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33、それからの僕ら(終)
しおりを挟む僕が国を潰してからもう半年が経っていた。
国が突然変わった事により、王都はかなりパニックに陥っていた。
何より王宮周りの貴族街を、『おとこの娘区画』として利用する事となったため、『おとこの娘』とはなんぞやと、住人たちを動揺させたのだ。
しかしその軍団が最強の守護者だと認知されると、それに憧れる子どもが増えはじめ現在では既に『おとこの娘』を、目指す若者までいるそうだ。
官僚になるのもおとこの娘以外は認められないから、尚更そういう傾向が現れ初めているのかもしれない。
僕からしたらこの国の『おとこの娘』って一体何なの。と、言いたくなってしまうところだけどね。
それから『おとこの娘軍団』だけど、僕の魅了が解けた後も意外な事に殆どの人がその姿を受け入れて、何故か楽しそうにオシャレを楽しみ始めたのだ。
もしかしたらそういう願望が少しでもある人たちなら、誰でも『おとこの娘』になれるのかもしれない。
そして現在は『おとこの娘の国計画』も着々と進行中で、先月ようやくクリーム王国との協議も終えたところだった。
結果として、僕たちは王都周辺以外の殆どの土地をクリーム王国に渡してしまった。
それはショコラ様がクリーム王国と約束していたのもあるけど、僕はこの新しい国を治めるつもりが無かったからというのもある。
だから国王を辞退した僕は、何もかも全てクロテッド様に譲ってしまったのだ。
そんな訳でクロテッド様には、国の全権と『おとこの娘コレクションリーダー』という権限を与えて、どちらの統治も全部丸投げしていた。
クロテッド様は泣いて喜んでくれたけど、僕には少しの罪悪感が残ったのだった。
でもクロテッド様はもとからクリーム王国の次期国王になる為、多くを学んできた人なのだ。だからこの国の王として、誰よりも向いていると僕は思う。
しかしこれでは、クリーム王国の第一王子を僕たちが奪ってしまった事になるのだけど、どうやらクリーム王国にはまだ他にも後継者がいたようで、クロテッド様がこの国の王となる事を誰も反対しなかったらしい。
そんな訳でこの国は殆どクリーム王国の物となっていた。
だけど僕たちの新しい国にも名前はある。
その名も『オトコノコ国』だ。
名前の通り、いずれ沢山のおとこの娘で溢れかえるそんな国になってくれたらいいと思う。
それと、この国の住人となった両親の話も少ししておきたいと思う。
以前、僕たちを勘当した筈の父上はこの国が『オトコノコ国』となると、何事も無かったかのようにおとこの娘になる方法を僕に確認してきたのだ。
そして気がつけば父上は、何故か女装に目覚めていた。
多分僕と同じ血を引いてるだけあって、年齢の割に何故か似合っていたのだ。その事に僕の将来を見た気がして、微妙な気分になってしまった。
しかも母上は父上のその姿を見て喜んでいた為、二人が幸せそうだからいいかと僕は考えるのをやめたのだった。
実はこんな感じで僕の父親以外にも、数人の貴族が女装に目覚めて官僚に舞い戻っていたのだ。
しかし大半の貴族は、そんなのはありえないと国から去っていった。だけどそれが普通の反応だと思うから仕方がない。
それでも残った人たちがとても有能な人物ばかりだった為、糞な貴族だらけの時よりも国を回すのが楽になったそうで、この国は順調に動き初めたのだった。
それから最後に幽閉されていた糞王子の話をしよう。
糞王子は国が変わった後も僕の判断でそのまま幽閉されていた。だけどいつのまにか元国王陛下まで一緒に暮らし始めてしまい僕は頭を抱えたのだ。
このままでは僕の復讐は終われない。
そう思った僕は、糞王子を女装させたまま労働環境が悪いと噂の開拓地へ島流しをする事に決めた。
