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14、ガレットを陥れる僕②
しおりを挟む「ガレット、これは一体どういう事なのかな?」
シュクル殿下に問い詰められて泣きそうなガレットは、僕を睨みつけていた。
「殿下に毒を入れたのは私ではありませんわ! だって私の他に毒を入れる機会があったのはリノー様も同じではないですか!?」
「何を言ってるんだ、リノーは毒が入ってるのを教えてくれたんだぞ、俺を殺すために毒を入れたとしたらわざわざ俺に教える訳がないだろう?」
「そ、それは……ですが、私は殿下の紅茶に毒なんて入れてないのですわ、信じてくださいませ!!」
実際にガレットは毒を入れてないのだから、そう主張するのは当たり前だろう。
だけど、僕からしたらガレットはショコラ様に毒を入れた本人なのだ。その罪はしっかり償って貰わなくてはならない。
「でも先程のガレット様は、シュクル殿下の紅茶を早く入れようと焦ってるように見えましたよ? 本当は入れるタイミングを、伺っていたのではないですか?」
「それは、本当かガレット?」
「確かに、殿下の紅茶を入れて差しあげたかったのは事実ですわ。でも私は毒なんて……いえ、きっとこのティーポットの紅茶が元から毒だったのですわ!」
あくまでも自分は犯人ではないと主張するガレットに、そういえば僕が先程落とした毒のカプセルがガレットの足元に落ちている事を思い出していた。
「それはありえませんよ、だってそのティーポットで私もシュクル殿下に紅茶を入れたのですよ? そのとき、殿下の体に異常はありませんでしたからね」
「確かにリノーの言う通りだ、そのとき俺は何も体に異常は見られなかった。それならば、君以外誰が毒を入れる事が出来たのかな?」
「そ、それでも私ではありませんわ!? どうして私が殿下に毒を入れる必要が……?」
確かにその通りだよね、だけどガレットは僕のせいで以前王子と喧嘩をしたと言う事になっているはずだから、それを利用させてもらう事にしよう。
「もしかして、ガレット様……以前殿下と喧嘩をされたときの事を引きずっていらっしゃるのではないですか?」
「あ、あれは喧嘩なんてしていませんわ!」
「でもガレット様の足下……何かカプセルが落ちていませんか? 私ずっと気になっていたのですけど……」
そう言うと、ガレットはガタッと椅子から立ち上がり地面を見た。
そこには、僕が落とした毒の入ったカプセルがコロリと転がっていた。
それを見た令嬢たちは、ざわざわと騒ぎ出す。その事がガレットを更に追い詰めていく。
「し、知りませんわ!? こんなカプセル!」
シュクル殿下は、そのカプセルを手に掴むとじっくりと観察していた。
「俺はこれを見た事がある。これはよく暗殺で使われる毒の入ったカプセルだ」
「で、でもこれは使われていませんわ! それに私は殿下に毒を入れてませんし、どうして使用されてない分まで私が持っていないといけませんの!? ただここに転がっていただけで、これの本当の持ち主が犯人にきまってますわ!」
喚けば喚くほど、言い訳に聞こえてしまい周りからの視線は冷たくなっていく。
そしてそろそろ仕上げだと、僕はシュクル殿下と見つめ合いながらガレットに言う。
「もしかして……ガレット様、殿下とともに心中しようとしたんじゃありませんか?」
【見つめ合い5秒経過により、魅了の効果がさらに5倍増加しました】
ナイス、ウィンドウさん! このまま糞王子にガレットを捕らえさせるよ。
「な、なにを言ってますの!?」
「成る程、俺の一番がリノーだと言った事に耐えられなかったというわけだな」
よく見ると王子の瞳に浮かぶハートマークがさらに濃くなっていた。
これで殿下にはガレットの言葉は届かないだろう。
「待ってください、殿下! 確かに一番ではない事に腹を立てましたわ、でも今は違いますわ!」
「君の言うことは信用できないな」
「何故私の話を聞いてくださらないのですか!」
「ガレット、君は王太子である俺を毒殺しようとした罪で捕らえさせてもらう!」
そう言うと殿下の騎士がガレットを捕らえようと動きだした。
しかし顔が真っ青なガレットはプルプルと震えはじめると、突然周りに魔法を展開したのだ。
「どうして私がこんな目にあわなくてはならないのですの!? 何で!」
「が、ガレット魔法を止めろ!」
「うるさいですわ!! アイスニードル!」
そう言うと、集まって来た騎士たちにガレットは氷のトゲを投げつけた。
そして怯んだ騎士を見て、庭園へと走り出したのだ。
「やつを逃すな、追え!」
「殿下、私が捕まえてきます」
「リノー、君は強いが無理はしないでくれよ?」
「はい」
答えるのと同時に私は走り出す。
ウィンドウさんさんが、スピードバフと現在の魔法効果は37倍だと教えてくれていた。
まさか逃げ出すとは思っていなかったけど、ガレットを追い詰められるなら本望だ。
なにより有難い事にこの庭園は迷路のようになっている。そのせいか、ガレットはまだ庭園から抜け出せていないようだ。
えっと、一体ガレットはどっちへ向かった?
