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第15話 神様をこき使ったら、世界が「オート」で平和になりました
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「……ミアナ、こっちの関税計算が合わない。やり直しだ」
「ひ、はいぃぃっ! ただいま修正します、監査官様!」
王城の執務室。
俺、黒瀬カイトの目の前では、かつて俺を『ゴミ』と呼んだ女神ミアナが、
涙目になりながら凄まじい速度でペンを走らせていた。
神の処理能力は伊達じゃない。
今まで俺と文官たちが数人がかりで一週間かかっていた大陸全土の予算編成を、
彼女はたったの一時間で片付けていく。
(……神を事務員にする。我ながら、とんでもない解決策を思いついたもんだ)
俺は、ルビィが淹れてくれた「火傷しそうなほど熱い」お茶をすすりながら、
ようやく訪れた束の間の一服を楽しんでいた。
だが、この平和(?)も長くは続かない。
「マスター! 大変ですわ! 西の砂漠で巨大なサソリが大量発生して、村を襲おうとしています!」
ルビィが窓から飛び込んできて叫んだ。
「なに、サソリ? よし、俺が行って――」
「あ、カイト様は動かないでください。不浄な虫は、私がこの『聖なる火炎放射(自作魔道具)』で消毒してきますから」
エリスが物騒な武器を担いで横切る。
「……待て。二人とも待て」
俺は立ち上がり、秘書のデスクを指差した。
「ミアナ。……仕事だ」
「はっ! 砂漠のサソリですね! 『天罰(気象操作)』により、局地的な豪雨と氷結を確認。
ついでに生態系のバランスを調整し、サソリを肥料に変換しました!」
ミアナが指先で空中に円を描くと、遠くの空で雷鳴が轟いた。
数秒後、水晶球に映し出された砂漠は、一面の緑に変わっていた。
「……終わりました。住民には『神の奇跡(カイト様経由)』として伝えてあります」
「よし、お疲れ」
凄まじい。
俺がハッタリをかますまでもなく、神が「忖度」して物理現象を書き換えてしまう。
今や俺の仕事は、ミアナに「いい感じにしておけ」と指示を出すだけの、
完全な『オート・ヒーロー』と化していた。
だが、物事が上手くいきすぎると、別の問題が発生する。
「……ねえ、お兄さん」
俺の膝の上で、魔王アリスが不満げに頬を膨らませた。
「最近、お兄さん全然『ハッタリ』を使ってくれませんね。私、退屈です」
「……ハッタリなんて、使わなくて済むならその方がいいだろ」
「ダメですよ。お兄さんは嘘をついて、世界を騙して、冷や汗を流している時が一番輝いています」
アリスが俺の喉元に、冷たい指先を添えた。
「今のままだと、お兄さんはただの『本物の神』になっちゃいます。
それはつまらない。……だから、新しい『刺激』を用意してあげました」
「……は?」
嫌な予感。
ルビィ、エリス、ミアナ、そして勇者レオンまでが、一斉に俺を見た。
「実は……カイト様のあまりの有能ぶりに、隣の大陸の連中が『嫉妬』したようでしてな」
騎士団長ゼクスが、苦笑いしながら部屋に入ってきた。
「彼らはこう言っています。『あんなに平和なのはおかしい。カイトは禁忌の魔法で、国民全員の脳を洗脳しているに違いない』と」
「……ほう」
「そして、その洗脳を解くために、『正義の連合軍』を結成したそうです。
その数……およそ、百万人」
「……ひゃく、まん」
俺の喉が鳴った。
10万の次は100万。
この世界の軍事インフレは、どうやら限界を知らないらしい。
「しかも、彼らは『カイトは魔力1の詐欺師だ』という事実を、
全人類に一斉放送する魔道具を準備しているとか」
「……詰んだな」
俺は椅子に深くもたれかかった。
今までのハッタリがすべて暴かれる。
そうなれば、スキル【虚言現】は無力化され、俺はただのゴミに戻る。
だが、俺の周りの災害たちは、なぜか嬉しそうに笑っていた。
「楽しみですわ、マスター! 100万人の前で、どんな大嘘をかましてくださるのか!」
「カイト様の新たな聖典、100万部発行のチャンスですね」
「監査官様! 私も全力で『演出(神罰)』をサポートしますから!」
「……ククッ。さあ、カイトお兄さん。世界を相手にした、史上最大の詐欺の始まりです」
アリスが俺の耳元で囁く。
俺、黒瀬カイト。
魔力1。スキル『嘘』。
相手は、俺を殺そうとする100万の正義の味方と、
俺の正体を暴こうとする全世界の視聴者。
……いいだろう。
これほど大きな舞台、詐欺師として燃えないわけがない。
俺は震える手で、最高級のワイン(に中身を入れ替えたぶどうジュース)を煽った。
「……ああ、面倒くさい。――まとめて騙してやるよ」
