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第10話:聖剣解体の最短手順
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王都の巨大な城門前。
這いつくばる五千の騎士たちの「絶望」を越え、枢(くるる)が踏み出した先。
そこに、一人の少年が立っていた。
白銀の鎧を纏い、手には太陽の破片を削り出したかのような光り輝く剣――『聖剣エクスカリバー』を握る、伝説の勇者。
「そこまでだ、異端の演算者。その禍々しいパズルを捨てろ。さもなくば、この聖なる光が貴様を塵に帰す」
勇者が剣を掲げると、周囲の魔力が一点に収束し、視界を焼き切るほどの純白のエネルギーが暴れ狂う。
それは、あらゆる防御を貫通し、対象を分子レベルで蒸発させる「絶対切断」の光。
「……枢くん。あの光、まずいわ。私の直感が『回避不能』だと叫んでる」
繭(まゆ)が枢の腕を強く掴む。
だが、枢は眼鏡を指先で押し上げ、勇者の掲げる光の「波長」を冷静に観測していた。
(演算開始。エネルギー源は重粒子。波長は四〇〇ナノメートル付近。
指向性を持つレーザーと同質のコヒーレント光……。
……パズルの難易度は『神(しん)』。全脳細胞の九八パーセントを、反射係数の計算に割く)
カチャ、カチャンッ!!
枢の手の中で黒いパズルが液体のようにうねり、無数の多面体レンズを組み合わせた、漆黒の『反射鏡(プリズム)』へと変形した。
「……死ね。――『聖なる閃光(ホーリー・レイ)』!!」
勇者が剣を振り下ろした。
極太の光の奔流が、一瞬で枢の視界を真っ白に染め上げる。
王都の石畳が蒸発し、大気が悲鳴を上げるほどの熱量が枢を呑み込んだ――はずだった。
「なっ……光が、曲がって……!?」
勇者が絶叫する。
枢の前に展開された黒いプリズムに触れた瞬間、絶対の光は「一ミリの熱」も残さず、鏡の表面で九十度に折れ曲がり、空を裂いて遥か彼方の山を消し飛ばした。
「……驚くことじゃない。光は最短経路を通る性質がある。
ならば、僕がその経路を『パズル』でねじ曲げれば、君の攻撃は永遠に僕には届かない。
君が神聖視するその光も、僕にとってはただの『直進する波』に過ぎないんだ」
枢は、鏡を保持したまま、勇者へと一歩近づく。
「反射係数、再計算。――定義変更(リライト)。
入射角と反射角を固定。焦点(フォーカス)は……君の心臓にある『魔力核』だ」
「ま、待て! やめろッ!!」
枢がプリズムの角度を、コンマ数ミリだけ微調整した。
勇者が放ち続ける聖剣の光は、枢の鏡によって完璧に反転し、レンズの焦点のように一点へと凝縮。
そのまま、勇者の胸元に刻まれた「勇者の紋章」へと突き刺さった。
ドォォォォォォン!!
自分の力に焼き切られ、勇者の鎧が砕け散る。
伝説の武器はただの鉄屑となり、勇者は己の放った光の残滓に焼かれ、地に伏した。
「……最短手順だ。光を武器にするなら、鏡に跳ね返されるリスクくらい計算しておくべきだったね」
枢は変形を解いた黒いパズルをポケットに収め、動かなくなった勇者の横を通り過ぎる。
「ふふ……、あはは! 聖剣をただの『反射の実験台』にしちゃうなんて!
