白金の機巧人形師

枢氷みをか

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第一章 一部 高夜×ひなぎく

高夜とひなぎく・六編

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 ─────六日目。

「契約内容を変更したい」

 ひなぎくを伴って人形師連盟を訪れた高夜は、開口一番に雪消ゆきぎえに告げる。
 その言葉に雪消は目を白黒とさせ、ひなぎくは盛大に困惑を表わした。

 昨日、侯爵邸に帰ってからずっと物思いにふけるようにため息を落とし、時折、文机ふづくえの引き出しをじっと見つめたかと思うと、やはりため息を落として悄然と背中を丸める高夜の姿があった。いつも共にする夕食の時でさえ元気がないように見えて、ひなぎくはあの菜の花畑での一件を思い出す。

 ずっと傍にいて欲しい─────。

 高夜からの願いに、ひなぎくはついぞ肯定を示す事は出来なかった。それが高夜の心を深く傷つけてしまったのではないかと思えて仕方がない。

 高夜の心は、柔らかい心だ。それ故に今は硬い殻で覆って守っている。それを傷つけてしまった罪悪感に促されるように、ひなぎくは共にした夕食の席で肩を落として謝罪を口にした。

「…謝らないでくれ、ひなぎく。お前は何も悪くはない」

 その謝罪に返って来た高夜の言葉と、穏やかな、だけれどもどこか傷ついたような悲しげな笑顔が、なおさらひなぎくの罪悪感を刺激して、胸の辺りに小さな痛みを伴った。

 結局その夜、高夜の部屋の明かりが消えることはなく、翌朝朝食を終えてすぐにひなぎくと共に人形師連盟に出向き、今に至るのだ。

「…それで、どういった契約内容のご変更をご希望でしょうか?」

 別室に二人を通してそう訊ねる雪消の顔は、半ば予想がついているのか表情が暗い。できない、と暗に伝えているような雪消の表情に気づかないふりをして、高夜は構わずぴしゃりと告げる。

「十日の期限をなくしてもらいたい」

 思った通りの高夜の言葉に、雪消はたまらずため息を落とした。

「……申し訳ございませんが、それをお受けするわけには参りません」
「なぜだ?私が本来の契約者ではないからか?」
「…いいえ、そういう事ではございません」
「なら何だ?納得のいく説明をしてくれ」

 問い詰めるように矢継ぎ早に言葉を返す高夜の瞳は強い。まるで敵愾てきがい心むき出しのめつけるような視線に雪消はたじろいで、だが彼が望む返答が出来ない事になおさら口を噤んで困ったように目線を落とした。

「……ひなぎくは期限をなくす事はおろか、延長する事も出来ないのです」
「だから、その理由を私は訊いている」
「……彼女に与えられたのは十日のみ、期間を短くする事はできても長くする事は叶いません。…私の口からお伝え出来るのはここまでなのです。どうかこれ以上は、ご容赦ください」

 許しを請うように深々とこうべを垂れて、その姿勢を保ったまま高夜の返答を待つ雪消の姿に、高夜はため息を落とした。

「…埒が明かないな。ここの取りまとめ役はどこにいる?その者と直接話す」
「…!」

 雪消の返答を待たずに腰を上げて、高夜はひなぎくを促す。部屋を出ようと握玉ドアノブを握る高夜の手を慌てて抑えて、雪消はひどく困惑したようにかぶりを振った。

「お待ちください…!久遠寺様…!!あの方のお手を煩わせるわけには…!!」
「ならお前が答えろ、雪消。なぜひなぎくに与えられた期間はたった十日だけなのか」
「…っ!!」

 やはり返答に困って口を噤みつつ、それでもこの部屋から出すつもりはないのか高夜の手を抑えたままの雪消に、高夜は呆れたような視線を向ける。強行突破を、と思って握玉ドアノブを握った手に力を込めてみたものの、びくともしないのは彼が鋼で作られた機巧人形だからだろうか。

 高夜はもう一度呆れたようにため息を落として、「どけ」と一言告げようと開いた彼の口の動きを制したのは、扉の向こう側から聞こえた凛としたよく通る声だった。

「…あまり雪消を苛めてくれるな、久遠寺 高夜」
「…!」

 そのまま開いた扉の向こう側にいる人物に、高夜は目を丸くして硬直した。

「…………シャオリー……か?」

 たどたどしく、なおかつ言葉の最後に疑問符がついたのは、目の前にいる人物が『彼』ではなく『彼女』だったからだ。その容姿は、明らかに小李のそれに違いなかった。妙に整った小李譲りの綺麗な顔立ちに、だが小李よりも白い素肌。そして明らかに違うのは、小李よりも華奢で背丈も少し低い、その体躯。小さいながらも胸の膨らみがあるところを見ると、目の前の人物は明らかに女性だろう。

