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ヴェネツィア
プロローグ
「はぁぁああ~っ」
私は重く暗い溜息をつき、ワインを一気飲みして、カウンターにグラスを置いた。
今夜は――明日から夏のバカンスだということもあり、友人とヴェネツィアにあるバーカロで飲んでいる。
このバーカロは立ち飲み居酒屋ではあるが、お酒やおつまみが安くて美味しく、とても居心地がいい。大好きなのだが、今はそんなお気に入りの場所で飲んでも、私の心は晴れない。
『ちょっと、カリナ。いい飲みっぷりだけど、最初から飛ばしているとすぐ酔っちゃうよ。貴方、お酒弱いんだから』
ツイードスカートと白のシャツを上品に着こなしている赤茶色の髪の美女――ウルスラが、灰色がかったブルーの目をじっとりとこちらに向けながらイタリア語で声をかけてきた。
私は心配してくれている友人の視線を笑顔で躱してワインのボトルを持ち、先ほど飲み干したグラスにドバドバと注ぎながら同様にイタリア語で返事をする。
『大丈夫大丈夫。明日からバカンスなんだし、かたいこと言わないでよ』
明日から長期休みなんだし、万が一ふつか酔いで潰れても問題ないもの。
私は目の前に置かれた茄子とハムのはさみ揚げをつまみながら、『ウルスラも飲んでよ』と促した。
『カリナ、飲み方がおじさんみたい。何かあったの? 貴方、お酒は好きなほうだけど、いつもはこんな飲み方しないじゃない』
『……ううん。別に。明日から休みだから今日は飲みたい気分なだけだよ』
私はグラスを軋むくらい力一杯掴んでニッコリと微笑んだ。そしてグラスを持ち上げ、呷るようにワインを飲み干す。その姿を見たウルスラが嘆息した。
『そっか。話したくないなら別に構わないわ。言いたくなった時に教えて』
『……ありがとう』
私はウルスラの気遣いに目を潤ませながら、彼女にぎゅっと抱きついた。
本当は嫌なことがあった。大いにあったのだ。
――遡ること数日前。
父からかかってきた電話から、このモヤモヤが始まった。
私は現在、イタリアのヴェネツィアで一人暮らしをしている。高校卒業後にイタリアの大学に留学をして卒業後は大学院に進んだ。そしてそのままヴェネツィアにある香料メーカーの研究員として就職をした。
そう。私はこのままイタリアで一生を終える気が満々だったのだ。
「はぁ……っ」
また重苦しい溜息が漏れ出る。
会社を経営していて忙しいせいか父は家庭を一切かえりみない人だった。早くから母と別居をしていて不仲だし、そんな良好とはいえない生活の中で幼い私の面倒を見てくれたのは兄二人と――研究者である母方の伯父だった。
窮屈な実家が心底嫌で、ほとんどを伯父の研究室で過ごしたのをよく覚えている。だから、私は分野は違えど叔父と同じ研究者を志したいと思ったのだ。
私はお酒を飲みながら頭を押さえた。
父はそんな私を疎んだが、兄二人が説得してくれたおかげで、イタリア留学を許してもらえた。が、就職まで許したつもりではなかったのだろう。数日前、父は「婚約が成立したから仕事を辞めて帰ってきなさい」と電話をかけてきたのだ。
ぐっと唇を噛み締める。
またあの家に帰るの? あの冷たく暗い家に――
嫌だ。そんなの絶対に嫌。
そのうえ、会社のために政略結婚をしろだなんて……
消化しきれない思いが、胸の奥をモヤモヤさせる。
私は胸元を押さえながら、かぶりを振った。そしてスマートフォンを取り出し、父をブロックする。
こんなこといけないのは分かってはいるが、あの日から鬼のようにかかってくる電話は私の心を蝕む。気持ちが整理できるまで、悪いとは思うが父の電話には出たくないのだ。
私が苦虫を噛み潰した顔でスペインの生ハム――ハモンセラーノに手を伸ばすと、ウルスラが私の背中をさすってくれる。
優しい友人だ。
「はぁぁ~っ」
その時、隣から先ほどの私と同じような重苦しい溜息が聞こえてきた。視線を隣に向けると、サイドとバックをタイトに仕上げた――なんかスッキリとした髪型のかっこいい日本人男性がいた。上等なハイブランドのスーツが、どう考えてもこの場には似つかわしくなくて私は首を傾げた。
お金持ちそうなのに、こんな安い居酒屋でどうしたんだろう。何かあったのかしら?