もう処刑をしてもよかったのだけど、どうしても糞王子にはもがき苦しむような人生を生きて欲しかった。
だからどうか苦しんで苦しんだ果てに僕を恨んで死んで欲しいと、僕は願ったのだった。
そして国王を辞退した僕と言えば……。
現在は冒険者になり、次の町に向けて移動している最中だった。
歩きながら今までの事を色々思い出していた僕は、後から駆け寄って来る足音に気がついて振り返える。
「お兄様、お待ちください。また道が間違っております」
「……え、本当? 確かに考え事はしていたけど、もしかして僕って方向音痴だったりするのかな?」
「ふふ、フラムはおっちょこちょいだね」
「もうショコラ様、笑わないでくださいよ」
今、僕の横にはリノーとショコラ様がいた。
そんな僕らは冒険者パーティーとして、この三人で最低ランクからゆっくりと駆け上がっている最中だ。
正直どんな依頼も僕が無双してしまう為、二人の出番がほぼ無くていつも申し訳ないと思っていた。
「フラム、いい加減その敬語と様をつけるのはやめてもらえないかな?」
「すみません、もう王女様では無いとわかっているのですけど、何となく様付けで呼んじゃって……」
「仕方がないな、もし次にその名を呼んだらフラムの唇を奪ってしまおうかな?」
「え、いや……それは困るので、ショコラ! ほら、これで良いでしょショコラ!!」
やけくそ気味に言う僕に少し残念そうにしながらも、ショコラは嬉しそうに笑った。
そんな僕らを見てリノーがポツリと言った。
「お兄様、いい加減ショコラ様と付き合えばいいのに……」
「いや、その……」
実のところ僕は戦争が終わった後、忙しい毎日を過ごしていたせいでショコラにすぐ返事を返せていなかった。
そして気がつけば、ずるずると今日まで来てしまった訳で……僕は改めてショコラを見る。
今のショコラは男装のままだった。
でも美人でかっこいいのに可愛くて、僕のタイプなのは間違いない。
「リノー、あまりフラムを困らせてはいけないよ」
「ショコラ様……」
「フラム、私は君の気持ちがちゃんと決まるその時まで、ずっと待ち続けるつもりだよ。そのかわり私のアプローチから逃げないで欲しい……」
そう言ってショコラは僕の頬にキスをした。
「なっ!?」
「ふふっ、フラムの顔真っ赤だよ?」
「むむ……」
これはショコラのせいなのに、そう口に出したら僕が好きだと言ってるように思われても困る。
本当はそうなのかもしれないけど、僕はその気持ちをもう少しはっきりさせてから、ショコラに告白の返事をしたいと思っていたのだ。
そしていつか絶対に、ショコラを可愛いって褒めちぎってその顔を真っ赤にして見せる!!
そう思い、僕はショコラとリノーの手を取って改めて歩き出したのだ。
こうして、僕の復讐劇は完全に幕を下ろした。
そんな僕たちの後方には、かなり遠いけどハートがついたお城が薄っすらと見えていた。
あのハートはまさしく聖剣様だった。
聖剣様は現在もお城に刺さったまま国を護って下さってる。
そんなすっかり可愛くなってしまったお城のシンボルを背に、僕たちは新しい一歩を踏み出したのだった。
ーー 完 ーー
ー △ ー ▲ ー △ ー
最後までお読み頂きありがとうございました!
ここまで書き切る事が出来たのは読んでくださった皆様のおかげです。
ここで謝罪しますが、最後の方は忙しくて書き上げるのに時間がかかって申し訳ありませんでした!!
ギャグっぽく書いていましたが、最後の方はまさか『おとこの娘軍団』が現れてこんな事になるとは思ってなくてホラーかよ。と思っていました!
これで完全に完結ですがオマケで少し書くかもしれないし、書かないかもしれません。
私の感想は近況報告で少し書く予定です。
それではまたお会いできる日まで!
長々と長文失礼いたしました。
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