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日本
シモーネからの電話
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カーテンから差し込んでくる光が眩しくて、私は目を開けた。
もう……朝?
手探りで隣を確認してみても彼はいない。寝坊しちゃったのかなと思い、スマートフォンに手を伸ばし、時間を確認すると十四時過ぎだった。
え? 十四時過ぎて……
「寝すぎちゃっ、っ! いったぁ」
遅すぎる時間に驚いてガバッとベッドから起き上がると、突然腰に痛みが走り、前かがみで腰を押さえた。
うう……腰痛い。
それに腰だけじゃなく全身がバキバキな気がする……
昨夜のトモとの行為を思い出して、嘆息した。
昨夜は諸々のことが落ち着いてきたので、トモに「慰めて」とせがんだのだ。だが、ここまで手加減なしに抱いてくれとは言っていない。
「うう、トモのバカ」
私はベッドの上で腰をさすりながら、どでかい溜息をついた。
まあ、気持ちよかったし、彼に抱かれるのは幸せだからいいんだけど……。如何せん翌日の体が辛い、辛すぎる。それに起きられなくて寝坊しちゃうのも困る。なんとかならないかしら……
「私に体力がないせい? それともトモにありすぎるせい?」
私は独り言ちながら、室内を見回してトモを探した。でもベッドの上から見渡せる範囲には彼の姿は見えない。
リビングで仕事をしているのか、それともシャワーを浴びているのか、どっちだろうと考えながらベッドに倒れ込む。
いつも私が起きたことに気がついたらベッドまで来てくれるから、シャワーかしらね……
「あれ?」
倒れ込んだ時にナイトテーブルにメモが置いてあることに気がついた。それに手を伸ばし取ると、そこには『昨日、花梨奈さんのお祖父様から出た許可の件で役所に行ってきます。起きたら食事でもして待っていてください。絶対に出歩かないように!』と書かれていた。
許可の件……?
「あ、そういえば……」
昨日、テストは合格だから結婚を許してやると渋々言っていたわね……
それを聞いたトモが日本にいるうちに入籍だけしたいと言っていた気もするから、その諸々の手続きのために行ったのねと寝転びながら得心いった。
まあ私としては、手を繋いで婚姻届を出しに行っても構わなかったんだけど、如何せん今日の私は出歩ける状態じゃない。その上、ああいう長い時間がかかるような場や手続きは無理だとも思うから、大人しく任せたい。それに私がいても役に立たないと思う。何をしたらいいかよく分からないし……
面倒な手続きを率先してやってくれるだなんて本当に頼り甲斐があるわねと、ふふふと笑い私は寝転びながら腕を上げて伸びをした。
「ふぁ、眠い……トモが帰ってくるまで二度寝しようかしら……」
私は伸びをしたあと、また布団にくるまり催してくる眠気に従って、そのまま目を閉じた。が、スマートフォンから着信音が鳴り、むむっと眉間に皺を寄せる。
トモかな……?
そう思いながら、スマートフォンの画面を見るとシモーネだった。
「え? シモーネ!」
その名前に目を見張り、腰に響かないように体をゆっくりと起こして通話ボタンを押した。
「もしもし……」
「あ、カリナ。久しぶりだね。元気だった?」
いつもと変わらないシモーネの声。その陽気なイタリア語がなんだか嬉しくてたまらなかった。
声を聞くと、ちょっと会いたくなるから困るわね。イタリアは今頃朝の七時くらいかしら? あ、もうイギリスかな?
