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第1話 灰色の世界、紅の救済
灰色の世界、紅の救済
「魔力ゼロの無能聖女、リリアナ。貴様との婚約を破棄し、国外追放……いや、この場で処刑とする」
王太子の冷酷な宣告が、王城の広間に響き渡った。
豪華なシャンデリアの下、着飾った貴族たちが、まるで汚物を見るような目で私を見ている。
隣では、ピンク色の髪をした義妹が、王太子の腕にへばりつきながら、勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「お姉様、残念でしたねぇ。聖女の力もないのに、王太子殿下の婚約者だなんて、最初から無理があったんですのよ」
「そうだ。国境の結界も維持できない役立たずは、我が国の恥だ。せめてもの慈悲だ、苦しまぬよう一思いに首を刎ねてやる」
私は、反論すらしなかった。
言葉が出ないのではない。言うだけ無駄だと悟っていたからだ。
私が魔力を持たないのは事実。
けれど、私が毎日祈りを捧げることで、なぜか魔獣たちが寄り付かなくなっていたのも事実。
それを誰も信じなかった。
「無能」「税金の無駄」「寄生虫」。
浴びせられる言葉の刃に、私の心はもう、ボロ雑巾のように擦り切れていた。
(ああ……もう、いいや)
疲れ果てていた。
誰からも必要とされず、誰からも愛されない人生。
ここで終わるなら、それもまた運命なのだろう。
衛兵が私を取り押さえ、冷たい石床に膝をつかせる。
処刑人の剣が、ギラリと光った。
「死ね! 無能女!」
王太子の怒号とともに、剣が振り下ろされる。
私は最期の瞬間に、せめて痛みがないことだけを祈り、瞼を閉じた。
ガギィィィン!!
耳をつんざくような金属音が響き、衝撃が走った。
けれど、痛みはない。
恐る恐る目を開けた私は、信じられない光景に息を飲んだ。
王城の壁が、まるごと吹き飛んでいた。
分厚い石壁が粉々になり、外の雪景色が剥き出しになっている。
舞い込む吹雪。
そして、その雪の白さすら霞むほどの、圧倒的な「黒」がそこにいた。
漆黒の軍服。夜闇を纏ったようなロングコート。
銀の髪に、血のように赤い瞳。
北の軍事帝国を統べる、「死神皇帝」ディルク・ヴァニタス。
彼が歩いた場所から、床の大理石が黒く変色し、腐り落ちていく。
彼が纏う空気そのものが猛毒であり、触れるもの全てに死をもたらす「呪いの皇帝」。
「て、帝国皇帝!? なぜここに!?」
王太子の悲鳴。
ディルク皇帝は、王太子など道端の石ころですら無いとでも言うように無視し、真っ直ぐに私へと歩いてきた。
護衛の騎士たちが剣を抜いて立ち塞がる。
「止まれ! それ以上近づくなら――」
騎士の言葉は続かなかった。
皇帝が視線を向けただけで、騎士たちの剣が錆びつき、ボロボロと崩れ落ちたからだ。
剣だけではない。鎧も、衣服も。
そして騎士たち自身も、「ひっ」と短い悲鳴を上げて泡を吹いて倒れた。
死んではいないようだが、魂を削り取られたかのように衰弱している。
「……五月蝿い」
低く、美しいバリトンボイス。
けれどそこには、生物としての絶対的な格差があった。
彼は私を見下ろす。
至近距離で見る彼は、神々しいまでに美しく、そして――泣きたくなるほど、孤独な目をしていた。
「見つけた」
彼は、黒い革手袋を外した。
白く、美しい指先が露わになる。
その手が、私の顔へと伸びてくる。
(ああ、私は彼に殺されるんだ)
(腐って、溶けて、跡形もなく消える)
不思議と恐怖はなかった。
あの王太子たちに殺されるくらいなら、この美しく孤独な死神の手にかかって消えたい。
私は逃げずに、彼を見つめ返した。
彼の指先が、私の頬に触れる。
――……え?
