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第28話 魔王の微熱、甘えん坊な副作用
「……うぅ……リリアナ……」
暴走から一夜明けた、帝国の寝室。
キングサイズのベッドの中央で、世界最強の皇帝・ディルク様が、毛布にくるまって小さくなっていた。
顔は真っ赤で、瞳はトロンと潤んでいる。
「お熱、まだ下がりませんね」
私は彼の額に乗せた濡れタオルを交換しながら、困ったように微笑んだ。
昨日の暴走――全魔力を放出した反動で、彼は強烈な「知恵熱」ならぬ「魔力欠乏熱」を出して寝込んでしまったのだ。
「いかないで……」
「どこにも行きませんよ。お水を替えてくるだけです」
「だめだ……1秒も離れるな……」
今の彼は、いつもの冷徹な皇帝ではない。
高熱のせいで理性のタガが外れ、完全に「甘えん坊な子供」になってしまっていた。
私の袖を掴んで離そうとしない握力だけは、相変わらずゴリラ並みなのが困りものだけれど。
「リリアナ、抱っこ……」
「ええっ? 寝ていないとダメですよ」
「抱っこしてくれないと、死ぬ……」
彼は情けない声を出しながら、両手を広げてくる。
仕方がない。
私はベッドに上がり、彼の上半身を抱きしめて、背中をトントンと優しく叩いた。
「よしよし。……ディルク様は偉いですね。昨日、頑張って我慢しましたね」
「ん……リリアナの匂いだ……」
彼は私の胸に顔を埋め、安心して息を吐いた。
熱い吐息が服越しに伝わってくる。
普段は私を守ってくれる大きな背中が、今は少しだけ小さく、守ってあげたいものに見えた。
「……あいつ、嫌いだ」
「え? 誰ですか?」
「金髪の……ライオン野郎」
レオンハルト皇子のことだ。
熱に浮かされてもなお、嫉妬心だけは健在らしい。
「あいつ、お前を連れて行こうとした。……お前は俺のだぞ」
「はい、貴方のものです」
「俺が死ぬまで……いや、死んでも離さない」
彼は私の腰に腕を回し、顔をスリスリと擦り付けた。
「リリアナ、キスして」
「風邪がうつりますよ?」
「うつしてくれ。お前の風邪なら、それもご褒美だ」
「もう……変態さんですね」
私は苦笑しながら、彼の熱い唇に、チュッと軽く口づけをした。
「……足りない」
「病人は我慢してください」
「じゃあ、治ったら……百回する」
「はいはい。早く治してくださいね」
私の言葉に満足したのか、彼はようやく目を閉じ、スースーと寝息を立て始めた。
その手は、私の服の裾をしっかりと握りしめたままだ。
(可愛い……)
昨日はあんなに恐ろしかった「死神」が、今はこんなに無防備な顔で眠っている。
このギャップを知っているのは、世界で私だけ。
そう思うと、胸の奥が温かくなった。
「ゆっくり休んでくださいね。……私の大切な旦那様」
私は彼が起きるまで、その銀色の髪をずっと撫で続けていた。
窓の外は晴天。
昨日の嵐が嘘のような、穏やかな看病の一日が始まった。
暴走から一夜明けた、帝国の寝室。
キングサイズのベッドの中央で、世界最強の皇帝・ディルク様が、毛布にくるまって小さくなっていた。
顔は真っ赤で、瞳はトロンと潤んでいる。
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私は彼の額に乗せた濡れタオルを交換しながら、困ったように微笑んだ。
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「だめだ……1秒も離れるな……」
今の彼は、いつもの冷徹な皇帝ではない。
高熱のせいで理性のタガが外れ、完全に「甘えん坊な子供」になってしまっていた。
私の袖を掴んで離そうとしない握力だけは、相変わらずゴリラ並みなのが困りものだけれど。
「リリアナ、抱っこ……」
「ええっ? 寝ていないとダメですよ」
「抱っこしてくれないと、死ぬ……」
彼は情けない声を出しながら、両手を広げてくる。
仕方がない。
私はベッドに上がり、彼の上半身を抱きしめて、背中をトントンと優しく叩いた。
「よしよし。……ディルク様は偉いですね。昨日、頑張って我慢しましたね」
「ん……リリアナの匂いだ……」
彼は私の胸に顔を埋め、安心して息を吐いた。
熱い吐息が服越しに伝わってくる。
普段は私を守ってくれる大きな背中が、今は少しだけ小さく、守ってあげたいものに見えた。
「……あいつ、嫌いだ」
「え? 誰ですか?」
「金髪の……ライオン野郎」
レオンハルト皇子のことだ。
熱に浮かされてもなお、嫉妬心だけは健在らしい。
「あいつ、お前を連れて行こうとした。……お前は俺のだぞ」
「はい、貴方のものです」
「俺が死ぬまで……いや、死んでも離さない」
彼は私の腰に腕を回し、顔をスリスリと擦り付けた。
「リリアナ、キスして」
「風邪がうつりますよ?」
「うつしてくれ。お前の風邪なら、それもご褒美だ」
「もう……変態さんですね」
私は苦笑しながら、彼の熱い唇に、チュッと軽く口づけをした。
「……足りない」
「病人は我慢してください」
「じゃあ、治ったら……百回する」
「はいはい。早く治してくださいね」
私の言葉に満足したのか、彼はようやく目を閉じ、スースーと寝息を立て始めた。
その手は、私の服の裾をしっかりと握りしめたままだ。
(可愛い……)
昨日はあんなに恐ろしかった「死神」が、今はこんなに無防備な顔で眠っている。
このギャップを知っているのは、世界で私だけ。
そう思うと、胸の奥が温かくなった。
「ゆっくり休んでくださいね。……私の大切な旦那様」
私は彼が起きるまで、その銀色の髪をずっと撫で続けていた。
窓の外は晴天。
昨日の嵐が嘘のような、穏やかな看病の一日が始まった。
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