博多に移住して人生をやり直す

耶麻寿

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第十二章 2年生 3学期

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正月が終わって絵美里、貴大と武内女史を連れて、福岡市郊外の中古厨房機器の店を訪問した。
店の工事開始前にベーカリーカフェで使う厨房機材を、少しでも安く買えればいいと思っている。

「香山さん、想像以上にたくさんありますね」

「兵どもが夢の跡だ。ほとんどが閉店した店のものだろう」

「厳しいですね。怖くなります」
これだけ厨房機器が山積みしてあれば、貴大がビビるのは仕方がない。
俺と貴大で製パン機器、絵美里と武内女史でカフェの機器を見て回る。
幾つかの候補を販売店に頼んで、見積もりを出してもらった。

「あんなにあるんですね、迷いました」
次の店まで俺の車で移動中、絵美里も想定外だったようだ。

「学校で使っているデッキオーブンがあったよ」
貴大がオーブンの前でずっと迷っていた。

「やっぱり慣れた機種がいいか?」

「まあ、安心ですよね」

「オーブンは新品にしよう」
パン屋の心臓部だ、少しでも不安の種は取り除くほうがよい。
結局、2店舗で機器のほとんどが揃う事が分かった。
後はレイアウトを施工業者と詰めることになる。
ほぼ同じ年明けに、早良区曙に純喫茶加藤の移転予定地を買収する事が決まった。
土地を担保に銀行から融資が受けられる交渉がまとまって、手続きで大忙しになっている。
裏で武内女史の父親が動いてくれたようで、経営権を譲ったのは正解だった。

「これで資金繰りに余裕が持てる。全て運営資金だと余裕が無くなってた」

「十分に担保価値があるから、向こうも安心してるよ」

「これで来月には建物の補強、改装工事に目途がついたね」

「4月初めにはオープンさせます」
気合が入ってる、武内女史も社長業が板に付いてきた。

そんな忙しい中、地元不動産会社から連絡が入った。
年度末までに、どうしても現金化したい土地がある。
博多の旧市街、歴史ある奈良屋町に68坪で3億円、現金支払いなら売りたいと言ってきた。

すぐに資産管理会社の金融manager/佐藤氏に連絡すると、翌日には博多までやって来た。
空港で出迎えて、俺の車で現地まで連れていく。

「良いですね、歴史ある土地に新店を建てるのは良い選択です」
佐藤氏は、今はコインパーキングになっている土地を見て言った。

「やっと、まともな土地に巡り合いました」

「一応、当社が手配して土地の権利関係などを調べます。
その後は香山さんの決断次第ですね」

1月から2月初めにかけては、俺と武内女史は常に放課後や週末は一緒に飛び回った。
みんなが卒業制作にかかりきりの中、店造りの毎日を過ごしている。
製菓学校の担任からは、俺と武内女史は会社設立の経緯を論文で出せばいいと確約をもらっていた。

「これが私たちの店なんだ」
ほぼ外観が出来上がり、内装や設備工事が終わるのを待つ店舗に、絵美里と貴大を連れてきた。

「すげえよ」
貴大が一言だけ絞り出した。

「香山さんって、ホントすごいね。
ちゃんと言った事を実現しちゃうんだもん」

「当たり前だろ。俺は出来ないことは言わないよ。
後は、お前たち次第だ」

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