 その目を疑うような光景に、高夜は言葉を失った。
 そんな呆けたような高夜に彼女は小李譲りの綺麗な顔で、だが小李にはない笑みを浮かべる。

「…それは光栄な事だな。小李と見間違われるのは悪くない」
「…!…も、申し訳ございません…!ひいなさま…!!お止めしたのですが─────痛…っ!!」

 高夜同様、突然の登場に驚いたのか呆けたように固まっていた雪消は、我に返って慌てて威儀を正そうとする。それに渋面を取って、ひいなと呼ばれた人物は雪消の額に弾いた指を勢いよく当てた。

「私の前で堅苦しい物言いはやめろと言ったはずだぞ、雪消。様もつけるな」
「……ですが……これが私の性分ですので……」
「ならせめて様をつけて名を呼ぶな。私も好きでこの立場にいるわけじゃない」
「………承知いたしました、ひいなさん……」

 痛む額を抑えながら肩を落として背を丸め、不承不承と承諾する雪消の姿はまるで親に叱られてうなだれる子供のようだ。ひいなはそれに、やれやれと一つため息を落として、未だ自分を注視したまま動かない高夜に視線を移した。

「……貴女は…小李の何だ?双子の姉か何かか?」
「当たらずとも遠からず、と言ったところだな。…それよりもずいぶんと雪消を苛めてくれたものだな。これは素直で嘘のけない、気の優しい奴だ。苛めないで貰おうか」
「……当然の権利を行使しているだけだろう。苛めた覚えはないぞ」
「……苛められた記憶もございません。私も子供ではありませんので、その言いようはいかがなものかと……」

 どちらも心外だとばかりに告げるので、ひいなはたまらずくつくつと笑いを落とす。それがなおさら、小李のようでありながら小李ではないような気がして、高夜は奇妙な感覚に襲われた。

 決してその顔に笑顔を湛えない、小李。その顔で、目の前の女は笑う。
 小李も喜怒哀楽があればこのように笑うのだろうか、と思う反面、彼は感情があったとしても、おそらくこの女のように皮肉な笑いを浮かべる事も横柄で不遜な態度を取る事もないのだろう、と思う。彼はきっと、穏やかで物静かな青年だ。喜怒哀楽があったとしても口数少なく、笑う時は仄かに笑うのだ。

 そう思うとなおさら目の前の人物が奇妙に思えて仕方がない。

「………小李なのに、小李ではないみたいだ……」

 思わずそう呟いた高夜の言葉に、ひいなはぴくりと眉を動かして誰よりも反応を示す。

「当たり前だ…!小李は純真無垢な天使だぞ?私と一緒にするな」
「……………ああ、うん。今完全に乖離かいりした。どうやら別人のようだな……」

 さも、どうだと言わんばかりに得意げになって、恍惚な瞳で小李自慢を披露する雛に、若干引き気味になって高夜は答える。どうやら彼女は小李を溺愛しているらしい。喜怒哀楽もなく足まで不自由な弟であれば、庇護欲を掻き立てられずにはいられない、という事だろうか。

 そんな高夜にやはりくつくつと笑いを落として、雛は先ほど高夜たちが座っていた長椅子ソファの対面に置かれている長椅子ソファに腰を下ろした。

「さて、話を元に戻そうか。…ひなぎくの期限をなくしてほしいそうだな?」

 そう告げて立ったままの高夜とひなぎくに、手で長椅子ソファを指し示して座るよう促す。

「…その前に確認させてもらう。貴女がここの責任者で間違いないのだな?」
「いかにも…と言いたいところだが、正確には私は代理だ」
「なら責任者を出せ」
「ここにはいない」
「……いない?」
「言っただろう、私も好きでこの立場にいるわけじゃない。……リオグラードは体が弱いからな。ここを運営できるだけの体力はない」
「…!」

 思いがけない名前が挙がって、高夜は思わず目を白黒させる。

「リオグラード…!?…博士がここの責任者なのか…!?」
「ここの創立者だ。とは言ってもあの体だからな。実質的にはもう私が責任者と言ってもいいだろう」
「…………一介の天才機巧人形師ではなかったのか……?」

