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第二章 樹海の森編
第35話 偉人の暗躍
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マウロか……
あさかあの鼠人族が関わっていたとはな。
コンに聞いた話じゃチョロチョロと情報操作に動き回っていたらしいが……あくまで獣人達の間だけだった筈だ。
どうやらこれは、コンも把握して無かった話みたいだな。
予想外の展開に、ウォルフ達は困惑してしまっている。天鬼達も此方の反応が予想外だったみたいだ。
「どう言う事ぢゃ?」
天鬼は既に殺気を収め、怪訝そうに俺達の様子を伺っている。
「どうもこうもマウロは──」
「いい。俺から話す」
俺は説明しようとするボアルを止めた。
興奮状態のこいつ等じゃ埒があかない。それに向こうのオウガも興奮している。俺が相手ならそうそう突っかかっても来ないだろう。それにこういう話は頭同士で話した方が早いしな。
「天鬼……見ての通りこいつ等はその使いとやらの話は全く知らん。勿論、宣戦布告もしていない。全く身に覚えのない話だ」
別に俺は東の森なんてどうでもいいんだけどな。ただ、今は一応こいつ等の主だし、此方の主張も言っておかないと後々面倒だ。
「正直に言うと俺は、誰が東の森を支配しようがどうでもいいんだ。俺は誰にも邪魔されずに暮らしたいだけなんでな。ただ今はこいつ等も俺の配下だ……勝手に殺されては困る」
「ぢゃがコウキを殺されたのは間違いない事実ぢゃ。その責任はどう取られるつもりぢゃ?」
俺が鼠人族も含めた、獣人全てを支配下に納めていると思っているのか……見た目は可愛らしい癖に責任とか何とか面倒くさい奴だ。まあ、種族を束ねる首領なんだから、当然なのかもしれないけど。
「勘違いしている様だが、俺の配下はここにいる三人が族長の種族だけだ。ああ、あと狐人族もいたな。何せその四種族だけだ。鼠だの兎だのの事は知らん!」
「ほう……わしがそれを信じるとでも思うのか? 形勢の不利を見たお主等が、その鼠とやらを庇うておるやも知れぬではないか。それともお主等は自分達が無実であると証明できるのかえ?」
このガキ……面倒くさいっ!
可愛い顔して駆け引きか……悪いが俺は、そこまで付き合ってやる程優しくは無い。
「知らん物は知らんし、証明する必要も無い。何度も言うが俺は誰にも邪魔されずに暮らしたいだけなんだ。お前等が信用しないならそれでも構わん。ただ、さっきのお前の言葉を返す様だが、ちょっかいかけて来るって言うのなら、今すぐお前達は皆殺しだ」
俺は少しだけ体に殺気を漲らせた。天鬼の紅とは違う、真っ黒な殺気が静かに俺の周りを漂い始める。
「むっ! ぐう……」
「なっ! がはあっ!」
「こ、これ程とは……」
オウガとショウキは、まるで息が出来ない様に胸を抑えて苦しみ始めた。後ろのキビトも立って要られなくなり、跪いて胸を抑えている。
天鬼だけは何とか平静を装っているみたいだが、額に一筋の汗が伝うのが見て取れた。
「この程度でその有り様ですか……情けない。我が主はまだ、その能力の片鱗すらお見せしていませんよ?」
隣でジンが嘲笑う様に語りかけた。
さすがはジンだ。真横で俺の殺気を受けても平然としている。さすがにウォルフ達は少し苦しそうだが、オウガ達に比べれば持ち堪えている方だろう。
「お、お主は何者ぢゃ?」
平然と嗤うこの男を改めて警戒し始めたのか、天鬼がジンに向かって問い掛けた。
「おや? 先程名乗らせて頂いたかと思ったのですが……私は真人様の腹心を名乗らせて頂いております、ジンと申します。貴女達には魔神とか言われてたみたいですが」
「ま、魔神っ! ひ、東の上流のっ……」
オウガ、びっくりし過ぎだろ……ラビリアから聞いていなかったのか?