シモーネから電話をくれたことが嬉しくて、さっきまでの眠気が吹き飛んだ。
「元気よ。シモーネは元気だった? もうイギリスにいるの? 引っ越しとか手続きとか色々大変でしょう?」
「ボクも元気だよ。手続き類はトモヒトが大体やってくれたから、そんなに大変じゃなかったよ」
「あら、そうなの?」
やっぱりトモってすごい。数手先を読んで気を回してくれるし、彼に任せていれば大丈夫なんだなと安心できる。
ストーカーなところがなければ完璧ね。
「うん、だからもうロンドンには行けるんだけど、まだフィレンツェにいるんだ。引っ越し前に友人に会ったりしておきたいからね。あ、でも、一度下見でロンドンにあるトモヒトの自宅を見に行ったんだけど、めちゃくちゃ大きかったよ。大豪邸って感じだった」
「へぇ。そんなに広いの?」
そういえば、トモは自宅の敷地内に研究室を作ってもいいと言っていた。ということは、とても広い敷地を擁しているということになるわよね?
私の言葉にシモーネが興奮気味に肯定した。
「めちゃくちゃ広いし大きいよ。貴族のお屋敷みたいで、ボク驚いちゃった。住み込みで働いている人たちが住む離れもあったんだけど、そこもめちゃくちゃ広くて大きくて快適そうだったよ。郊外って言っても、あんな大豪邸なかなかないよね」
「え? そんなに……」
貴族のお屋敷はさすがに言い過ぎなんじゃないかしら。でも、そんなに興奮気味に言われると、めちゃくちゃ気になるわね。
広くて大きいなら、色々見て回るのも楽しそう……
「うん、とにかくすごかったよ。トモヒトがお金持ちなのは知っていたけど、桁外れのお金持ちだったんだね。カリナ、いい人見つけたね。ストーカーだけど」
「ストーカーだけど、その欠点を覆えるほど素敵だから別にいいの」
シモーネの揶揄いを笑って受け流す。
「ねぇ、カリナ。そういえばパパの問題は片づいた? ボクももうすぐロンドンに引っ越すから、カリナたちも早く片づけてこっちにおいでよ」
「ええ、大体片づいたからもうすぐよ。あとはお母様のお見舞いに行ったら、そちらに向かうと思うわ」
「よかった! 会えるのを楽しみにしてるね!」
「うん、私も」
私たちは近況を話しつつ、ロンドンに行ったら色々なところを見てまわろうねと話して電話を切った。
もう……朝?
手探りで隣を確認してみても彼はいない。寝坊しちゃったのかなと思い、スマートフォンに手を伸ばし、時間を確認すると十四時過ぎだった。
え? 十四時過ぎて……
「寝すぎちゃっ、っ! いったぁ」
遅すぎる時間に驚いてガバッとベッドから起き上がると、突然腰に痛みが走り、前かがみで腰を押さえた。
うう……腰痛い。
それに腰だけじゃなく全身がバキバキな気がする……
昨夜のトモとの行為を思い出して、嘆息した。
昨夜は諸々のことが落ち着いてきたので、トモに「慰めて」とせがんだのだ。だが、ここまで手加減なしに抱いてくれとは言っていない。
「うう、トモのバカ」
私はベッドの上で腰をさすりながら、どでかい溜息をついた。
まあ、気持ちよかったし、彼に抱かれるのは幸せだからいいんだけど……。如何せん翌日の体が辛い、辛すぎる。それに起きられなくて寝坊しちゃうのも困る。なんとかならないかしら……
「私に体力がないせい? それともトモにありすぎるせい?」
私は独り言ちながら、室内を見回してトモを探した。でもベッドの上から見渡せる範囲には彼の姿は見えない。
リビングで仕事をしているのか、それともシャワーを浴びているのか、どっちだろうと考えながらベッドに倒れ込む。
いつも私が起きたことに気がついたらベッドまで来てくれるから、シャワーかしらね……
「あれ?」
倒れ込んだ時にナイトテーブルにメモが置いてあることに気がついた。それに手を伸ばし取ると、そこには『昨日、花梨奈さんのお祖父様から出た許可の件で役所に行ってきます。起きたら食事でもして待っていてください。絶対に出歩かないように!』と書かれていた。
許可の件……?
