君の瞳に囚われて

ビスケット

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おさんぽ

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食事を終えると、おかあさまと庭を散歩するのが日課だ。最近は食べ過ぎでぶくぶく太った体で歩くのがおっくうで断ってばかりいたが、ご一緒することにした。

「カイン、今日は久しぶりに一緒にお散歩出来て嬉しいわ。最近のカインはあまりお散歩に来なかったでしょう?
体を丈夫にするためにも、これからもお母様と一緒に体を動かしましょうね。」
ふんわりと微笑んだ母は、手をつないで俺の歩調に合わせてゆっくり歩いてくれる。シンプルなドレスを着て、年のころは20代なかばといったところか。
華やかな美人ではないが、端正な顔立ちで、とても優しい母親だ。そして可哀想なひとだ。

覚醒した俺が、幼いカインの記憶をたどってみると、物心ついた頃から6歳になった現在に至るまで、何とも不安定な境遇だったと言うことがわかる。

元々俺は、ある子爵家の跡取り息子に生まれた子供だった。れっきとした嫡子だ。
俺の父親である子爵家の長男は、魔力をわずかしか持たなかった。
この世界は魔力絶対至上主義だ。王家の血が濃ければ濃いほど魔力が多い。
王族を頂点に、爵位が高いほど魔力量が多いピラミッド構造になっている。
子爵位だと、魔力量はそれなりといったところ。だが、俺の父は貴族にはあるまじき少なさだったらしい。
父が年頃になると、家格の釣り合う家の娘に婚約を申し込むのだが、すべて体よく断られてしまう。
子爵家には父のほかに次男もいたため、跡取りを弟に交代すれば良かったと思うのだが、父は据え置かれていた。それはなぜか。
俺の父は、権力のピラミッドの最上位にいる侯爵家令息、しかもその跡取り息子と親交があったらしい。
このため当時の子爵家当主は、未来の侯爵の友人という、強力なカードを持つ長男を次期子爵に据えるべく、婚約者探しに奔走した。
その結果選ばれたのが俺の母、今手を引いてくれている女性だ。
俺の母は、一代限りの準男爵の一人娘だった。準男爵とはいっても、完全に名誉のみだ。
野盗に襲われていた伯爵だかの馬車を守った通りすがりの冒険者に与えられたものだった。
父娘二人きりの家族だった為、自分が死んだ後の娘の行く末を案じた一代限りの準男爵と、子爵家の利害が一致し、話がまとまったのだった。
母が、父よりも少しだけ多く魔力を持っていたことも大きな要因だったろう。
利害に絡め取られたような結婚だったが、穏やかで誠実な父と優しい母は良好な夫婦関係を築いた。
そうして俺が生まれた。魔力なしの俺が。
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