「まさか魔神まで配下に加えておったとはの……恐ろしい奴ぢゃ。わしはてっきりあの兎人の戯言かと思おておったのぢゃが……まさか真であったとはのう」
ああ……単純に信じていなかった訳ね。それ位、魔神ってのはこいつ等にとって恐ろしい存在だった訳だ。誰かの配下になるなんてあり得ないと思わせるくらい。
「私の能力等、真人様に比べれば足下にも及びませんよ? その程度で真人様と対等に話し合おう等とは片腹痛い。貴女方はもう少し身の程を弁える必要がありそうですねえ……」
「むっ…!」
「なっ!」
「「ひっ!」」
ジンまで殺気を漏らし始めやがった……ニヤニヤして何だか嬉しそうだし。これは止めないとまた殺っちまいそうだな。
「ジン、止めとけ。まだ話合いの途中だ──」
俺とジンが殺気を解いて、ようやく場が落ち着きを取り戻し始めた。オウガ達は肩で息をしながら、ホッとした様な素振りを見せている。
「で、天鬼。これでわかっただろ? 俺はいつでもお前達くらい皆殺しに出来る。だから鼠人なんざ庇う必要は無いんだ。勿論、兎人達もな。俺達に敵意が無かった事はこれでわかっただろ?」
多少、強引だったかな……だがこれで、もし俺に殺意があれば、自分達はとっくに皆殺しだったって事がわかったはずだ。
「う、うむ……確かにお主の言う通り、見逃されていたのはわしらの方だった様ぢゃ。確かにお主なら、鼠共を庇う必要等無いぢゃろう。こんな回りくどいやり方をせずとも、わしらを皆殺しにすれば済む話ぢゃからな」
「そう言う事だ。まあ俺に刃向かわなけりゃ、別にお前達が何をしようが構いはしねえよ。ただ東の森で勝手に俺の配下に手を出されたら困るんだ。それさえ無けりゃ鼠人達を殺そうが、人間達と協力しようがお前達の好きにすればいい」
俺はこいつ等以外の獣人なんてどうでもいいし、森を誰が支配しようが構わない。俺の邪魔さえしなければな……
「そ、そうか……それは有り難い。東の森さえ開墾出来れば、こ奴らもこれ以上餓えなくて済むのぢゃ。それに人間との共存……わしはこれが上手くいけば、鬼人種だけでなくお主等獣人にとっても悪い話では無いと思おておるのぢゃ……」
人間との共存か……悪いが俺は全く上手く行くとは思えない。恐らく魔物除けか何かに使われて、用済みになれば必ず人間の差別や迫害が始まる。
人間の自分達と違う者に対する差別が、十年や二十年では埋まる様な溝ではないって事を、俺や雪は身に沁みて味わって来たから知っているつもりだ。
「やっていけると思うのか? 人間と共存なんて……」
「正直、難しいぢゃろうの……ぢゃが、どちみちこのままでは鬼人種はジリ貧ぢゃ。幾らこの地の森の恵みが豊富とはいえ、限界という物がある。わしらはこの話に乗るしか一族を紡ぐ術が無いのぢゃ──」
増えた小鬼達を食わせる為か……悲壮な決意だな。
どうやら天鬼も、上手くいかない事は薄々わかっているみたいだ。それでもやるしか無いと判断したという事か……
「それに僅かぢゃが望みはある。この話を持ちかけて来た人間ぢゃ。あの者はどうやら、人間の中でもかなり高い地位におる者らしいのでな。あやつが先頭に立って動いてくれるのなら、ある程度の問題は力で抑えつけれるやもしれん」
権力で差別を抑えつけるつもりか……差別なんてのは見えない所で起こるから厄介なんだ。とても上手く行く手段とは思えない。
だが、天鬼の様子を見る限り、それも解った上で縋り付いているようにも見える……
「しかし……どうにも気になるんだよな。口出しするつもりは無いが、何故わざわざ鬼人種を巻込んで共存なんかを図ろうとするんだ? 開墾したけりゃ力ずくでやって来たのが人間という種族だろう? 数は圧倒的に向こうの方が多いのに……」
どうにも腑に落ちないんだよな……何かが引っかかる。
「それは、この樹海の魔物達から身を守る為であろう。あやつらはひ弱ぢゃからな」
「それでも何千、何万と集まればお前達だって只では済まないだろ。その数でも太刀打ち出来ない様な魔物なら、そもそもお前達がいた所でどうしようも無い──」
まあ、俺かジンなら殺れるかも知れないけど。
「何かが引っかかるんだ。小鬼達の食料の事といい、コンも知らない鼠人族の動きといい……お前に声をかけて来たと言う人間も、何だかタイミングが良すぎる。俺は同じ人間だから何となく分かるんだ──胡散臭いってな」
考え過ぎかも知れないけど……この話は人間にメリットが少な過ぎる。
本当に共存が目的なのか?