……まあでもやけ酒するなら、こういう店のほうが気兼ねがないのかしら?
私はそう決め込んで、その彼の背中をさすって日本語で声をかけた。それを見たウルスラが私の名前を叫ぶ。
「大丈夫? 分かる分かるよ。人生楽しいことばかりじゃないわよね」
「え?」
ワインボトルを手に持ち直飲みしながら背中をさすってくる私を見て、その男性が大きく目を見開く。まさか声をかけられるなんて思っていなかったのだろう。
『やめてよ! カリナ、離れなさい! ご、ごめんなさいね。この子、酔っ払ってるんです』
『いえ。声をかけてもらえると思っていなかったので嬉しいです。そのうえ慰めてくれるなんて……』
私の腕をぐいぐい引っ張ってくるウルスラに、ニッコリと微笑む彼を指さして『この人嬉しいって言ってるよ』と笑う。
『そんなわけないでしょ! 気を遣ってくれてるのよ!』
『えー、大丈夫だよ。よし! 今夜は一緒に飲もう! 私、貴方の話を聞いてあげる!』
『ありがとうございます』
彼が差し出してきたグラスに、手に持っているボトルで乾杯する。そんな私たちを見て、ウルスラが頭をかかえた。
***
『へぇ。婚約者に逃げられたの?』
『逃げられたわけじゃなく、会える目処がつかないって言われたんです。……彼女は会社の利益が絡む結婚なんて嫌なのかもしれない』
『あら、嫌だ。最近、日本では政略結婚が流行っているの?』
時代錯誤だと思わないのかな?
彼はお酒を呷りながらグジュッと鼻を啜り、流暢なイタリア語で話す。やや涙目だ。
可哀想に。ふられたのねと思いながら、『よしよし、政略結婚は嫌がる人は嫌がるわよ。仕方ないわ』と彼の背中をポンポンと叩く。
『僕としては政略結婚のつもりなんてなかったんです。彼女は僕にとって初恋の人だから……、お会いできたらまずは僕を好きになってもらう努力をして恋愛結婚するつもりでした』
『え? 初恋の相手?』
『実は数年前に学会で研究発表をしている彼女に一目惚れをして、彼女を必死で探したんです……。せっかく見つけ出して、親御さんの会社の利益になるようにと政略結婚を画策したのに、まさか拒否をされるなんて……』
『いやだ、貴方。ストーカーっぽいところあるのね』
『ちょっと、カリナ。失礼だってば』
というか、確実にストーカーじゃないか。
ウルスラに口を塞がれながらケラケラと笑い飛ばした私に、彼はしゅんとした表情で『本当にそうだから、笑ってくれて構いませんよ』と自虐的に笑う。
『ねぇ、その「初恋の君」の名前は何て言うの?』
『彼女の名前はカリナ・アカツカサと言うんです。イタリアにいるって聞いて、居ても立っても居られなくて、今日ヴェネツィアに着いたんですが……。土地勘もない上に思いつきで来てしまったので手立てがなくて、ここでやけ酒をしていたんです。でも、まさかここで貴方と会えるなんて。来てよかった。僕は幸運です』
『わぁ、本当にストーカーだ』
『ちょっと、本当にやめて! 貴方、飲みすぎよ』
ウルスラに頭を叩かれながらヘラヘラと笑う。でも、はたと動きを止めた。
ん? カリナ・アカツカサ? ……赤司花梨奈?
そう心の中で反芻すると、一気に酔いが覚めてくる。
え? 嘘。それ私の名前じゃないのよ。いやいや、同姓同名だよ。きっと。ははは……
私は父の電話の内容を思い出して、酔いどころか血の気も引いた。
ということは、目の前の彼が探している初恋の相手は私……!?
『あれ? 急に固まってどうしました? さすがに飲みすぎましたか?』
『ううん、大丈夫。ごめん、私……酔ったから帰る!』
『えっ!?』
背中をさすってくれる彼の手を振り切り、私は驚く二人を残してバーカロから逃げ出した。
彼は間違いなく父が言っていた政略結婚の相手だ。
私のバカ! よりにもよって、何でそんな人に声かけるのよ!