枢くん、あなたこそがこの世界の真の『光』だわ」
繭が、折れた聖剣を満足げに踏みつけ、枢の後を追う。
彼女にとって、神話の終焉は、枢の知能が世界を完全統治するための「前座」に過ぎなかった。
(……ふぅ。光の全反射角をリアルタイムで追うのは、さすがに脳がオーバーヒートしそうだ)
枢は鼻から流れる血を無造作に拭い、王都の中枢――教皇が震えて待つ聖堂へと、静かに歩を進めた。
這いつくばる五千の騎士たちの「絶望」を越え、枢(くるる)が踏み出した先。
そこに、一人の少年が立っていた。
白銀の鎧を纏い、手には太陽の破片を削り出したかのような光り輝く剣――『聖剣エクスカリバー』を握る、伝説の勇者。
「そこまでだ、異端の演算者。その禍々しいパズルを捨てろ。さもなくば、この聖なる光が貴様を塵に帰す」
勇者が剣を掲げると、周囲の魔力が一点に収束し、視界を焼き切るほどの純白のエネルギーが暴れ狂う。
それは、あらゆる防御を貫通し、対象を分子レベルで蒸発させる「絶対切断」の光。
「……枢くん。あの光、まずいわ。私の直感が『回避不能』だと叫んでる」
繭(まゆ)が枢の腕を強く掴む。
だが、枢は眼鏡を指先で押し上げ、勇者の掲げる光の「波長」を冷静に観測していた。
(演算開始。エネルギー源は重粒子。波長は四〇〇ナノメートル付近。
指向性を持つレーザーと同質のコヒーレント光……。
……パズルの難易度は『神(しん)』。全脳細胞の九八パーセントを、反射係数の計算に割く)
カチャ、カチャンッ!!
枢の手の中で黒いパズルが液体のようにうねり、無数の多面体レンズを組み合わせた、漆黒の『反射鏡(プリズム)』へと変形した。
「……死ね。――『聖なる閃光(ホーリー・レイ)』!!」
勇者が剣を振り下ろした。
極太の光の奔流が、一瞬で枢の視界を真っ白に染め上げる。
王都の石畳が蒸発し、大気が悲鳴を上げるほどの熱量が枢を呑み込んだ――はずだった。
「なっ……光が、曲がって……!?」
勇者が絶叫する。
枢の前に展開された黒いプリズムに触れた瞬間、絶対の光は「一ミリの熱」も残さず、鏡の表面で九十度に折れ曲がり、空を裂いて遥か彼方の山を消し飛ばした。
「……驚くことじゃない。光は最短経路を通る性質がある。
ならば、僕がその経路を『パズル』でねじ曲げれば、君の攻撃は永遠に僕には届かない。
君が神聖視するその光も、僕にとってはただの『直進する波』に過ぎないんだ」
枢は、鏡を保持したまま、勇者へと一歩近づく。
「反射係数、再計算。――定義変更(リライト)。
入射角と反射角を固定。焦点(フォーカス)は……君の心臓にある『魔力核』だ」
「ま、待て! やめろッ!!」
枢がプリズムの角度を、コンマ数ミリだけ微調整した。
勇者が放ち続ける聖剣の光は、枢の鏡によって完璧に反転し、レンズの焦点のように一点へと凝縮。
そのまま、勇者の胸元に刻まれた「勇者の紋章」へと突き刺さった。
ドォォォォォォン!!
自分の力に焼き切られ、勇者の鎧が砕け散る。
伝説の武器はただの鉄屑となり、勇者は己の放った光の残滓に焼かれ、地に伏した。
「……最短手順だ。光を武器にするなら、鏡に跳ね返されるリスクくらい計算しておくべきだったね」
枢は変形を解いた黒いパズルをポケットに収め、動かなくなった勇者の横を通り過ぎる。
「ふふ……、あはは! 聖剣をただの『反射の実験台』にしちゃうなんて!
枢くん、あなたこそがこの世界の真の『光』だわ」
繭が、折れた聖剣を満足げに踏みつけ、枢の後を追う。
彼女にとって、神話の終焉は、枢の知能が世界を完全統治するための「前座」に過ぎなかった。
(……ふぅ。光の全反射角をリアルタイムで追うのは、さすがに脳がオーバーヒートしそうだ)
枢は鼻から流れる血を無造作に拭い、王都の中枢――教皇が震えて待つ聖堂へと、静かに歩を進めた。
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