そんな人間が本当にいるのか?
俺には裏がある様な気がしてならない。
こいつ等や森がどうなろうと知った事では無いが、何故か物凄く嫌な予感がする。ここで手を打っておかないと、後々面倒な事になりそうな……
とにかく、何でもいいから情報が欲しい。
人間が何を考えているのか……何か手掛かりが欲しい。
「わしもあの者の言葉を全て信じておる訳では無いが……お主は一体、何が気になると言うのぢゃ?」
完全に俺を信用したのか、あどけない顔立ちに戻った天鬼が無防備な仕草で問いかけてきた。
「わからん……何かが……何かが引っ掛かる。そう言えば……天鬼、お前さっきその人間は地位が高いとか言ってたよな? その男の素性とかはわかっているのか?」
それなりの地位にいる人間なら、調べれば何かが分かるかもしれない。
「勿論ぢゃ。ちゃんと素性くらい検めておるわい」
「そいつの名は?」
「名は確か……半兵衛。そうぢゃっ! 確か、あやつの名は──」
俺はその名を聞いて驚愕した。
天鬼の口から出たその名は、俺も知る歴史上の大軍師の名前だった。
「──竹中半兵衛ぢゃ」
あさかあの鼠人族が関わっていたとはな。
コンに聞いた話じゃチョロチョロと情報操作に動き回っていたらしいが……あくまで獣人達の間だけだった筈だ。
どうやらこれは、コンも把握して無かった話みたいだな。
予想外の展開に、ウォルフ達は困惑してしまっている。天鬼達も此方の反応が予想外だったみたいだ。
「どう言う事ぢゃ?」
天鬼は既に殺気を収め、怪訝そうに俺達の様子を伺っている。
「どうもこうもマウロは──」
「いい。俺から話す」
俺は説明しようとするボアルを止めた。
興奮状態のこいつ等じゃ埒があかない。それに向こうのオウガも興奮している。俺が相手ならそうそう突っかかっても来ないだろう。それにこういう話は頭同士で話した方が早いしな。
「天鬼……見ての通りこいつ等はその使いとやらの話は全く知らん。勿論、宣戦布告もしていない。全く身に覚えのない話だ」
別に俺は東の森なんてどうでもいいんだけどな。ただ、今は一応こいつ等の主だし、此方の主張も言っておかないと後々面倒だ。
「正直に言うと俺は、誰が東の森を支配しようがどうでもいいんだ。俺は誰にも邪魔されずに暮らしたいだけなんでな。ただ今はこいつ等も俺の配下だ……勝手に殺されては困る」
「ぢゃがコウキを殺されたのは間違いない事実ぢゃ。その責任はどう取られるつもりぢゃ?」
俺が鼠人族も含めた、獣人全てを支配下に納めていると思っているのか……見た目は可愛らしい癖に責任とか何とか面倒くさい奴だ。まあ、種族を束ねる首領なんだから、当然なのかもしれないけど。
「勘違いしている様だが、俺の配下はここにいる三人が族長の種族だけだ。ああ、あと狐人族もいたな。何せその四種族だけだ。鼠だの兎だのの事は知らん!」
「ほう……わしがそれを信じるとでも思うのか? 形勢の不利を見たお主等が、その鼠とやらを庇うておるやも知れぬではないか。それともお主等は自分達が無実であると証明できるのかえ?」
このガキ……面倒くさいっ!