【星型のイヤリングの効果追跡が発動、追跡者の位置を表示します】
ウィンドウさんがこの庭園マップと、ガレットの位置を教えてくれる。
僕はそのマップを辿り、ガレットのもとへ追いついていた。
どうやら騎士は誰も追いつけてないようだね。
「ガレット様、追いつきましたよ?」
「な、何故……何故なの!?」
スピードUPしている僕は、彼女を追い抜きその前に立ちはだかっていた。
そのせいでガレットは立ち止まるしか出来ず、混乱しながら叫ぶ。
「いつも私の邪魔ばかりして、貴女が現れてから何もかもが全て上手くいきませんわ!!」
「だって、邪魔をしているんだから当たり前だよ」
僕は、僕のままガレットに向き合っていた。
「なっ!?」
「だから大人しく捕まってくれないと困るんだよ」
「な、何ですの……近寄らないで下さいまし!!」
「魔法を打っても無駄だよ? またカウンター発動しちゃうからね」
「くっ……」
悔しそうに唇を噛むガレットに、僕は魔法を放った。僕が使える属性は闇だ。
「ダークボックス、ガレットを包み込め」
「なっ!?」
暗闇がガレットを支配していく。
魔法効果37倍によって、それはただの闇では無くなってしまったようだ。
「真っ暗で何もみえないですわ! 音も聞こえない……一体どうなっているの。誰か、誰か私をここからだして下さいませ!」
ダークボックス内から叫ぶガレットの声は必死だった。
音も聞こえず、目も見えない。
そんな空間に居続けたらすぐに精神はおかしくなってしまうだろう。
そしてガレットは、ついに声を発する事もやめてしまった。
それを確認して、僕は魔法を解除する。
「精神が壊れてないといいけどね……?」
そこに現れたガレットは、凍っていた。
どうやらダークボックス内で魔法を使い、カウンターをくらったようだ。
「あとは、ガレットを騎士に引き渡せばいいね」
そう呟く僕の後ろから、誰かが駆け寄ってくる足音がして振り返る。
「フラム、無事か!?」
「あ、ショコラ様。今丁度終わったところです」
「ならばよかった、正直ずっと貴方が心配で気が気ではなかったから……」
そんなにも心配をかけてしまったのかと、僕はショコラ様の手を握る。
「心配をかけてすみません。でも僕たちはまだやらないといけない事がありますから、もう少し心配をかけますよ?」
「……そうか。次は兄上だな」
「ええ、もう僕が婚約者のフリをする必要はありませんから、正々堂々と不正を告発しましょう!」
「そのための場をどうやって作るかが問題だが、とりあえず今はガレットを兄上に引き渡してしまおう」
そう言って僕たちは、シュクル殿下のもとへガレットを連れ戻ったのだ。
その後、ガレットの極刑はすぐに決まったのだった。
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