「あ、そういえば……」
昨日、テストは合格だから結婚を許してやると渋々言っていたわね……
それを聞いたトモが日本にいるうちに入籍だけしたいと言っていた気もするから、その諸々の手続きのために行ったのねと寝転びながら得心いった。
まあ私としては、手を繋いで婚姻届を出しに行っても構わなかったんだけど、如何せん今日の私は出歩ける状態じゃない。その上、ああいう長い時間がかかるような場や手続きは無理だとも思うから、大人しく任せたい。それに私がいても役に立たないと思う。何をしたらいいかよく分からないし……
面倒な手続きを率先してやってくれるだなんて本当に頼り甲斐があるわねと、ふふふと笑い私は寝転びながら腕を上げて伸びをした。
「ふぁ、眠い……トモが帰ってくるまで二度寝しようかしら……」
私は伸びをしたあと、また布団にくるまり催してくる眠気に従って、そのまま目を閉じた。が、スマートフォンから着信音が鳴り、むむっと眉間に皺を寄せる。
トモかな……?
そう思いながら、スマートフォンの画面を見るとシモーネだった。
「え? シモーネ!」
その名前に目を見張り、腰に響かないように体をゆっくりと起こして通話ボタンを押した。
「もしもし……」
「あ、カリナ。久しぶりだね。元気だった?」
いつもと変わらないシモーネの声。その陽気なイタリア語がなんだか嬉しくてたまらなかった。
声を聞くと、ちょっと会いたくなるから困るわね。イタリアは今頃朝の七時くらいかしら? あ、もうイギリスかな?
シモーネから電話をくれたことが嬉しくて、さっきまでの眠気が吹き飛んだ。
「元気よ。シモーネは元気だった? もうイギリスにいるの? 引っ越しとか手続きとか色々大変でしょう?」
「ボクも元気だよ。手続き類はトモヒトが大体やってくれたから、そんなに大変じゃなかったよ」
「あら、そうなの?」
やっぱりトモってすごい。数手先を読んで気を回してくれるし、彼に任せていれば大丈夫なんだなと安心できる。
ストーカーなところがなければ完璧ね。
「うん、だからもうロンドンには行けるんだけど、まだフィレンツェにいるんだ。引っ越し前に友人に会ったりしておきたいからね。あ、でも、一度下見でロンドンにあるトモヒトの自宅を見に行ったんだけど、めちゃくちゃ大きかったよ。大豪邸って感じだった」
「へぇ。そんなに広いの?」
そういえば、トモは自宅の敷地内に研究室を作ってもいいと言っていた。ということは、とても広い敷地を擁しているということになるわよね?
私の言葉にシモーネが興奮気味に肯定した。
「めちゃくちゃ広いし大きいよ。貴族のお屋敷みたいで、ボク驚いちゃった。住み込みで働いている人たちが住む離れもあったんだけど、そこもめちゃくちゃ広くて大きくて快適そうだったよ。郊外って言っても、あんな大豪邸なかなかないよね」
「え? そんなに……」
貴族のお屋敷はさすがに言い過ぎなんじゃないかしら。でも、そんなに興奮気味に言われると、めちゃくちゃ気になるわね。
広くて大きいなら、色々見て回るのも楽しそう……
「うん、とにかくすごかったよ。トモヒトがお金持ちなのは知っていたけど、桁外れのお金持ちだったんだね。カリナ、いい人見つけたね。ストーカーだけど」
「ストーカーだけど、その欠点を覆えるほど素敵だから別にいいの」
シモーネの揶揄いを笑って受け流す。
「ねぇ、カリナ。そういえばパパの問題は片づいた? ボクももうすぐロンドンに引っ越すから、カリナたちも早く片づけてこっちにおいでよ」
「ええ、大体片づいたからもうすぐよ。あとはお母様のお見舞いに行ったら、そちらに向かうと思うわ」
「よかった! 会えるのを楽しみにしてるね!」
「うん、私も」
私たちは近況を話しつつ、ロンドンに行ったら色々なところを見てまわろうねと話して電話を切った。
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