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模擬戦
「……っ!」
ルドヴィカが息を呑んで飛び退いたのと同時に、セレーナが剣を持つルドヴィカの手首を自らの柄で強かに打ちつけた。
その衝撃で思わず剣を落としてしまうと、セレーナがルドヴィカに剣の切っ先を向ける。
「まいりました」
両手を上げてそう言うと、セレーナが柔らかく微笑んで剣を下ろす。それを見ていた騎士団の皆やヴィヴィエンヌが拍手をくれた。
(やはり鈍っているな。魔法なしだとこの程度か。我が身ながら情けない……)
自分の手を見つめながら嘆息し、セレーナへ微笑みかけ握手を求める。
「セレーナは強いですね。とても有意義な時間が過ごせました。ありがとうございます」
「ルドヴィカ様もとてもお強いですよ。まさか剣の才覚があったなんて驚きました」
彼女の言葉に苦笑いする。
魔法なしでも充分戦えた過去を思うと、その評価は素直には喜べなかった。心の中で今以上に研鑽を積もうと決める。
「まだまだです。今この国で一番強いのはルキウスなのでしょう? 彼とやり合えるくらいにはなりたいので、もっと頑張らないと……」
「陛下と?」
「無理ですよ、ルドヴィカ様。たとえ模擬戦であっても陛下がルドヴィカ様に剣を向けるなんてことはありえません」
「え? なぜですか?」
ないないと手を振る二人に目を瞬かせると、彼女たちが肩を竦めて笑った。
(訓練の一環であっても弱い者とやるのは時間の無駄だということだろうか……。それなら、認められるまで頑張るまでだ)
――ルキウスは約束どおり、ルドヴィカを自由にさせてくれている。騎士団の訓練に参加したいと言えば、すぐに手配をしてくれ訓練用の服も用意してくれた。そのおかげか協力的な気持ちになれて、ルドヴィカも時間を見つけては自発的に皇后としての教育を受けている。
(最初記憶が戻った時は逃げたいと思ったが、今はここが心地良くなっているから、ルキウスには感謝だな)
前世――最後にここを出た時はマルクスとルチアの子供たちと上手くいかず仲違いをしていた。醜い権力争いにも辟易していたので、この場所によい思い出はあまりなかったのだが、それが徐々に塗り替えられていくのを感じる。
陰謀や裏切り、権力争い。それらはきっと今でもあるのだろうが、ルキウスはそれをルドヴィカには絶対に見せない。そのおかげか今世ではのびのびと過ごせている。
(結婚するまで嫌だと言ってからは襲ってこなくなったし、愉快適悦だ)
ルドヴィカは小さく笑い、ヴィヴィエンヌと向き合った。
「では、次はヴィヴィ。手合わせを願えますか?」
「それは構いませんけど、まずは休憩をしませんか? 疲れていては最大限の力は発揮できませんよ」
「え? そうですか?」
そう言って笑う彼女の言うことももっともだと思い、騎士団の皆と休憩を取ることにした。最初出入りした頃は戸惑っていた彼らだが、今では打ち解けている。
「そういえば婚儀はいつ頃の予定なのですか?」
「半年後よ。でも、その前に婚約披露のパーティーを先に行うらしいので、女官たちはてんてこ舞いだわ」
「と言うことは、実質それがルドヴィカ様のデビュタントですね」
(……そういえば、その場で魔力を示してほしいと、ルキウスが言っていたな)
皆の話を聞きながら、ぼんやりとルキウスとの話を思い出す。
建国の魔女と瓜二つの容姿に、魔法を扱える能力。前世の自分と魔力が神聖視されているこの国において、それは大きな意味を持つはずだ。すべてを圧する力を示して今の地位を得たルキウスでも、やはり不安定なのだろう。きっとこれでルキウスの地位は盤石になるはずだ。
(何よりこの婚約で公爵家の後見も得られる。よいこと尽くめだな)
政治は嫌いだが、彼の置かれている状況くらいは理解できる。
ルドヴィカは気ままな生活を送らせてもらっている礼に、彼のためにいくらでも力を奮おうと思った。