可愛い顔して駆け引きか……悪いが俺は、そこまで付き合ってやる程優しくは無い。
「知らん物は知らんし、証明する必要も無い。何度も言うが俺は誰にも邪魔されずに暮らしたいだけなんだ。お前等が信用しないならそれでも構わん。ただ、さっきのお前の言葉を返す様だが、ちょっかいかけて来るって言うのなら、今すぐお前達は皆殺しだ」
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「むっ! ぐう……」
「なっ! がはあっ!」
「こ、これ程とは……」
オウガとショウキは、まるで息が出来ない様に胸を抑えて苦しみ始めた。後ろのキビトも立って要られなくなり、跪いて胸を抑えている。
天鬼だけは何とか平静を装っているみたいだが、額に一筋の汗が伝うのが見て取れた。
「この程度でその有り様ですか……情けない。我が主はまだ、その能力の片鱗すらお見せしていませんよ?」
隣でジンが嘲笑う様に語りかけた。
さすがはジンだ。真横で俺の殺気を受けても平然としている。さすがにウォルフ達は少し苦しそうだが、オウガ達に比べれば持ち堪えている方だろう。
「お、お主は何者ぢゃ?」
平然と嗤うこの男を改めて警戒し始めたのか、天鬼がジンに向かって問い掛けた。
「おや? 先程名乗らせて頂いたかと思ったのですが……私は真人様の腹心を名乗らせて頂いております、ジンと申します。貴女達には魔神とか言われてたみたいですが」
「ま、魔神っ! ひ、東の上流のっ……」
オウガ、びっくりし過ぎだろ……ラビリアから聞いていなかったのか?
「まさか魔神まで配下に加えておったとはの……恐ろしい奴ぢゃ。わしはてっきりあの兎人の戯言かと思おておったのぢゃが……まさか真であったとはのう」
ああ……単純に信じていなかった訳ね。それ位、魔神ってのはこいつ等にとって恐ろしい存在だった訳だ。誰かの配下になるなんてあり得ないと思わせるくらい。
「私の能力等、真人様に比べれば足下にも及びませんよ? その程度で真人様と対等に話し合おう等とは片腹痛い。貴女方はもう少し身の程を弁える必要がありそうですねえ……」
「むっ…!」
「なっ!」
「「ひっ!」」
ジンまで殺気を漏らし始めやがった……ニヤニヤして何だか嬉しそうだし。これは止めないとまた殺っちまいそうだな。
「ジン、止めとけ。まだ話合いの途中だ──」
俺とジンが殺気を解いて、ようやく場が落ち着きを取り戻し始めた。オウガ達は肩で息をしながら、ホッとした様な素振りを見せている。
「で、天鬼。これでわかっただろ? 俺はいつでもお前達くらい皆殺しに出来る。だから鼠人なんざ庇う必要は無いんだ。勿論、兎人達もな。俺達に敵意が無かった事はこれでわかっただろ?」
多少、強引だったかな……だがこれで、もし俺に殺意があれば、自分達はとっくに皆殺しだったって事がわかったはずだ。
「う、うむ……確かにお主の言う通り、見逃されていたのはわしらの方だった様ぢゃ。確かにお主なら、鼠共を庇う必要等無いぢゃろう。こんな回りくどいやり方をせずとも、わしらを皆殺しにすれば済む話ぢゃからな」
「そう言う事だ。まあ俺に刃向かわなけりゃ、別にお前達が何をしようが構いはしねえよ。ただ東の森で勝手に俺の配下に手を出されたら困るんだ。それさえ無けりゃ鼠人達を殺そうが、人間達と協力しようがお前達の好きにすればいい」
俺はこいつ等以外の獣人なんてどうでもいいし、森を誰が支配しようが構わない。俺の邪魔さえしなければな……
「そ、そうか……それは有り難い。東の森さえ開墾出来れば、こ奴らもこれ以上餓えなくて済むのぢゃ。それに人間との共存……わしはこれが上手くいけば、鬼人種だけでなくお主等獣人にとっても悪い話では無いと思おておるのぢゃ……」
