博多に移住して人生をやり直す

yamajuu

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第七章 春休み

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3月のシドニーは日本の9月と同じような季節になる。
昨今の9月まで猛暑が続く日本より、少し涼しい感じだ。

「お待たせしました」
時間通りに現れた武内女史は、ワンピース姿でちゃんとメイクをしている。

「いや、時間通りだよ。それにしても、普段より一段とお美しい」

「さっそく口説くつもりですか?」

「いや、社交辞令だ」

「まあ、ひどい」
言葉とは裏腹に、笑顔で一緒に歩き出す。
ホテルから5分ほどでカフェバーに着いて、カップル席に案内された。
ステーキとピザを注文、ビールはピッチャーサイズを頼んで二人でシェアする。
運ばれて来た300gのステーキには野菜が山盛りの上にポテトが添えられているし、ピザもSサイズが日本のレギュラーサイズだ。
武内女史が別々の皿に料理を切り分けてくれて、乾杯をした。

「明日からのことだが、14日間の長丁場だから完走することが大事だ。
少しでも君がつらい時は、ハッキリ言ってくれ」
食事をしながら、俺は切り出す。

「分かりました」

「俺は気が利かないから、君から言ってもらえると嬉しい」

「私も色々と見て回りたいから、体調には気をつけますね」
ビールを飲みながら色々と話して、明日はシドニー大学地区を回ることにした。
1時間ほど食事を楽しんでから、ホテルに戻った。

翌朝、午前8時にロビーに降りていくと彼女はもう待っていた。
Tシャツにパーカー、パンツにスニーカーのウォーキングスタイルでキャップを被っている。
俺もロンTにストレッチパンツ、スニーカーで、紫外線が強いのでグラスとキャップは必須だった。
ホテルの近くからバスに乗って15分でシドニー大学の学生街に到着する。
学生向けのカフェを見つけて朝食を食べることにした。

「フラットホワイトとデニッシュにしたよ」
ベーカリーを併設しているので、パンを朝食に選ぶ。

「私はサラダをメインにオムレツにして、コーヒーはラテです」
席に着いたら、まずデジカメで料理を撮影してから食べ始めた。
デニッシュは旨い、バターをたっぷり使っているのが分かる。
フラットホワイトも美味しい。
店内を見ていると、学生がコーヒーをテイクアウトしている。
大学の登校時間なのか、店内で食べるよりテイクアウトの方が多いようだ。
食べ終わって店を出てから、外観や周りの景色を撮影する。
日本とは色使いが違ってアースカラーにペイントされたお店が並んでいて、カフェはモスグリーンに塗られていた。

「モスグリーンの外観って、素敵ですね」

「ロゴを白にしているのも、センスが良い」
最初のカフェを撮影した後はニュータウンの通りに面したカフェを見て回る。
歩いて30分の間に10軒以上の店が並んでいた。端から選びながら、カフェに入っていく。
俺も武内女史も大型店より個人経営の店に興味がある。
メインストリートから少し入った裏通りにある小さなカフェでランチを食べた。

「こういう静かな店っていいですね」

「ラビオリも美味しい、イタリア系なのかな?」

「オーストラリアにカフェ文化を持ち込んだのはイタリア移民です」

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