ルドヴィカが息を呑んで飛び退いたのと同時に、セレーナが剣を持つルドヴィカの手首を自らの柄で強かに打ちつけた。
その衝撃で思わず剣を落としてしまうと、セレーナがルドヴィカに剣の切っ先を向ける。
「まいりました」
両手を上げてそう言うと、セレーナが柔らかく微笑んで剣を下ろす。それを見ていた騎士団の皆やヴィヴィエンヌが拍手をくれた。
(やはり鈍っているな。魔法なしだとこの程度か。我が身ながら情けない……)
自分の手を見つめながら嘆息し、セレーナへ微笑みかけ握手を求める。
「セレーナは強いですね。とても有意義な時間が過ごせました。ありがとうございます」
「ルドヴィカ様もとてもお強いですよ。まさか剣の才覚があったなんて驚きました」
彼女の言葉に苦笑いする。
魔法なしでも充分戦えた過去を思うと、その評価は素直には喜べなかった。心の中で今以上に研鑽を積もうと決める。
「まだまだです。今この国で一番強いのはルキウスなのでしょう? 彼とやり合えるくらいにはなりたいので、もっと頑張らないと……」
「陛下と?」
「無理ですよ、ルドヴィカ様。たとえ模擬戦であっても陛下がルドヴィカ様に剣を向けるなんてことはありえません」
「え? なぜですか?」
ないないと手を振る二人に目を瞬かせると、彼女たちが肩を竦めて笑った。
(訓練の一環であっても弱い者とやるのは時間の無駄だということだろうか……。それなら、認められるまで頑張るまでだ)
――ルキウスは約束どおり、ルドヴィカを自由にさせてくれている。騎士団の訓練に参加したいと言えば、すぐに手配をしてくれ訓練用の服も用意してくれた。そのおかげか協力的な気持ちになれて、ルドヴィカも時間を見つけては自発的に皇后としての教育を受けている。
(最初記憶が戻った時は逃げたいと思ったが、今はここが心地良くなっているから、ルキウスには感謝だな)
前世――最後にここを出た時はマルクスとルチアの子供たちと上手くいかず仲違いをしていた。醜い権力争いにも辟易していたので、この場所によい思い出はあまりなかったのだが、それが徐々に塗り替えられていくのを感じる。
陰謀や裏切り、権力争い。それらはきっと今でもあるのだろうが、ルキウスはそれをルドヴィカには絶対に見せない。そのおかげか今世ではのびのびと過ごせている。
(結婚するまで嫌だと言ってからは襲ってこなくなったし、愉快適悦だ)
ルドヴィカは小さく笑い、ヴィヴィエンヌと向き合った。
「では、次はヴィヴィ。手合わせを願えますか?」
「それは構いませんけど、まずは休憩をしませんか? 疲れていては最大限の力は発揮できませんよ」
「え? そうですか?」
そう言って笑う彼女の言うことももっともだと思い、騎士団の皆と休憩を取ることにした。最初出入りした頃は戸惑っていた彼らだが、今では打ち解けている。
「そういえば婚儀はいつ頃の予定なのですか?」
「半年後よ。でも、その前に婚約披露のパーティーを先に行うらしいので、女官たちはてんてこ舞いだわ」
「と言うことは、実質それがルドヴィカ様のデビュタントですね」
(……そういえば、その場で魔力を示してほしいと、ルキウスが言っていたな)
皆の話を聞きながら、ぼんやりとルキウスとの話を思い出す。
建国の魔女と瓜二つの容姿に、魔法を扱える能力。前世の自分と魔力が神聖視されているこの国において、それは大きな意味を持つはずだ。すべてを圧する力を示して今の地位を得たルキウスでも、やはり不安定なのだろう。きっとこれでルキウスの地位は盤石になるはずだ。
(何よりこの婚約で公爵家の後見も得られる。よいこと尽くめだな)
政治は嫌いだが、彼の置かれている状況くらいは理解できる。
ルドヴィカは気ままな生活を送らせてもらっている礼に、彼のためにいくらでも力を奮おうと思った。
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