 彼の肩書に新たに付加的要素が加わって、うんざりするように告げる高夜に雛は高らかに笑う。

「『天才』に『一介』を付けてもいいのかは甚だ疑問だが、あれはお前が思っている以上に大物だぞ?何せ小さな国なら余裕で買えるだけの資産がリオグラードにはある」
「…!?………………どこぞの御曹司か……?」
「違うが、そう思っても差支えはないだろうな」

 話を聞けば聞くほどリオグラードの謎が深まって、彼が何者なのかが判らなくなる。聞いているだけでも疲れて仕方がないと言わんばかりに、頭を抱えながら盛大なため息を一つ落として、高夜は再びうんざりするように話を続けた。

「……もういい。とにかく実質的な責任者は貴女だという認識で間違ってはいないのだな?」
「ああ」
「なら話は早い。なぜひなぎくの期限がたった十日しか与えられないのか教えてもらおう」
「初めから十日の契約だからだ」
「…!」
「十日の契約で十日間だけ自我を保てるように作った。だからそれ以上は延長できない。それだけの話だ」

 いけしゃあしゃあとうそぶく雛に、高夜は明らかに不満と怒りを表わした。

「嘘をくな…!なら期限を設けた者は誰一人として延長できないのか?そんな事はないだろう…!そもそもこの期限もただの目安に過ぎないはずだ。機巧人形の特性として、目的を定める事は必須条件だからな。目的が完遂された時が、本当の意味での期限だろう…!」
「………『十日間、一緒に暮らす』というだけの目的設定かもしれないぞ?」
「その場合でも延長を望めば、目的が更新されて然るべきだ…!できない理由はない!」
「……一度目的を設定すれば二度と更新は出来ない、と言ったら?」
「なら何のための返却だ?返却された機巧人形は再び使用されるまでここで保管、管理されるのだろう?使用するとなった時、再び目的を更新する必要があるのではないのか?」

 五年間も保管されれば、本来設定していた目的が遂行できない可能性は多分にある。自我も記憶も保ったまま、となると新たにまったく同じ機巧人形を作り直すわけにもいかない。そうなれば再び目的を更新するしか方法はないのだ。

 何を言っても的確な返答が返ってくる現状に、今度は雛がうんざりとした表情を作って嘆息を落とした。

「………頭がいい奴ってのは、どうしてこうも厄介なんだ」
「私をたばかろうとするな。本当の事を言え…!」

 その必死な様子の高夜に、雛は組んだ足に肘をついて顎を載せ、にやりと笑って見せる。

「……ひなぎくに惚れたか?」
「…!?」

 思わぬところで確信を突かれて、高夜はあからさまに頬を赤らめる。その素直な反応に先ほど論破された溜飲を大いに下げたのか、雛は腹を抱えてくつくつと笑った。

「…ずいぶんと初心うぶな事だな、久遠寺 高夜。もしや初恋か?」
「……あんたは本当に小李と似ても似つかないな…!!」

 目に溜まった涙を拭いながら揶揄してくる雛に、高夜は最上級の渋面を作って眉間にしわを寄せる。やはりくつくつと笑いながら「それは光栄な事だ」と告げて、雛は高夜の隣で困惑したように二人の会話を聞いていたひなぎくに視線を移した。

「……ずいぶんと大切にされているようで安心した、ひなぎく」
「…!はい…!引き取られた先が高夜さまのお傍で、私は本当に果報者です…!」
「…!」

 満面の笑みで雛にそう返すひなぎくを、高夜は目を瞠って見つめる。

 幸せを与えてもらっているのは明らかに自分の方なのに、そう言ってくれるひなぎくの心遣いが嬉しい。彼女が本当に幸せだと感じてくれているのであれば、これほど嬉しいことはない。そう言わんばかりに頬を赤らめ、ひなぎくだけを見つめて呆ける高夜に、雛はやれやれと呆れ顔にため息を落とした。

「……できれば二人を祝福してやりたい気持ちはやまやまなんだが」
「………本当にそう思っているのか?」
「異種間の恋愛が成立するのか、という好奇心はあるぞ?」
「……知的好奇心を満たしたいなら、他でやってくれ」

 自分が遊ばれているという事を自覚して、やはり渋面を取る高夜にくつくつと笑いを返した後、雛はもう一度、今度は諦観を促すようなため息を落とす。

「……ひなぎくの期限は更新できない。諦めてくれ、久遠寺 高夜」
「…!?なぜだ…!私は何度もその理由を訊ねているぞ…!」
「確かにお前の言う通り、期限の延長を出来る者もいる。だが、ひなぎくは残念な事に延長ができない側だったという事だ」
「だから─────」
「理由は訊ねるな。言えないものは言えない」