史上最大の『公開処刑』は、
俺の手によって、史上最大の『宗教行事(フェス)』へと書き換えられる。
俺の異世界生活。
どうやらここからが、伝説の「第一章完結」に向けての、最大の見せ場らしい。
「ひ、はいぃぃっ! ただいま修正します、監査官様!」
王城の執務室。
俺、黒瀬カイトの目の前では、かつて俺を『ゴミ』と呼んだ女神ミアナが、
涙目になりながら凄まじい速度でペンを走らせていた。
神の処理能力は伊達じゃない。
今まで俺と文官たちが数人がかりで一週間かかっていた大陸全土の予算編成を、
彼女はたったの一時間で片付けていく。
(……神を事務員にする。我ながら、とんでもない解決策を思いついたもんだ)
俺は、ルビィが淹れてくれた「火傷しそうなほど熱い」お茶をすすりながら、
ようやく訪れた束の間の一服を楽しんでいた。
だが、この平和(?)も長くは続かない。
「マスター! 大変ですわ! 西の砂漠で巨大なサソリが大量発生して、村を襲おうとしています!」
ルビィが窓から飛び込んできて叫んだ。
「なに、サソリ? よし、俺が行って――」
「あ、カイト様は動かないでください。不浄な虫は、私がこの『聖なる火炎放射(自作魔道具)』で消毒してきますから」
エリスが物騒な武器を担いで横切る。
「……待て。二人とも待て」
俺は立ち上がり、秘書のデスクを指差した。
「ミアナ。……仕事だ」
「はっ! 砂漠のサソリですね! 『天罰(気象操作)』により、局地的な豪雨と氷結を確認。
ついでに生態系のバランスを調整し、サソリを肥料に変換しました!」
ミアナが指先で空中に円を描くと、遠くの空で雷鳴が轟いた。
数秒後、水晶球に映し出された砂漠は、一面の緑に変わっていた。
「……終わりました。住民には『神の奇跡(カイト様経由)』として伝えてあります」
「よし、お疲れ」
凄まじい。
俺がハッタリをかますまでもなく、神が「忖度」して物理現象を書き換えてしまう。
今や俺の仕事は、ミアナに「いい感じにしておけ」と指示を出すだけの、
完全な『オート・ヒーロー』と化していた。
だが、物事が上手くいきすぎると、別の問題が発生する。
「……ねえ、お兄さん」
俺の膝の上で、魔王アリスが不満げに頬を膨らませた。
「最近、お兄さん全然『ハッタリ』を使ってくれませんね。私、退屈です」
「……ハッタリなんて、使わなくて済むならその方がいいだろ」
「ダメですよ。お兄さんは嘘をついて、世界を騙して、冷や汗を流している時が一番輝いています」
アリスが俺の喉元に、冷たい指先を添えた。
「今のままだと、お兄さんはただの『本物の神』になっちゃいます。
それはつまらない。……だから、新しい『刺激』を用意してあげました」
「……は?」
嫌な予感。
ルビィ、エリス、ミアナ、そして勇者レオンまでが、一斉に俺を見た。
「実は……カイト様のあまりの有能ぶりに、隣の大陸の連中が『嫉妬』したようでしてな」
騎士団長ゼクスが、苦笑いしながら部屋に入ってきた。
「彼らはこう言っています。『あんなに平和なのはおかしい。カイトは禁忌の魔法で、国民全員の脳を洗脳しているに違いない』と」
「……ほう」
「そして、その洗脳を解くために、『正義の連合軍』を結成したそうです。
その数……およそ、百万人」
「……ひゃく、まん」
俺の喉が鳴った。
10万の次は100万。
この世界の軍事インフレは、どうやら限界を知らないらしい。
「しかも、彼らは『カイトは魔力1の詐欺師だ』という事実を、
全人類に一斉放送する魔道具を準備しているとか」
「……詰んだな」
俺は椅子に深くもたれかかった。
今までのハッタリがすべて暴かれる。
そうなれば、スキル【虚言現】は無力化され、俺はただのゴミに戻る。
だが、俺の周りの災害たちは、なぜか嬉しそうに笑っていた。
「楽しみですわ、マスター! 100万人の前で、どんな大嘘をかましてくださるのか!」
「カイト様の新たな聖典、100万部発行のチャンスですね」
「監査官様! 私も全力で『演出(神罰)』をサポートしますから!」
「……ククッ。さあ、カイトお兄さん。世界を相手にした、史上最大の詐欺の始まりです」
アリスが俺の耳元で囁く。
俺、黒瀬カイト。
魔力1。スキル『嘘』。
相手は、俺を殺そうとする100万の正義の味方と、
俺の正体を暴こうとする全世界の視聴者。
……いいだろう。
これほど大きな舞台、詐欺師として燃えないわけがない。
俺は震える手で、最高級のワイン(に中身を入れ替えたぶどうジュース)を煽った。
「……ああ、面倒くさい。――まとめて騙してやるよ」
史上最大の『公開処刑』は、
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