人間との共存か……悪いが俺は全く上手く行くとは思えない。恐らく魔物除けか何かに使われて、用済みになれば必ず人間の差別や迫害が始まる。
人間の自分達と違う者に対する差別が、十年や二十年では埋まる様な溝ではないって事を、俺や雪は身に沁みて味わって来たから知っているつもりだ。
「やっていけると思うのか? 人間と共存なんて……」
「正直、難しいぢゃろうの……ぢゃが、どちみちこのままでは鬼人種はジリ貧ぢゃ。幾らこの地の森の恵みが豊富とはいえ、限界という物がある。わしらはこの話に乗るしか一族を紡ぐ術が無いのぢゃ──」
増えた小鬼達を食わせる為か……悲壮な決意だな。
どうやら天鬼も、上手くいかない事は薄々わかっているみたいだ。それでもやるしか無いと判断したという事か……
「それに僅かぢゃが望みはある。この話を持ちかけて来た人間ぢゃ。あの者はどうやら、人間の中でもかなり高い地位におる者らしいのでな。あやつが先頭に立って動いてくれるのなら、ある程度の問題は力で抑えつけれるやもしれん」
権力で差別を抑えつけるつもりか……差別なんてのは見えない所で起こるから厄介なんだ。とても上手く行く手段とは思えない。
だが、天鬼の様子を見る限り、それも解った上で縋り付いているようにも見える……
「しかし……どうにも気になるんだよな。口出しするつもりは無いが、何故わざわざ鬼人種を巻込んで共存なんかを図ろうとするんだ? 開墾したけりゃ力ずくでやって来たのが人間という種族だろう? 数は圧倒的に向こうの方が多いのに……」
どうにも腑に落ちないんだよな……何かが引っかかる。
「それは、この樹海の魔物達から身を守る為であろう。あやつらはひ弱ぢゃからな」
「それでも何千、何万と集まればお前達だって只では済まないだろ。その数でも太刀打ち出来ない様な魔物なら、そもそもお前達がいた所でどうしようも無い──」
まあ、俺かジンなら殺れるかも知れないけど。
「何かが引っかかるんだ。小鬼達の食料の事といい、コンも知らない鼠人族の動きといい……お前に声をかけて来たと言う人間も、何だかタイミングが良すぎる。俺は同じ人間だから何となく分かるんだ──胡散臭いってな」
考え過ぎかも知れないけど……この話は人間にメリットが少な過ぎる。
本当に共存が目的なのか?
そんな人間が本当にいるのか?
俺には裏がある様な気がしてならない。
こいつ等や森がどうなろうと知った事では無いが、何故か物凄く嫌な予感がする。ここで手を打っておかないと、後々面倒な事になりそうな……
とにかく、何でもいいから情報が欲しい。
人間が何を考えているのか……何か手掛かりが欲しい。
「わしもあの者の言葉を全て信じておる訳では無いが……お主は一体、何が気になると言うのぢゃ?」
完全に俺を信用したのか、あどけない顔立ちに戻った天鬼が無防備な仕草で問いかけてきた。
「わからん……何かが……何かが引っ掛かる。そう言えば……天鬼、お前さっきその人間は地位が高いとか言ってたよな? その男の素性とかはわかっているのか?」
それなりの地位にいる人間なら、調べれば何かが分かるかもしれない。
「勿論ぢゃ。ちゃんと素性くらい検めておるわい」
「そいつの名は?」
「名は確か……半兵衛。そうぢゃっ! 確か、あやつの名は──」
俺はその名を聞いて驚愕した。
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「──竹中半兵衛ぢゃ」
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