 ぴしゃりと告げられて、高夜は言葉を失う。助け船を出そうと口を開きかけたひなぎくを、雛は無言で視線だけを向けて押し留めた。

「…それでも不満があるなら、契約不履行で今すぐひなぎくを返してもらう」
「…!?横暴な…っ!!!」
「勘違いをするな、久遠寺 高夜。ひなぎくはお前の物ではない。そして忘れるな。世界には多くの理不尽が行き交っている。この世界で暮らしていく以上、それと何とか折り合いをつけて生きていくしかないんだ」

 いかにも不満だと言いたげな表情でわずかに腰を浮かせた高夜に構わず、雛は席を立って高夜の不満を一蹴するように、あるいは意に介さないと言いたげに背を向け扉に向かう。握玉ドアノブに手をかけ扉を開いたところで、雛はやはり全身で不満を表わす高夜を振り返って、高らかと告げた。

「ひなぎくを奪われたくないのなら今日を入れて残り五日、後悔のないように過ごして心の整理をつけろ、久遠寺 高夜亅

 反論は認めない────そう背中で語って、雛はそのまま部屋を後にした。

**

「……高夜さま、お風呂をお先に頂戴いたしました」
「………ああ」

 高夜の部屋の襖の前で告げるひなぎくに、返ってきた高夜の返答は心なしか元気がない。それは人形師連盟での雛による門前払いに近い対応が未だに尾を引きずっていることを、ひなぎくは承知していた。

 雛の物言いは確かに横柄ではあるが、その心根は優しい事をひなぎくは知っている。それでも一貫してあの態度を貫いたのは、本当に期限の更新をすることが叶わないからだ。執拗なまでに諦めようとしない高夜を諦めさせるための物言いであることは明らかだった。

 それが判っていても、高夜が諦めないのは他ならぬ自分のためだと知っているだけに、後ろ髪を引かれて仕方がない。かと言って、どう声を掛ければいいのかが判らず、ひなぎくは襖の前でただ立ち尽くして思考を巡らせていた。

 その気配を察したのか、高夜から先に声が掛かる。

「………ひなぎくは知っていたのだな?期限の延長が出来ない事を…」
「…!……………はい」

 何とか肯定の言葉だけを告げて、ひなぎくは再び押し黙った。謝罪をしようと開いた口が一度逡巡した後、再び閉じたのは、謝罪してしまえば期限の延長を望んでいないと告げるような気になるからだろうか。結局、何も言えず、だからと言って自室に戻る気にもなれなくて、途方に暮れたように立ち尽くすひなぎくに、部屋の中から意外に穏やかな声が聞こえる。

「…入っておいで、ひなぎく」

 促されるまま、ひなぎくは遠慮がちに襖を開けた。何やら罪悪感が胸を苛んで、俯かせた瞳をちらりと高夜の方に向けると、やはり穏やかな微笑みを湛えて自分を迎え入れてくれている姿に、思わず目を瞬いた。

「…すまない、ひなぎく。お前の貴重な一日を、私の我儘で潰してしまった」
「…!そんな事はございません…!!高夜さまがあのように訴えてくださったのは私の為ではございませんか…!」
「…いや、自分の為だ。私がひなぎくを手放したくないから、あのような暴挙に出た……ただの愚か者だ、私は」
「それでも…!そう願ってくださったことを、私はとても嬉しく思っております…!」

 部屋に入るや否や、バツが悪そうに目線を落として自分をあざけるような言葉を吐く高夜に、ひなぎくは必死にかぶりを振って否定を繰り返す。

 見れば自分よりも傷ついているような表情を取るひなぎくが視界に入って、なおさら自分が情けなく、申し訳ない。
 高夜は思わず逸らした目線をそのままで、静かに問うた。

「……もし十日を過ぎてもお前を連盟に返さなかったら、ひなぎくはどうなる?」
「…!それは……自我を失って、おそらくは暴走を起こし……殺戮者に変わるものと……」
「……やはり、そうか……」

 雛は『十日間だけ自我を保てるように作った』と言った。
 自我を失う末路はリオグラードに聞かされたばかりだ。一緒にいたいと思う気持ちは強いが、だからと言って心優しいひなぎくを殺戮者などに貶めるのは論外だろう。

(……選択肢はない、という事か……)

 十日になれば、ひなぎくを返す─────その一択なのだ。
 彼女と過ごす未来は、決して存在しない。
 十日を過ぎて彼女を返し、ひなぎくへの想いを一生心に抱いたまま寂しさだけを募らせて一生を過ごすのだ。

