博多に移住して人生をやり直す

耶麻寿

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第十四章 始動

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4月20日に奈良屋町の土地の地盤調査が終わり、基礎工事開始の前に地鎮祭が行われる。
建設業者に一任して、式典にだけ参加した。
重量鉄骨3階建て、建築費、付帯工事等で1億5,000万円、店舗工事費用と土地の取得費用を入れると総額5億円のプロジェクトになる。
俺としても、人生を賭ける勝負だ。

「やっと香山さんの店が建てられます」
今住んでいる家を建てた建設会社が、今回の建設工事も担当する。
相談を重ねた担当者が思いを告げた。

「ここに決まるまでが長かったな。ずいぶんと君たちを待たせてしまった」

「大金がかかってるから、仕方がない事です。ここからスタートですよ」

「色々と注文が多くて苦労させると思うが、よろしく頼む」

「任せてください」
返事が前向きなのは、自信の表れだろう。
前回の工事でも住宅診断士の評価が高かったので、信用している。
それでもけじめとして、今回も住宅診断士に依頼した。

「絵美里、花蓮がショックを受けていたぞ」
GW直前、俺が姪浜店のサポートに入った時に彼女と話した。

「香山さんとつき合って、調子に乗っているからよ。
その間、貴大はずっと悩んでいたんだから」
貴大は、姪浜店で販売するパンの選択から値付け、製造まで全て任されている。
ただ俺と武内社長からの指示で、売れ残っても指定数を作らなければならない。
開店して1週間は、廃棄が出るとノイローゼになるとぼやいていた。
だが2週間目から売れない商品を新商品に入れ替えを始めてから、廃棄商品が徐々に減り始めた。
毎週、新製品を3種類ほど投入して、今では開店時の商品は半分しか残ってない。

「貴大、頑張っているな」

「涼介と健太がデニッシュを作ってくれて助かりました」

「3人のコンビが上手く行ってるなら、俺も嬉しいよ」

「今頃になって、香山さんの言葉が本物だって分かりました」

「俺が何か言ったかな?」

「香山さんが会社を作って3年間、楽しくて1日も休まなかったって言ったでしょう。
内心では、本当かなって疑ってました。
でも店を任されたら、面白くて、楽しいんです」

「仕事の面白さが分かったのは、貴大が本気で取り組んだからだ」

「香山さんがチャンスをくれたからです。
普通は製菓学校を出たての新米に、店を任せたりしませんよ」

「水炊きを食べた時から続いてる仲じゃないか。
貴大の実力を知ってるから、任せたんだ」

「それが嬉しいんです」
奴の考えが大人になってきた。
やっぱり男を磨き上げていくには、仕事で鍛えるのが一番だ。

「こんなところで満足するな。
珈琲加藤の製パンは、お前にかかってるんだ」

「香山さんについて行きますよ。任せて下さい」
また挫折することもあるだろうが、今はこのままで良い。

GWには来店が増えると思われるので季節限定のデザート、イチゴのババロアを目玉にすることにした。
提案したのは綾香と紗彩だ、カフェ専科の卒業制作で仕様は出来ている。
涼介と健太が試作を繰り返して、4度目でOKが出た。

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