」
ほう。ウォルフの言っていた魔神はこいつで間違いない無さそうだが、実際は本物の魔神では無いらしい。じゃあ、こいつは何者なんだ?
「で、その魔神もどきが一体何の用だ?」
「これは手厳しいですねぇ。魔神ではありませんが、魔神並には強いですよ? 私は」
そいつはニヤニヤと笑いながら答えると続けて話を続けた。
「私はしがない悪魔です。更成る力を求めてこの森で研鑽を重ねておりました。しかし私に挑んで来るのは不甲斐無い連中ばかりで……私は退屈していました。しかし突然、凄まじい力を感じたのです。私はすぐに、それが貴方だとわかりました。そこで、失礼ながら試させて頂いたのですが……この様な雑魚では試金石にもならなかった様ですね」
そう言うと、その魔神──いや悪魔はクククッと嬉しそうに、咳払いする様な仕草で口に手を当てて笑い始めた。どうやら、さっきの魔物はこいつの仕業みたいだ。
「え、A級が雑魚……」
楓は自分の常識外の力に戸惑っている。
「真人殿、今度こそ逃げた方がいい。あの魔神……いや悪魔は普通じゃない」
傍に来たウォルフが額に汗を浮かべながら小声で呟いて来た。
「何言ってんだウォルフ。折角お目当てが向こうからやって来てくれたって言うのに。まあ、魔神じゃ無かったけどな。ハハハッ」
どうやらこの悪魔は好戦的なタイプらしい。予想が当たってたみたいだ。俺も相手の出方次第では、腕試しくらいはするつもりだったし……丁度いい。ウォルフは心配してくれているみたいだか……安心しろ。実は俺も普通じゃないんだ。
「つまり俺の力を試しに来たって事だな?」
「フフフッ。言ってしまえば、そう言う事です」
その悪魔は嬉しそうに笑みを浮かべて答えた。
「ま、真人殿……」
「真人様……」
「んじゃあ、戦るか──」
『──来ます!』
キイィィィィィィィィィンッ!!
呆然とする楓達を他所目に戦いを始めようとしていると、悪魔はいきなり襲い掛かってきた。
早いっ!
俺は悪魔の伸びた爪での斬撃を刀で受け止めた。
加速した時間軸だから苦もなく反応する事が出来たけど、逆に言えば加速していなければとんでもない早さだったと言う事だ。こいつ、魔神とか言われるだけの事はある。俺じゃなければ反応する事すら難しかったはずだ。
「……のやろぉ」
「まさかっ!? これに反応しますかっ!!」
悪魔の奴、言ってる割にめちゃくちゃ嬉しそうだ。全身が喜びて打ち震えている。よっぽど相手が居なかったんだろうな。俺の能力もチートだから、気持ちは分かる様な気がする。残念ながら俺の方は全力で行けそうに無いけど。
「安心して全力でかかって来い。これくらいなら何の問題もない。この程度じゃ俺の能力は試せんぞ?」
「クッ……クハハハハハッ!! 最高ですっ! 私は貴方の様な方を待ち焦がれていたっ!」
悪魔は堪え切れなくなった様に満面の笑みを浮かべながら笑った。両手を広げ、仰々しく嬉しさを表現している。
「そりゃあ良かった。俺も色々試したいんだ……死ぬなよ?」
「死ぬなんて、そんな勿体無い事出来ませんよっ!」
悪魔は羽根をバタつかせて俺から離れると、少し距離を置いた宙で静止した。
「では遠慮なく……全力を出させて頂きます──」
そう言った悪魔の顔から笑みが消え、真剣な表情になると全身を薄い光が包み始めた。頭から二本の羊の様な角が生え、鋭い爪が更に鋭く伸びて、細く長い尻尾が現れ垂れ下がった。まさに悪魔という風貌なのだが、何故かそこまで禍々しくは無い。気品すら感じられる雰囲気だ。
「【地獄の爆炎】」
「なっ! じょ、上級魔法っ!?」
俺の足下が爆発する様に弾けると、一気に爆炎が俺を取り囲んだ。炎がうねりを上げながらグルグルと捻れる様にして俺を包み込み、立ち昇って行く。まるで炎の竜巻が生きているみたいだ。
楓は上級魔法を見るのは初めてらしく、腰を抜かしそうな程驚いている。まあ、俺も見るのは初めてだけど……そもそも魔法自体、初めて見た。
「これが魔法か……」
俺は別の意味でも驚いていた。【荷重力世界】の能力で身体能力が爆発的な力を発揮するのは知っている。それは防御力においても例外では無い。実際、これまで怪我らしい怪我等した事も無かった。そして、どうやらそれは魔法に対しても適用されるらしい。
──そう。全く熱くない。
チートにも程がある。何か、この悪魔の悩みが自分の事と重なり始めた。明らかに凄い魔法なのに、何だか申し訳ない気持ちにすらなって来た。
炎は俺の周りの全てを焼き尽くし、一瞬で消えた。地面は窪んで真っ黒な煤塵と化し、焦げ臭い匂いと硝煙が辺りに立ち込めている。とんでもない威力だ。そう、とんでもない威力なんだが……
(…………)
『…………』