(……嫌われ者らしい人生だな……)

 冷たいと言われる自分には、よほどお似合いだろうか。

 高夜は自嘲するように、そしてようやく諦観を得たようにため息を落とした後、ずっと落としたままの視線をひなぎくに向けた。

「…私の我儘を聞いてくれるか?ひなぎく」
「…!何なりと…!」
「残りの四日間を私にくれ」
「…!」
「家事などしなくてもいい。…いや、食事だけは作ってもらいたいな。私はひなぎくの作る料理が好きだ。お前の作る料理の味を覚えておきたい」
「…はい!いつでもお作りいたします…!」
「…朝食を食べた後は、ずっと私の傍にいてくれ。行きたいところがあれば、私と一緒に行こう。ひなぎくと一緒なら、どこでもいい」
「…また、あの菜の花畑に参りましょう。あの美しい景色を見に」
「…気に入ってくれたか?」
「はい…!とても…!」

 屈託のない、ひなぎくの満面の笑顔─────。
 彼女は決して、否定はしない。何を言っても彼女は必ず、いつでも受け入れて判ったと肯定してくれる。

(…これは、人間に尽くすように作られた機巧人形の特性なのだろうか…?)

 たとえそうだとしても、今はひなぎくの意志によるものだと思いたい。

「…一緒にいてくれ、ひなぎく。あと残り四日間、私と共に過ごしてほしい」

 ひなぎくを忘れないように。
 彼女との思い出を胸に、残りの人生を生きられるように。
 そして、彼女と決別するために─────。

 ─────(心の整理をつけろ、久遠寺 高夜)

 冷たく言い放った、雛の言葉が脳裏をよぎる。
 これは、別れを受け入れる準備をしろ、という事だ。
 残りの四日間で、ひなぎくへの恋慕に決別を告げる。

 ここから先は、そのための期間なのだ。

**

 ─────七日目。

「千代さま、最近若さまはとても穏やかになられましたね」

 菜の花畑へと出かける二人を見送った千代に、女中が声を掛ける。

 最近、使用人の中での高夜の評判は、かなりいい。
 以前は廊下ですれ違っても会釈する使用人に何一つ無反応だった高夜は、短いながらも挨拶や声を掛けるようになった。使用人に対して笑顔を見せる、というところまではいかないながらも、いつも硬かった表情は少しばかり柔らかになり、何よりひなぎくと一緒にいる高夜の穏やかそうな表情が見ていて微笑ましかった。

 声を掛けられた千代は、さもありなんと笑う。

「ひなぎくさんのおかげですね。…本当に、良い方が来られたわ」

 あの頑なだった人間嫌いの高夜の心を、容易く解かしてしまった。
 ずっと自分を冷たい人間だと信じ込んで、すっかり心を隠してしまった高夜は、ひなぎくが来てからというもの日に日に本来の姿を見せつつある。

「…このまま彼女には、ずっとここにいて欲しいのだけれど」

 十日の契約だと聞かされた。
 どうにか延長は出来ないものだろうか。
 そもそも高夜自身が、延長を望むかどうかも判らない。
 それでも二人の相性は悪くはないはずだ。

(…いっそのこと、本当にお嫁に貰えばいいのに)

 彼女が機巧人形でなければ、それも可能だったのだろうか。

(…考えても仕方のない事かしらね)

 くすりと笑って、千代は小さくかぶりを振る。
 これは当事者同士の話だ。余人である自分が口を挟む事ではない。

 それでも、つい願ってしまう。
 たとえ十日を過ぎてひなぎくがこの屋敷を去っても、できれば高夜には再び心を隠さず、このままでいて欲しい。
 そうすればいずれ、ひなぎくに変わる誰かが現れるだろう。
 高夜を心から愛してくれる誰かが、きっと現れるはずだ。

 そんな事を夢見て、千代はいつもの日常に戻っていった。

**

「ひなぎく、手を出してみなさい」

 菜の花畑にある枝垂桜の木の根元にしゃがみ込み、高夜は告げる。その手にはなぜか人参があって、なおさら小首を傾げながら、ひなぎくも高夜に倣ってしゃがみ込み手を差し出した。その手のひらに、高夜は人参をひとかけ乗せる。

「…?あの……?」

 問いかけようとしたひなぎくの言葉を、高夜は立てた人差し指を口に当てがい「しっ」と小さく声を漏らす。
 二人が屈んでいる前には、木の根元に小さな洞穴ほらあなが一つ。そこにひなぎくの手を寄せると、何やらふわふわとした白いものが、ぴょこんと耳を立てて顔を覗かせた。

