博多に移住して人生をやり直す

耶麻寿

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第十四章 始動

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「花蓮、香山さんの彼女になれて良かったね。
これ、私と貴大からのお祝いよ」

ランチの時間を外して姪浜店に花蓮を連れて行くと、絵美里がカレーパンを出した。

「まあ、食べて。すぐにラテを持ってくる」
相変わらず、仲が良いのか悪いのか分からない。

「辛い」
一口食べた彼女が俺を見る。

「辛さが売りの商品だ」

「辛いけど、味が濃い。これ焼いてるんだね」
焼きカレーパンを花蓮が味を確かめるように食べている。
絵美里が持って来た黒糖ラテとよく合うはずだ。

「貴大と絵美里がカレー専門店を食べ歩いて作った新作だ。
珈琲加藤の本店がオープンするのに合わせて、売り出す」

「もう、貴大はそこまで任されているんだ」

「ああ、パンは貴大が責任者だ。実戦で鍛えている。
これだって、何十回もダメ出しされた結果だよ」
彼女は、同じ学校を出た職人としてライバル心があるんだろう。
商品になったパンを見せつけられて、ショックの様子だ。

「売り物のパンを買って帰る」
花蓮が立ち上がって、パンコーナーで物色を始めた。
籠に並べて陳列されているパンを選んで、トレイに乗せている。
支払いを済ませて戻って来たので、俺は席を立って一緒に店を出た。
車で彼女を家まで送っていく。

「毅の会社に入りたかった」
車内で花蓮がポツリと言った。

「今の店で腕を磨いておけ。チャンスはいくらでもあるよ」

「立ち上げの苦労を一緒にしたかったの」

「恋愛と仕事を一緒には出来ないよ。どちらか片方を選ぶ事になる」
俺がそう言ったら、急に静かになった。
彼女が怒ってるのか、何を考えているのかが分からない。
静かなまま、花蓮の家に着いた。

「今日はありがとう。また連絡するね」

「今日は、君と一緒にいて楽しかった。ありがとう」
彼女が降りる前に、お礼だけは言いたかった。

4月17日、珈琲加藤 本店が移転オープンする。
青鈍色に塗装された外壁は、近隣の家屋には無い色で際立っていた。
元々は個人の住宅だったが、耐震補強をして内外装はカフェにリフォームされている。

「辞めるって思っていた店が、こんなに綺麗な店に生まれ変わるとは思わなかった」
マスターはしみじみと店の前で呟く。

「マスターが43年も店を守ってくれたからです。ここからさらに飛躍させますよ」
俺と武内社長でマスターを挟んで、記念撮影をする。
彩音がすぐにインスタにUPしていた。

「毅君、開店おめでとう」
店の前にフラワースタンドを送ってくれたヨーコさんから祝福された。

「花を出していただき、ありがとうございます」

「素敵なお店になったのね。通うのが楽しみだわ」

「期待に答えられるように頑張ります」
招待客に挨拶をしながら、店内を回る。

「香川君、素晴らしい店だ。開店おめでとう」
エイジア製菓学校の担任だった春田先生が来てくれた。

「先生のお陰ですよ。マスターに引き合わせてくれなかったら、俺はここに居ません」

「いや、君の人を引き寄せる力が成し遂げたんだ。
出来たら、うちの学生をインターンシップで受け入れてくれ」

「店の運営が正常化すれば、受け入れますよ。
夏休みの頃なら、大丈夫でしょう」

これからのスタッフ確保のためにも、学校とは仲良くしておきたい。

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