私は自分を責めながら自分が住んでいるアパートに逃げ帰った。が、私はなぜか気づくと病院にいて、にこやかにその彼につき添われていた。
え? 何があったの……?
私は重く暗い溜息をつき、ワインを一気飲みして、カウンターにグラスを置いた。
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このバーカロは立ち飲み居酒屋ではあるが、お酒やおつまみが安くて美味しく、とても居心地がいい。大好きなのだが、今はそんなお気に入りの場所で飲んでも、私の心は晴れない。
『ちょっと、カリナ。いい飲みっぷりだけど、最初から飛ばしているとすぐ酔っちゃうよ。貴方、お酒弱いんだから』
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私は心配してくれている友人の視線を笑顔で躱してワインのボトルを持ち、先ほど飲み干したグラスにドバドバと注ぎながら同様にイタリア語で返事をする。
『大丈夫大丈夫。明日からバカンスなんだし、かたいこと言わないでよ』
明日から長期休みなんだし、万が一ふつか酔いで潰れても問題ないもの。
私は目の前に置かれた茄子とハムのはさみ揚げをつまみながら、『ウルスラも飲んでよ』と促した。
『カリナ、飲み方がおじさんみたい。何かあったの? 貴方、お酒は好きなほうだけど、いつもはこんな飲み方しないじゃない』
『……ううん。別に。明日から休みだから今日は飲みたい気分なだけだよ』
私はグラスを軋むくらい力一杯掴んでニッコリと微笑んだ。そしてグラスを持ち上げ、呷るようにワインを飲み干す。その姿を見たウルスラが嘆息した。
『そっか。話したくないなら別に構わないわ。言いたくなった時に教えて』
『……ありがとう』
私はウルスラの気遣いに目を潤ませながら、彼女にぎゅっと抱きついた。
本当は嫌なことがあった。大いにあったのだ。
――遡ること数日前。
父からかかってきた電話から、このモヤモヤが始まった。
私は現在、イタリアのヴェネツィアで一人暮らしをしている。高校卒業後にイタリアの大学に留学をして卒業後は大学院に進んだ。そしてそのままヴェネツィアにある香料メーカーの研究員として就職をした。
そう。私はこのままイタリアで一生を終える気が満々だったのだ。
「はぁ……っ」
また重苦しい溜息が漏れ出る。
会社を経営していて忙しいせいか父は家庭を一切かえりみない人だった。早くから母と別居をしていて不仲だし、そんな良好とはいえない生活の中で幼い私の面倒を見てくれたのは兄二人と――研究者である母方の伯父だった。
窮屈な実家が心底嫌で、ほとんどを伯父の研究室で過ごしたのをよく覚えている。だから、私は分野は違えど叔父と同じ研究者を志したいと思ったのだ。
私はお酒を飲みながら頭を押さえた。
父はそんな私を疎んだが、兄二人が説得してくれたおかげで、イタリア留学を許してもらえた。が、就職まで許したつもりではなかったのだろう。数日前、父は「婚約が成立したから仕事を辞めて帰ってきなさい」と電話をかけてきたのだ。
ぐっと唇を噛み締める。
またあの家に帰るの? あの冷たく暗い家に――
嫌だ。そんなの絶対に嫌。
そのうえ、会社のために政略結婚をしろだなんて……
消化しきれない思いが、胸の奥をモヤモヤさせる。
私は胸元を押さえながら、かぶりを振った。そしてスマートフォンを取り出し、父をブロックする。
こんなこといけないのは分かってはいるが、あの日から鬼のようにかかってくる電話は私の心を蝕む。気持ちが整理できるまで、悪いとは思うが父の電話には出たくないのだ。
私が苦虫を噛み潰した顔でスペインの生ハム――ハモンセラーノに手を伸ばすと、ウルスラが私の背中をさすってくれる。
優しい友人だ。
「はぁぁ~っ」
その時、隣から先ほどの私と同じような重苦しい溜息が聞こえてきた。視線を隣に向けると、サイドとバックをタイトに仕上げた――なんかスッキリとした髪型のかっこいい日本人男性がいた。上等なハイブランドのスーツが、どう考えてもこの場には似つかわしくなくて私は首を傾げた。
お金持ちそうなのに、こんな安い居酒屋でどうしたんだろう。何かあったのかしら?