「…!まあ…!ウサギだわ…!」

 最初に顔を覗かせたウサギに続いて、さらに小さなウサギが三匹同じように顔を出す。親子だろうか。その母親らしきウサギはひなぎくの手のひらにある人参を見つけると、真っ先に洞穴から出てきてそのまま人参を咥え、慌てて再び洞穴に帰っていく。その警戒心があるのかないのか判らない愛らしい仕草に恍惚な目を向けるひなぎくを、高夜はくすりと笑った。

「…野兎だ。いつの間にやらここに住み着いたみたいでな。時折こうやって餌を与えている。……ひなぎくは動物が好きか?」
「生まれて初めて拝見いたしましたが、これほど愛らしい生き物を嫌う方などいらっしゃいません…!」

 その返答にやはり笑いが誘われて、くすくすと笑みを零す。
 愛らしいと言えば、今こうやって恍惚な瞳を輝かせているひなぎくほど愛らしいものはないだろう。

(…いやいや、ひなぎくへの想いを断ち切るための時間だろう。なぜ余計に恋慕が募っている……)

 慌ててひなぎくから視線を外して、おそらくは赤らんだ頬を隠すように口元を手で覆い隠す。
 心を整理するためにひなぎくとこうやって一緒にいる時間を作ったと言うのに、これでは全くの逆効果だ。

 そう思って一旦心を落ち着かせるために立ち上がった高夜を、ひなぎくは怪訝そうに見上げた。

「…?高夜さま…?」
「ああ、いい。ひなぎくはそのままで」

 言って、手に持つ人参のかけらをすべてひなぎくの手に乗せ、少し離れた所まで足を進ませる。何やら様子のおかしい高夜に不安そうな視線を送りつつ、人参につられて再び洞穴から顔を出したウサギに意識を奪われたのか、ひなぎくは手元に集まるウサギを愛でるように見つめている。

 そんなひなぎくを、高夜は少し離れたところから振り返った。

(……私は本当に、ひなぎくを諦められるのだろうか…?)

 ひなぎくを諦めるしか、道はない。
 だが、どうやってこの想いと決別できるのかが判らない。心の整理をつけるやり方が、一向に判然としなかった。

 一緒にいればいずれ判るのだろうか。そう思って傍にいるものの、こうやって一緒にいる時間が増えれば増えるほど、彼女への恋慕の情が募っていく。かと言って残り四日しかない時を、彼女と離れて過ごす気にも当然なれなかった。

(…そもそも、機巧人形である彼女に恋をしたのが間違いなのだ)

 恋をしたところで成就しないことなど明らかだ。機巧人形であるひなぎくに恋愛感情があるのかさえ疑わしい。そんな彼女に恋をした時点で、失恋は確定事項なのだろう。

(……よりにもよって想いを寄せた相手が機巧人形、か………。さすがは『人形狂いの久遠寺』だな)

 自嘲めいた笑いを誰にともなく落として、それでも決して拭えない気持ちがいつまでも居座り続ける現状に呆れ返る。

 失いたくない。
 離れたくない。

 頭の中はもうずっと、その二つが何度も何度も浮かんでは消えている。あまりに未練がましい自分がなおさら愚かに思えて、高夜はたまらず嘆息を漏らした。瞬間、高夜の耳に小さなひなぎくの悲鳴が聞こえて、弾かれるように顔を枝垂桜の木の根元に向けた。

「ひなぎく…!?」

 視界に入ったのは、枝垂桜のすぐ傍で下卑た笑いを浮かべる三人の男と、その彼らに後ろ手に腕を取られたひなぎくの姿────。

「ひなぎく…っ!!!!?」
「高夜さま…!!私は大丈夫ですので、どうぞお逃げください…!!」
「…!!?逃げられるわけないだろう…っ!!!」

 慌てて駆け寄る高夜を制するように、ひなぎくは声を張り上げる。いつもは遠慮がちなその声音が、忽然こつぜんとして凛とした響きに変わった事に驚きを覚えつつ、放った言葉がまた慮外りょがいなもので、高夜は驚きと同時に怒りに近い感情がこみ上げた。

 よりにもよって、想いを寄せる女性を置いて逃げるような真似は断じてできない。

 そう言いたげな渋面に、男たちの嘲笑が浴びせられた。

「聞いたか?女に逃げろと言われるほど弱いらしいな!」
「妻一人も守れないとは、情けない旦那だ!!」
「…!高夜さまはとても強い方です…!!女性を盾にするような卑怯者に愚弄されるような方ではございません…!」
「…!?何…っ!!?女ごときが偉そうな…!!」