腐らない。
熱くない。痛くない。
ただ、少し冷たくて、乾燥した、男性の指の感触。
彼の方もまた、目を見開き、雷に打たれたように硬直していた。
「……嘘だろ」
彼は震える声で呟き、今度は両手で、私の顔を包み込んだ。
頬を撫で、髪を掬い、首筋に触れる。
どこも腐らない。私は、私のままだ。
「触れ……られる」
彼の赤い瞳から、ポロポロと大粒の涙が零れ落ちた。
世界最強の皇帝が。
触れるもの全てを殺す破壊の化身が。
私の前で、迷子のような顔をして泣いている。
「20年だ……生まれて20年、俺は誰にも触れられなかった。母に抱かれることも、誰かと手を繋ぐことも」
彼は私の肩に顔を埋め、縋り付くように抱きしめてきた。
強い力。軋む骨。
けれど、そこにあるのは殺意ではない。
飢えだ。
圧倒的なまでの、人の温もりへの飢餓。
「温かい……お前は、温かいな……」
彼の体温が、震えが、私に伝わってくる。
無能と罵られ、誰からも必要とされなかった私。
その私が今、この世界で一番強い男を、ただ存在しているだけで救っている。
「き、貴様! その女から離れろ!」
王太子が震える声で叫んだ。
ディルク皇帝は、私の肩に顔を埋めたまま、底冷えする声で言った。
「……消えろ」
「は?」
「俺は今、忙しい。俺の『解毒剤』を補充している最中だ。邪魔をするなら、この国ごと腐らせるぞ」
その言葉と共に、彼から放たれた殺気が、広間中のガラスを一斉に粉砕した。
シャンデリアが落ち、悲鳴が上がる。
貴族たちが蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う中、彼は私を軽々と抱き上げた。
「行くぞ、俺の聖女」
「え、あ、あの……どこへ?」
初めて出した私の声に、彼は蕩けるような甘い微笑みを向けた。
「俺の国へ。そして、俺の寝室へ」
「し、寝室!?」
「勘違いするな。いや、してもいいが……今の俺には、お前の『成分』が必要なんだ」
彼は私の首筋に鼻先を擦り付け、深く息を吸い込んだ。
まるで、私という存在そのものを肺に取り込むかのように。
「もう離さない。一秒たりとも。お前がいないと、俺はもう息ができない」
それは、甘美な呪いのような告白だった。
こうして私は、「無能」の烙印を押された祖国を後にし、死神皇帝に連れ去られた。
待っていたのは、触れるもの全てを殺す彼が、私にだけ触れ、私にだけ依存し、私を溺愛する、監禁寸前の甘い日々だった。
「魔力ゼロの無能聖女、リリアナ。貴様との婚約を破棄し、国外追放……いや、この場で処刑とする」
王太子の冷酷な宣告が、王城の広間に響き渡った。
豪華なシャンデリアの下、着飾った貴族たちが、まるで汚物を見るような目で私を見ている。
隣では、ピンク色の髪をした義妹が、王太子の腕にへばりつきながら、勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「お姉様、残念でしたねぇ。聖女の力もないのに、王太子殿下の婚約者だなんて、最初から無理があったんですのよ」
「そうだ。国境の結界も維持できない役立たずは、我が国の恥だ。せめてもの慈悲だ、苦しまぬよう一思いに首を刎ねてやる」
私は、反論すらしなかった。
言葉が出ないのではない。言うだけ無駄だと悟っていたからだ。
私が魔力を持たないのは事実。
けれど、私が毎日祈りを捧げることで、なぜか魔獣たちが寄り付かなくなっていたのも事実。
それを誰も信じなかった。
「無能」「税金の無駄」「寄生虫」。
浴びせられる言葉の刃に、私の心はもう、ボロ雑巾のように擦り切れていた。
(ああ……もう、いいや)
疲れ果てていた。
誰からも必要とされず、誰からも愛されない人生。
ここで終わるなら、それもまた運命なのだろう。
衛兵が私を取り押さえ、冷たい石床に膝をつかせる。
処刑人の剣が、ギラリと光った。
「死ね! 無能女!」
王太子の怒号とともに、剣が振り下ろされる。
私は最期の瞬間に、せめて痛みがないことだけを祈り、瞼を閉じた。
ガギィィィン!!