……まあでもやけ酒するなら、こういう店のほうが気兼ねがないのかしら?
私はそう決め込んで、その彼の背中をさすって日本語で声をかけた。それを見たウルスラが私の名前を叫ぶ。
「大丈夫? 分かる分かるよ。人生楽しいことばかりじゃないわよね」
「え?」
ワインボトルを手に持ち直飲みしながら背中をさすってくる私を見て、その男性が大きく目を見開く。まさか声をかけられるなんて思っていなかったのだろう。
『やめてよ! カリナ、離れなさい! ご、ごめんなさいね。この子、酔っ払ってるんです』
『いえ。声をかけてもらえると思っていなかったので嬉しいです。そのうえ慰めてくれるなんて……』
私の腕をぐいぐい引っ張ってくるウルスラに、ニッコリと微笑む彼を指さして『この人嬉しいって言ってるよ』と笑う。
『そんなわけないでしょ! 気を遣ってくれてるのよ!』
『えー、大丈夫だよ。よし! 今夜は一緒に飲もう! 私、貴方の話を聞いてあげる!』
『ありがとうございます』
彼が差し出してきたグラスに、手に持っているボトルで乾杯する。そんな私たちを見て、ウルスラが頭をかかえた。
***
『へぇ。婚約者に逃げられたの?』
『逃げられたわけじゃなく、会える目処がつかないって言われたんです。……彼女は会社の利益が絡む結婚なんて嫌なのかもしれない』
『あら、嫌だ。最近、日本では政略結婚が流行っているの?』
時代錯誤だと思わないのかな?
彼はお酒を呷りながらグジュッと鼻を啜り、流暢なイタリア語で話す。やや涙目だ。
可哀想に。ふられたのねと思いながら、『よしよし、政略結婚は嫌がる人は嫌がるわよ。仕方ないわ』と彼の背中をポンポンと叩く。
『僕としては政略結婚のつもりなんてなかったんです。彼女は僕にとって初恋の人だから……、お会いできたらまずは僕を好きになってもらう努力をして恋愛結婚するつもりでした』
『え? 初恋の相手?』
『実は数年前に学会で研究発表をしている彼女に一目惚れをして、彼女を必死で探したんです……。せっかく見つけ出して、親御さんの会社の利益になるようにと政略結婚を画策したのに、まさか拒否をされるなんて……』
『いやだ、貴方。ストーカーっぽいところあるのね』
『ちょっと、カリナ。失礼だってば』
というか、確実にストーカーじゃないか。
ウルスラに口を塞がれながらケラケラと笑い飛ばした私に、彼はしゅんとした表情で『本当にそうだから、笑ってくれて構いませんよ』と自虐的に笑う。
『ねぇ、その「初恋の君」の名前は何て言うの?』
『彼女の名前はカリナ・アカツカサと言うんです。イタリアにいるって聞いて、居ても立っても居られなくて、今日ヴェネツィアに着いたんですが……。土地勘もない上に思いつきで来てしまったので手立てがなくて、ここでやけ酒をしていたんです。でも、まさかここで貴方と会えるなんて。来てよかった。僕は幸運です』
『わぁ、本当にストーカーだ』
『ちょっと、本当にやめて! 貴方、飲みすぎよ』
ウルスラに頭を叩かれながらヘラヘラと笑う。でも、はたと動きを止めた。
ん? カリナ・アカツカサ? ……赤司花梨奈?
そう心の中で反芻すると、一気に酔いが覚めてくる。
え? 嘘。それ私の名前じゃないのよ。いやいや、同姓同名だよ。きっと。ははは……
私は父の電話の内容を思い出して、酔いどころか血の気も引いた。
ということは、目の前の彼が探している初恋の相手は私……!?
『あれ? 急に固まってどうしました? さすがに飲みすぎましたか?』
『ううん、大丈夫。ごめん、私……酔ったから帰る!』
『えっ!?』
背中をさすってくれる彼の手を振り切り、私は驚く二人を残してバーカロから逃げ出した。
彼は間違いなく父が言っていた政略結婚の相手だ。
私のバカ! よりにもよって、何でそんな人に声かけるのよ!
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