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暗闇の中で
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誰にも知られることのない、グラン侯爵家別邸の一室で、暗闇の中に一人の男がたたずんでいた。男が手に持つ燭台のろうそくに手をかざすと、火が灯った。
丁寧に手入れされているとはいえ、使い古されてどこにでも置いてあるようなその備品は、今となっては この閉ざされた屋敷を外部につなぐ唯一の手段だった。
透明な石を水の中に沈めて周囲に紛れさせて隠すように、その魔道具は屋敷の中にさりげなく置かれていた。
炎を見つめながら、デモンが口を開いた。
「旦那様 夜分に失礼致します。火急のご報告をさせていただきたく。」
すると、ろうそくの先に灯る 小さな炎が渦を巻いたかと思うと、絶えず回転する青い円環に変化した。
「デモンか。何があった。」
青い環から低い男の声が響いた。
「カイン様は魔眼をお持ちです。本日、魔素を視認されていることを確認いたしました。」
男の 一切の無駄を省いた報告に、息を飲むような沈黙が流れた後、
「確かなのか」
と、主であるグラン侯爵ゼビウスの声が響いた。
昼間の経緯を侯爵に詳しく報告したが、デモンの独断によって、 カインに魔法回避の訓練を施した事については不問にされた。
「魔力を一切お持ちでないカイン様が、私の魔法発動の少し前から回避行動に移ることが かねがね不思議だったのですが、その理由がはっきり致しました。」
沈黙が続き、主の逡巡を感じ取ったデモンは口を開いた。
「数百年に一人出るか出ないかという魔眼持ちで、通常ならば膨大な魔力を有しているはずが、カイン様の場合 魔力無しであるのは間違いありません。
カイン様の身の安全の為にも、慎重を期すべきかと。
魔法看破を恐れる者による暗殺、逆にその力を欲する者による拉致、過去の例に鑑みて王家による囲い込みも懸念されます。
前にも申し上げましたが、そもそも6歳の幼子を母親から引き離すのはいささか問題があるのではないかと。
やはり、本邸への移動を覆す事はできないのでしょうか?
恐れながら、カイン様はメアリー様と共に、このままこちらで過ごされるのがよろしいかと推察いたします。」
デモンの淡々とした言葉に、ようやく主の声が帰ってきた。
「・・・決定通りにカインは本邸に来させる。
いつまでもそこに居させることは不可能だ。全ての貴族に課せられた学院への入学義務は避けられない。
ヘレネも、カインの行く末を案じている。このままではレオとアレクと兄弟の絆が作れぬとな。
私亡き後、カインを守るのは息子達になろう。
それに、メアリーを侯爵家の中心に呼び寄せ、貴族社会を泳がせるのも酷であろうよ。
魔眼については こちらでも対策を考える。ご苦労だった。」
その声を最後に、青い環がほどけるように消えてゆき、常の炎の揺らめきに戻ったのだった。
デモンは、それからもしばらく黙って炎を見つめていたが、ふっと吹き消すと部屋をあとにしたのだった。
丁寧に手入れされているとはいえ、使い古されてどこにでも置いてあるようなその備品は、今となっては この閉ざされた屋敷を外部につなぐ唯一の手段だった。
透明な石を水の中に沈めて周囲に紛れさせて隠すように、その魔道具は屋敷の中にさりげなく置かれていた。
炎を見つめながら、デモンが口を開いた。
「旦那様 夜分に失礼致します。火急のご報告をさせていただきたく。」
すると、ろうそくの先に灯る 小さな炎が渦を巻いたかと思うと、絶えず回転する青い円環に変化した。
「デモンか。何があった。」
青い環から低い男の声が響いた。
「カイン様は魔眼をお持ちです。本日、魔素を視認されていることを確認いたしました。」
男の 一切の無駄を省いた報告に、息を飲むような沈黙が流れた後、
「確かなのか」
と、主であるグラン侯爵ゼビウスの声が響いた。
昼間の経緯を侯爵に詳しく報告したが、デモンの独断によって、 カインに魔法回避の訓練を施した事については不問にされた。
「魔力を一切お持ちでないカイン様が、私の魔法発動の少し前から回避行動に移ることが かねがね不思議だったのですが、その理由がはっきり致しました。」
沈黙が続き、主の逡巡を感じ取ったデモンは口を開いた。
「数百年に一人出るか出ないかという魔眼持ちで、通常ならば膨大な魔力を有しているはずが、カイン様の場合 魔力無しであるのは間違いありません。
カイン様の身の安全の為にも、慎重を期すべきかと。
魔法看破を恐れる者による暗殺、逆にその力を欲する者による拉致、過去の例に鑑みて王家による囲い込みも懸念されます。
前にも申し上げましたが、そもそも6歳の幼子を母親から引き離すのはいささか問題があるのではないかと。
やはり、本邸への移動を覆す事はできないのでしょうか?
恐れながら、カイン様はメアリー様と共に、このままこちらで過ごされるのがよろしいかと推察いたします。」
デモンの淡々とした言葉に、ようやく主の声が帰ってきた。
「・・・決定通りにカインは本邸に来させる。
いつまでもそこに居させることは不可能だ。全ての貴族に課せられた学院への入学義務は避けられない。
ヘレネも、カインの行く末を案じている。このままではレオとアレクと兄弟の絆が作れぬとな。
私亡き後、カインを守るのは息子達になろう。
それに、メアリーを侯爵家の中心に呼び寄せ、貴族社会を泳がせるのも酷であろうよ。
魔眼については こちらでも対策を考える。ご苦労だった。」
その声を最後に、青い環がほどけるように消えてゆき、常の炎の揺らめきに戻ったのだった。
デモンは、それからもしばらく黙って炎を見つめていたが、ふっと吹き消すと部屋をあとにしたのだった。
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