耳をつんざくような金属音が響き、衝撃が走った。
けれど、痛みはない。
恐る恐る目を開けた私は、信じられない光景に息を飲んだ。
王城の壁が、まるごと吹き飛んでいた。
分厚い石壁が粉々になり、外の雪景色が剥き出しになっている。
舞い込む吹雪。
そして、その雪の白さすら霞むほどの、圧倒的な「黒」がそこにいた。
漆黒の軍服。夜闇を纏ったようなロングコート。
銀の髪に、血のように赤い瞳。
北の軍事帝国を統べる、「死神皇帝」ディルク・ヴァニタス。
彼が歩いた場所から、床の大理石が黒く変色し、腐り落ちていく。
彼が纏う空気そのものが猛毒であり、触れるもの全てに死をもたらす「呪いの皇帝」。
「て、帝国皇帝!? なぜここに!?」
王太子の悲鳴。
ディルク皇帝は、王太子など道端の石ころですら無いとでも言うように無視し、真っ直ぐに私へと歩いてきた。
護衛の騎士たちが剣を抜いて立ち塞がる。
「止まれ! それ以上近づくなら――」
騎士の言葉は続かなかった。
皇帝が視線を向けただけで、騎士たちの剣が錆びつき、ボロボロと崩れ落ちたからだ。
剣だけではない。鎧も、衣服も。
そして騎士たち自身も、「ひっ」と短い悲鳴を上げて泡を吹いて倒れた。
死んではいないようだが、魂を削り取られたかのように衰弱している。
「……五月蝿い」
低く、美しいバリトンボイス。
けれどそこには、生物としての絶対的な格差があった。
彼は私を見下ろす。
至近距離で見る彼は、神々しいまでに美しく、そして――泣きたくなるほど、孤独な目をしていた。
「見つけた」
彼は、黒い革手袋を外した。
白く、美しい指先が露わになる。
その手が、私の顔へと伸びてくる。
(ああ、私は彼に殺されるんだ)
(腐って、溶けて、跡形もなく消える)
不思議と恐怖はなかった。
あの王太子たちに殺されるくらいなら、この美しく孤独な死神の手にかかって消えたい。
私は逃げずに、彼を見つめ返した。
彼の指先が、私の頬に触れる。
――……え?
腐らない。
熱くない。痛くない。
ただ、少し冷たくて、乾燥した、男性の指の感触。
彼の方もまた、目を見開き、雷に打たれたように硬直していた。
「……嘘だろ」
彼は震える声で呟き、今度は両手で、私の顔を包み込んだ。
頬を撫で、髪を掬い、首筋に触れる。
どこも腐らない。私は、私のままだ。
「触れ……られる」
彼の赤い瞳から、ポロポロと大粒の涙が零れ落ちた。
世界最強の皇帝が。
触れるもの全てを殺す破壊の化身が。
私の前で、迷子のような顔をして泣いている。
「20年だ……生まれて20年、俺は誰にも触れられなかった。母に抱かれることも、誰かと手を繋ぐことも」
彼は私の肩に顔を埋め、縋り付くように抱きしめてきた。
強い力。軋む骨。
けれど、そこにあるのは殺意ではない。
飢えだ。
圧倒的なまでの、人の温もりへの飢餓。
「温かい……お前は、温かいな……」
彼の体温が、震えが、私に伝わってくる。
無能と罵られ、誰からも必要とされなかった私。
その私が今、この世界で一番強い男を、ただ存在しているだけで救っている。
「き、貴様! その女から離れろ!」
王太子が震える声で叫んだ。
ディルク皇帝は、私の肩に顔を埋めたまま、底冷えする声で言った。
「……消えろ」
「は?」
「俺は今、忙しい。俺の『解毒剤』を補充している最中だ。邪魔をするなら、この国ごと腐らせるぞ」
その言葉と共に、彼から放たれた殺気が、広間中のガラスを一斉に粉砕した。
シャンデリアが落ち、悲鳴が上がる。
貴族たちが蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う中、彼は私を軽々と抱き上げた。
「行くぞ、俺の聖女」
「え、あ、あの……どこへ?」
初めて出した私の声に、彼は蕩けるような甘い微笑みを向けた。
「俺の国へ。そして、俺の寝室へ」
「し、寝室!?」
「勘違いするな。いや、してもいいが……今の俺には、お前の『成分』が必要なんだ」
彼は私の首筋に鼻先を擦り付け、深く息を吸い込んだ。
まるで、私という存在そのものを肺に取り込むかのように。
「もう離さない。一秒たりとも。お前がいないと、俺はもう息ができない」
それは、甘美な呪いのような告白だった。
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