ある犬のリアルティー

汐兎

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立ち止まる時

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君たちは、ふと立ち止まることがあるだろうか。
僕は、ある。
散歩の途中で立ち止まる。
くんくんと、周囲の空気の匂いを嗅ぐためだ。

数分前にこの場所を通ったであろう我が同胞たちの匂い。
近所のお宅のキッチンから溢れてくるケーキの焼ける匂い。
草や花の匂い、これは春の匂いだ。
それに混じって車の排気ガス、これはくんくんには値しない。
フレッシュな緑と入り混じった雨の日の匂いは格別だ。

くんくんしながら僕は何をしているのか、考えているのだ。
この道をまっすぐ進むべきか、違う方向へ行った方が良いか。
現状を振り返り、将来の方向性が正しいのか考える。
大切なことだ。
それを知ってか知らずか、相棒はくんくんが終わるまで僕を待つ。
そして方向が定まった後は、僕と一緒に足を向ける、またはその逆もある。
僕と逆方向へ進む時は、危険な食べ物や場所を避けるためだと言う。
だけど僕は「う~ん」と地べたに前足2本を突っ張って抵抗する。

そんな時、相棒は僕を無理やり方向転換させることを試みない。
僕が「う~ん」ってしているところの隣に来てしゃがみこむ。
僕の目線と合わせて、そして、あっちの方向へ行こう!とその方向へ指を指す。
こうやって僕の意見を聞くのである。

またある時は、相棒は僕に白状する。
「今朝はちょっと二日酔いで・・・ごめん、この辺りでうちに帰って寝たい。」とか。
そんな時は、僕は踵を返してうちへ向かう。
相棒はありがとう、と言う。僕の好きな言葉だ。
二日酔いがどんなものかは知らないが、体調が悪いのは一目瞭然。
仲間を気遣うことは大切だ。
大原則である。

僕らの意思をリスペクトしてくれれば、妥協、譲歩することはいつだって可能なのだ。

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