 高夜を侮辱するような言葉を吐く彼らに、ひなぎくは身をよじって振り返り毅然とした態度で告げる。怯えるような態度を一切垣間見せず、ただひたすらに凛とした佇まいで相手を非難するひなぎくの姿がいつもとあまりに違ってなおさら吃驚きっきょうしたものの、彼らの注意がひなぎくに注がれた事を悟って、瞬間、高夜は足元にあった手のひらに収まる程度の石をすかさず掴み、ひなぎくを捕らえている男の額目がけて力強く投げた。それは見事に狙った場所に命中し、ひなぎくを捕らえる手が緩んだ事を察して高夜は声を張り上げる。

「逃げろ…っ!!ひなぎく…っっ!!!」

 同時に男の手からするりと抜けたひなぎくは、高夜に言われるまま駆け出した。そのまま高夜の元に向かうひなぎくを、男たちはすぐさま追いかける。あとほんの僅かで逃げるひなぎくの腕に男の手がかかる────その刹那、高夜は伸ばしたひなぎくの腕を掴みすぐさま自分とひなぎくの場所を入れ替えると、そのままその男の腕を掴み男の体を強く引いて、その勢いのまま首元────盆のくぼに手刀をお見舞いする。意識を失って倒れる男に構うことなく、高夜は続けざまに、驚いて目を丸くしながら呆けている後ろの男の襟元を掴みそのまま足を払ってくるりと身を翻し、男の体を自身の背に乗せて勢いそのままに地面に叩きつけた。────いわゆる、背負い投げである。

「高夜さま…っっ!!!!」
「ひなぎく…!!そのまま逃げろ……っっっ!!!!!」
「いいえ…!!高夜さまを置いては行けません…っっ!!!」

 頑なに逃げる事を拒否し、ひなぎくはようやっと男たちの手から逃れたにも関わらず、もう一度高夜の元まで戻ろうとする。そのひなぎく目がけて残った一人が手に持つ木刀を振り下ろす姿が視界に入り、高夜は我を忘れて駆け出した。考えるよりも先に体が動いた、と言ってもいい。足が勝手に駆け出し思わず伸ばした手にひなぎくの腕が届くや否や、そのまま彼女を守るように強く抱き寄せ、覆いかぶさる。振り下ろされた木刀は、そのまま割って入った高夜の頭部を勢いよく殴打した。

「…!!!?高夜さま……っ!!!!!?」

 おそらく打撲創が出来たのだろう。頭部から流れる血が、前屈みになっていた事でぽたぽたと額から頬を伝って落ちていく。見るからに顔面蒼白となった高夜の顔色に、ひなぎくもまた顔を蒼白にした。

 叫ぶひなぎくに構わず彼女を強く抱きしめたまま、うなだれるようにその場にくずおれた高夜の背に、男は攻撃の手を緩めぬまま何度も何度も木刀で殴打する。それでもなお、ひなぎくを抱き寄せる腕に力が込めたままの高夜に、ひなぎくはたまらず声を荒げた。

「高夜さま…!!私は大丈夫ですからっ、どうか…っ!!!どうか離してください…っ!!!」

 身をよじるように高夜から逃れようとするひなぎくを、高夜はなおの事、離すまいと力を込める。そうして蒼白な顔を上げて、眉根を寄せるひなぎくに小さく微笑んだ。

「……ひなぎく、私は大丈夫だ……だから…じっとしていなさい……」
「…!」

 その場にあまりにそぐわない、高夜の穏やかな声。
 その声に、ひなぎくはたまらず涙が出そうになった。無意識に高夜の着物を握る手に力を込める。

 そんな二人を男は、まるで茶番でも見せられているような気になって鼻で笑って一蹴した。

「…は…っ!女の前だからって恰好つけやがって…!!色男が台無しだな…!!」

 勝ち誇ったように笑いながら、それでもなお手を緩める気はないのか何度も木刀を振りかざし、何度も高夜の背を打ちつける。打ちつけられるたびにその振動が高夜の体を伝ってひなぎくにまで届くので、ひなぎくはもう気が気ではなかった。

 自身を強く抱き寄せる高夜の腕を、なぜだか振り払う事ができない。
 振り払おうと思えばすぐにでもできるはずなのに、今すぐにでも振り払って高夜の前に立ちふさがり彼を守らなければと思うのに、なぜだか体が硬直したように動かなかった。

