博多に移住して人生をやり直す

耶麻寿

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Prologue

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物心ついた時から、俺はずっと貧乏だった。

両親が早くに離婚して俺が理解出来た頃には、母親と都営住宅で二人暮らしをしていた。
金持ちになりたい、欲しいものは全部手に入れたい。
十代の頃は必死になっていたが、横田先輩と組んでからはお金への執着が薄くなった。
マネジメントの面白さに目覚めてからは、恋愛すら面倒に感じる。
女性との関係は風俗遊びで十分、経営は綱渡りだったがそれすら快感だった。

社長業が上手く回り出してお金が入っても、渋谷の中古マンションを買った以外には大金を使わない。
スーツと革靴は戦闘服だから金をかけたが、別にオシャレを楽しんだわけではない。
金融manager/佐藤氏と知り合ってからは、資産管理は任せっきりにしていた。

結局、俺は横田先輩をうまく利用して成り上がった。
全てが俺の力とは言い切れないが、先輩も自分ひとりでは世間に埋もれていたはずだ。
お互いにうまくいったので、結果は最高だろう。

ただ金を手にした代わりに、虚しさだけが残った。
もう二度とあの燃え上がるような精神の高揚は得られない。
大金を手にしてみたら、減らすのが怖くて新しい事を始める勇気も無い。
気持ちが落ち着いた頃、俺は高校時代に交際していた結城ゆうき璃咲りさきを食事に誘ってみた。

「璃咲、元気にしてた?」

つよし、久しぶりね。2年ぶりかしら?」
彼女は、仕事帰りのOLにしては華やかなワンピースを着ている。

「君は、前より一段とキレイになったな」

「毅社長の奢りだから、お洒落してあげた」

「君が好きな中華料理を予約してある。さあ、行こうか」
待ち合わせた丸の内のカフェを出て、東京駅に隣接するホテルの中華ダイニングに向かって歩く。
隣に並んだ彼女が俺の腕に絡みついて来た。

「俺と腕なんか組んでいいのか? 彼氏が嫉妬するだろう」

「大丈夫、彼方が心配しなくていいわ」
何が大丈夫かは知らないが、彼女がいいなら気を遣う必要は無い。
ホテルに着くと、地下の中華ダイニングにエレベータで向かう。
事前に予約を入れてあるので、入り口で名乗ると速やかに席に案内された。
まずはビールで乾杯して、前菜から食べ始める。
久しぶりに味わう一流ホテルの料理は、食事を楽しむことを思い出させてくれた。
一息ついたところで、話を切り出す。

「璃咲、俺は社長を辞めたんだ」

「ええ !! クビになったの?」

「いや、会社を売った」

「ああ、びっくりした。M&Aってやつね、儲かった?」

「一生働かなくていいくらいは貰ったよ」

「良かったじゃん。昔は貧乏だったけど、やっと抜け出せたね」

「それが良くないんだ。この先何をすれば良いか、分からなくなった」

「毅は、群れるタイプじゃないもんね。
他人の下で大人しく出来ないし、友達いないし、女に心を許さないから恋愛も無理だし」

「ひでえな、まるで俺が社会不適合者みたいじゃないか」

「今、分かったの? 毅は一匹狼なの。
誰も付いてこないから、一人でお店でもすれば楽しいと思うよ」

確かに彼女のいう事は間違ってない。
Gifted社でも、俺が横田先輩を盛り立てようとしたから周りのスタッフが付いて来た。
俺自身はずっと嫌われていたんだ。

「毅は完璧主義者だから、職人が向いてるね。
昔から料理が上手いんだから、料理人とかパティシエとか面白いかも」

璃咲は思いつくまま適当な事を言ってるが、本質を突いてくるので馬鹿に出来ない。

「璃咲と話してると、人生を難しく考えすぎてたことがアホらしくなった」

「毅の人生だもん、自分が楽しく生きればいいのよ」

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