「なっ!? む、無傷……」
悪魔は顎が外れんばかりに驚愕の表情で固まっている。うん。わかる。そりゃそうだよな……
『相変わらずですね。さすがです』
(…………言うな)
「「「…………」」」
俺は遠い目で雪に答えた。
楓やウォルフ達は何が起こったのかすらわかっていないみたいだ。三人共、無言で固まっている。
「くっ! 【悪魔の爪】!」
悪魔が先程よりも黒く鋭い爪で斬り掛かってきた。俺は刀で受けずにスッと躱すと、後に跳ねて距離をとった。
「ぐぐっ……!! 【火矢】!! 【火球】!!」
悪魔が火の球と火の矢を乱れ打ちして来た。半ば、やけくその様にも見える。俺は避ける事なく魔法の爆煙に包まれたまま刀を振るった。
「【死神の刃】」
「ぐっ!!」
爆煙を掻き分け、死神の刃が悪魔の右肩を掠めた。どうやら咄嗟に反応して躱したようだ。しかし悪魔の右腕は肩から先が無くなっていた。
「くくっ……ここ迄とは……」
悪魔は驚きながらもその表情はどこか嬉しそうだ。
「今のを避けれるだけでもたいしたもんだ」
「フフフッ。どうやら貴方を試すなんて、おこがましい考えだった様です……私では貴方のお相手は務まらない様だ」
「いや、たまたま相性が悪かっただけだろ。お前は結構、強いと思うぞ?」
この悪魔が強いのは本当だ。実際、俺の動きにも反応してたし、俺は加速しなければ危なかった。それに、この悪魔が長い間強さを求めて来た事に対して、何だか悪い様な気がした。何せ俺、チートだし。気が付けば俺は悪魔を労う様な言葉を口にしていた。
「フフッ、お戯れを。私の……完敗です」
そう言った悪魔は悔しそうではあるが、やはりどこか嬉しそうでもあった。意外に晴れやかな表情で薄く笑みを浮かべている。そして、そのまま話を始めた。
「私は……慢心しておりました。自分は強さを極めたのだと。少なくとも、簡単に負ける様な事は無いと驕っておりました。しかし、どうやら私は自分で強さの限界を決め付けてしまっていた様です。そして強さにはまだまだ上がある事を知りました。私にはまだ、目指すべき上がある。もっと強くなれる。それは私にとって何よりも喜ばしい事です。そして、それを教えて下さった貴方様には感謝の意が絶えません」
悪魔は自らの想いを吐き出すように話し終えると、俺の前で片膝を付いて頭を垂れ、敬意を示した。
どこまでも紳士的な悪魔だ。本当に強さにしか興味がないのかも知れない。悪魔はひと呼吸おくと、跪いたまま更に続けた。
「悪魔は強き者には忠誠を誓い、仕えるもの。私は魔界で仕えるべき主に出会う事が叶いませんでした。ですが、ようやくここに仕えるべき主を見出だす事が出来た様です。どうか、この私を貴方様の配下にお加え下さい」
何っ!?
は、配下?
いきなり何を言い出すんだ、この悪魔は。完全に油断していた。俺は自分の悪人面は自覚しているんだ。この上、本物の悪魔を連れて歩いてどうする!?
『いいんじゃないですか?』
雪が少し笑っている様な声で割り込んで来た。
(どう言う事だ?)
『この悪魔が配下に加われば、この樹海での暮らしはずっと楽になります。それに、この悪魔の真人さんに対する敬意……見所があります』
(いや、見所って……)
雪の変な暴走はさておき、確かに樹海での生活にはメリットがあるな。一応、魔神だと思われてるし。いろいろと樹海の事情にも詳しいかも知れない。うん。配下って何だか偉そうだけど、一人くらいはいてもいいか──
「わかった。俺に仕える事を許そう。俺は真人、瀬上真人だ。今日からお前は俺の唯一の配下になる。お前には今後、腹心としての働きに期待するっ」
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「ははっ! 有難き幸せっ!」
うん。やっぱりこれくらい大げさで丁度いいみたいだ。しかし悪魔とかお前とか、名前が無いと不便だな。
「なあ、お前……名前とか無いのか? なんて呼べばいいか困るんだけど」
「私はただのはぐれ悪魔です。名前の様な物はございません」
「あ、そう……」
悪魔ってそういう物なのか?
だったら勝手に付けてしまおう。名前が無いのは不便過ぎる。
「じゃあ俺が勝手に付けても問題ないか?」
「主より名を頂戴出来るなど、感激の極みにございます」
んー……名前か。どうしよう。悪魔……魔神……マジン……
「よし。今日からお前は『ジン』だ」
適当すぎるかな……
「はっ! このジン。身命を賭して真人様にお使え致します」
まあ、よしとしよう。
『フフフ。これであの女と二人ではなくなりましたね』
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