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第五章 1年生 冬休み
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12月24日、最後の実習が終わった後にカフェ専科クラスのクリスマス会があった。
天神某所、営業開始前のダイニングバーを貸し切りしている。
幹事は古賀陽妃と実習班メンバーで、素敵な会場を押さえていた。
「皆さん、2学期お疲れさまでした。メリークリスマス」
「 「メリークリスマス」 」
全員が声を上げたら、クラッカーが鳴り響いた。
「香山さん、この後二次会に行きましょうね」
俺は班の3人娘に囲まれている。
「今夜は高橋さんと大人の約束がある。残念だな」
「じゃあ、これ私達からのプレゼントです」
紗彩が俺に箱を手渡してきた。
「開けていいか?」
「どうぞ、3人で選んだんですよ」
箱を開けると手袋が入っていた。手に取ると甲側がツイード、手のひら側が羊皮だ。
手を入れるとツイードは温かく、皮はしっとり吸い付くような柔らかさだった。
相当、良い物だと分かる。
「ありがとう、嬉しいよ。いい値段だったんじゃないか?」
「今まで香山さんに奢ってもらったお返しです。また東京のお土産も待ってますよ」
「ああ、任せとけ」
全く考えていなかったので、3人の気持ちが嬉しい。
クリスマス会は、ビンゴ大会やカラオケ大会などで盛り上がった後、解散となった。
高橋さんと一緒に会場を出ると、武内凜花と古賀陽妃が付いてくる。
西通りから大名に入ったところで、ビルの階段を上った2階のバーに入った。
せっかくバーに来たのでジントニックを頼む。
女性二人は店のお勧めカクテル、高橋さんは山崎のハイボールを注文した。
「今年一年、お疲れさまでした」
「 「乾杯」 」
軽く全員とグラスを合わせてから口にすると、ジントニックの爽やかな味が喉を潤した。
気配を感じると、女性二人が俺を見ている。
「香山さん、失恋したってホントですか?」
「誰に聞きました?」
「クラスで噂になってます」
あの3人の誰かが話したに違いない、まあいいけど。
「本当ですよ、この夏の話です」
「どんな女性ですか?」
「平凡な顔で痩せてました。
ただ気が強かった、私をイラつかせるくらい」
「いつも落ち着いてる香山さんがイラつくって相当ですね」
「この話を相談した人からも、イラついたというのは気になってた証拠だと言われました。
ここまでにしておきましょう、心の古傷が痛みます」
「まだ引きずってるんですか?」
「ええ、心に棘が刺さったままです。
思い出すので、もう許して下さい」
「素晴らしい体験だと思いますよ。
人生で心の傷になるほどの失恋なんて、早々に経験するものじゃないです」
高橋さんが助けてくれる、確かに失恋したのは璃咲にフラれて以来、2度目のことだ。
「そうですね、この経験を次に生かします」
「私がお相手しましょうか?」
古賀陽妃が俺をからかう。
「いえ、今はけっこうです」
「やっぱり若い子がいいんですね」
「あえて、否定しません」
「「ひど~い」」
2人が一緒に声をあげた。
天神某所、営業開始前のダイニングバーを貸し切りしている。
幹事は古賀陽妃と実習班メンバーで、素敵な会場を押さえていた。
「皆さん、2学期お疲れさまでした。メリークリスマス」
「 「メリークリスマス」 」
全員が声を上げたら、クラッカーが鳴り響いた。
「香山さん、この後二次会に行きましょうね」
俺は班の3人娘に囲まれている。
「今夜は高橋さんと大人の約束がある。残念だな」
「じゃあ、これ私達からのプレゼントです」
紗彩が俺に箱を手渡してきた。
「開けていいか?」
「どうぞ、3人で選んだんですよ」
箱を開けると手袋が入っていた。手に取ると甲側がツイード、手のひら側が羊皮だ。
手を入れるとツイードは温かく、皮はしっとり吸い付くような柔らかさだった。
相当、良い物だと分かる。
「ありがとう、嬉しいよ。いい値段だったんじゃないか?」
「今まで香山さんに奢ってもらったお返しです。また東京のお土産も待ってますよ」
「ああ、任せとけ」
全く考えていなかったので、3人の気持ちが嬉しい。
クリスマス会は、ビンゴ大会やカラオケ大会などで盛り上がった後、解散となった。
高橋さんと一緒に会場を出ると、武内凜花と古賀陽妃が付いてくる。
西通りから大名に入ったところで、ビルの階段を上った2階のバーに入った。
せっかくバーに来たのでジントニックを頼む。
女性二人は店のお勧めカクテル、高橋さんは山崎のハイボールを注文した。
「今年一年、お疲れさまでした」
「 「乾杯」 」
軽く全員とグラスを合わせてから口にすると、ジントニックの爽やかな味が喉を潤した。
気配を感じると、女性二人が俺を見ている。
「香山さん、失恋したってホントですか?」
「誰に聞きました?」
「クラスで噂になってます」
あの3人の誰かが話したに違いない、まあいいけど。
「本当ですよ、この夏の話です」
「どんな女性ですか?」
「平凡な顔で痩せてました。
ただ気が強かった、私をイラつかせるくらい」
「いつも落ち着いてる香山さんがイラつくって相当ですね」
「この話を相談した人からも、イラついたというのは気になってた証拠だと言われました。
ここまでにしておきましょう、心の古傷が痛みます」
「まだ引きずってるんですか?」
「ええ、心に棘が刺さったままです。
思い出すので、もう許して下さい」
「素晴らしい体験だと思いますよ。
人生で心の傷になるほどの失恋なんて、早々に経験するものじゃないです」
高橋さんが助けてくれる、確かに失恋したのは璃咲にフラれて以来、2度目のことだ。
「そうですね、この経験を次に生かします」
「私がお相手しましょうか?」
古賀陽妃が俺をからかう。
「いえ、今はけっこうです」
「やっぱり若い子がいいんですね」
「あえて、否定しません」
「「ひど~い」」
2人が一緒に声をあげた。
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