 もうやめて─────そう叫ぼうとしたひなぎくの視界に、見慣れた背中が唐突に現れた。

「そこまでです。…よくもうちの顧客と同胞を痛めつけてくれたものですね」

 突然降って湧いた、涼しげな中にどこか怒りを含んだ声。耳に残るその声に、高夜はどことなく聞き覚えがあった。朦朧とする意識に鞭打つように、高夜は後ろを小さく振り返り一瞥をくれる。そこにいたのは振り下ろされた木刀を難なく受け止め、二人を守るように立ちふさがる黒い紳士服に身を包んだ長身の男─────その後ろ姿に、やはり高夜は見覚えがあった。

「…………雪………消………?」

 名を呼ばれた雪消ゆきぎえおぼしき男は、木刀を握ったまま高夜を振り返り、にこりと微笑む。その笑顔が雪消のようで、どこか雪消とは少し違う気がした。

(………雪消では……ないのか………?)

 思ったが、もう深く考える余裕はない。頭部からは絶えず血液がぽたぽたと頰を伝って落ちていくのが判る。もう意識を保つのさえ難しかった。

 目も虚ろで今にも倒れそうな高夜の姿に、雪消とおぼしき男は目を白黒とさせる。そうして怒りを露わに眉間にシワを寄せ、木刀を持つ男を鋭くめつけた。

「……人に手を出す、という事がどういう事か、当然ご存知ですね?」

 握る木刀に、力を込める。どれほど男が抗って木刀を奪い返そうとしても、まるで大木を相手にしているように、なぜだかびくともしない。それどころかミシミシと音を立てるので何事かと見てみれば、彼が木刀を握っている辺りから次第に裂け目が浮かんでくる様子が目に入って、男は慄然と背筋が凍って顔面を強張らせた。

「やり返されても文句は言えない、という事ですよ?たとえその命が奪われたとしても」
「ひ…っ!!」

 告げた言葉と同時に、雪消とおぼしき男が握る木刀からピシッと小さな亀裂の入る音が聞こえて、そのまま大きな音と共に木刀が真っ二つに分断される。それは刃物で両断された、というよりも文字通り握り潰されたように、その割れ目はささくれ立っていた。握っていた先がカランっと乾いた音と共に虚しく地面に落ちて、男は持っていた木刀を呆然と手離し腰を抜かしたようにその場にへたり込んだ。

「…さあ、どうします?このまま続けますか?」

 挑戦的な眼差しを男に向け、手に持つ残った木刀を無造作に投げ払う。その様子に男はすっかり戦意を失ったようで、ただひたすらにかぶりを振った。

「た…助けてくれ…!!俺たちはただ雇われただけで……っ!!!」

 カタカタと体を震わせ、懇願するようにへたり込んだまま後ずさる。その情けない様子に、雪消とおぼしき男は呆れたようにため息を落とした。

「…なら今すぐ去れ。目障りだ」
「ひ…っ!!」

 もう一度小さく悲鳴を落として、意識のない仲間を置き去りにしたまま男は覚束ない足取りでそそくさと一目散に逃げていく。その情けない後ろ姿にやはりため息を落として、雪消とおぼしき男は慌てて後ろの高夜を振り返った。

ひいなさん…!!彼の様子は…!?」

 いつの間にやら現れたのか、ひなぎくを抱きしめたままの高夜の傍で膝を折る雛の姿があった。何とか意識を保っているのか、あるいは目を開いたままもう意識を失う直前なのか、虚ろな目を漂わせる高夜の姿に、ひなぎくはもう耐え切れず涙をぽろぽろと落としている。

「……ずいぶんと無茶をするな、久遠寺 高夜」
「…………ひなぎく…は……?……無事…か……?」

 おそらく今自分が一体誰と話しているかなど、高夜は判ってはいないだろう。ぽつりと落とされた呟きは、無意識に言葉を発している状態に近い。まだひなぎくを守ろうとしているのか抱き寄せる腕だけは異様なほど頑強な事に、雛は呆れと感嘆を込めたため息を落とした。

「大丈夫だ、傷一つない。……もう大丈夫だから、ひなぎくを離してやれ。久遠寺 高夜」
「……そう……か……よか………」

 雛の言葉にようやく安堵して、腕の力を緩めた途端、同時に意識が一気に薄らぐのを感じた。
 ふわりと宙に浮かんだような感覚が襲って来て、全身が脱力したように力が入らない。自分が座っているのか横になっているのかさえ判らないまま、ただ耳元で声を張り上げる雛の声と、自分の名を泣き叫ぶひなぎくの声だけが、何度も何度も頭の中でこだましていた。
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