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第二章 開業準備をする俺
37、新聞記事
しおりを挟む次の日、俺たちは早速資材を集める為に手分けしてダンジョンを散策していた。
セシノを一人にする訳にはいかないので、もちろん俺と一緒に行動している。
「館の部屋が30部屋……ってどう考えても多すぎだよな」
「は、はい。でもダンジョン用と考えたら妥当じゃ無いですか? 本当ならあそこにモンスターと、ボスを配置するんですよね?」
「多分そうなんだろうけどさー、暫くはそんなにお客さんなんか来る訳ないし、とにかく設備整えるのは二階まででいいよな」
「そうですね、客室は二階だけ使えばそれで十分だと思います」
それならと、俺はダンジョンリフォームに表示されているアイテム数を確認してフォグたちにお願いした個数を思い出す。
二階までなら、こっちはこのぐらいでいいか。
「よし、一旦家に戻るか……もしかするとそろそろマリーが帰ってきてるかもしれないからな」
「確かに、そうですね」
そう思って俺たちは急いで新しい俺の家である、無駄に大きい洋館へと辿り着いたのだった。
「正直、この建物少し遠くからでも見えてるから怪しいよな?」
「今まで無かった物が突然出来たわけですし、凄く怪しいです」
「「…………」」
無言になった俺たちは、とりあえず家の扉を開けた。
「遅いのじゃ!!?」
「ま、マリー?」
そこには玄関ホールで仁王立ちしているマリーの姿があった。
気がつけばセシノは駆け寄って、マリーに抱きついていた。
「マリーさんおかえりなさい! 帰ってこないから私心配で……」
「それはすまなかったのじゃ、しかしワシの心配なぞいらぬのじゃ」
「いやいや! それでも心配はするから、それに遅いって言いたいのは俺の方なんだけど?」
「うむ、よく考えればそれもそうじゃな。じゃが今朝方まで町におったおかげで、良き情報を見つけて帰って来れたのじゃぞ?」
そう言ってマリーはポケットから新聞紙を取り出す。そのサイズはどう考えてもポケットから出てくるサイズじゃ無いけど、気にしない事にする。
「えっと、これは今日の新聞か?」
「そうじゃ、よく読んでみるがよいのじゃぞ!」
俺とセシノはマリーが広げた新聞を上から覗き込む。
昨日起きた事件が順番に載っているけど、どれが良き情報なのか俺はすぐに見つけられない。
そんな俺より先にセシノがお目当ての記事を見つけたのか、驚いて声を上げた。
「ええ、嘘!? バンさんココ見て下さい!!」
慌ててセシノがある記事を指差す。
俺はその文を口に出して読んでみた。
「なになに『またまた噂のお面男、お手柄か!? ズーロウに関わっていたとされる闇組織検挙へ』って、ここに載ってる二人組って昨日の奴らじゃないか??」
「そうなんですよ!! 昨日あんなに威勢よくうちの家を出て行ったのに、それがなんで……?」
その記事には、昨日の夕方お面をつけた男が捕まえた二人組について書かれていた。
あの二人はズーロウに関わっていたという罪を自ら認め、それだけじゃなく人身売買をしていたという闇組織の内部事情も全て話したと書かれていた。
「一体コイツらに何があったんだろうか……不思議なこともあったもんだな。でもこのままいけば、人身売買で売られた子たちも助かるかもしれないって事だよな?」
「それはわかりませんが、少し希望が見えて来ました……本当、よかったです」
「でもこれが今後どう進展していくのか気になるから、また今度町に行って確認しような」
「はい、そうしましょう」
でもまさか昨日の今日でこんな事が起きるなんて思っていなかった俺は、その興奮が収まらなかった。
「いやぁ、それにしても悪い奴らには本当に天罰ってのは下るものなんだな~? 見てみろよこの新聞には、『お面男は町のニューヒーロー?』って書いてあるぞ?」
「ほ、本当ですね!? って、それよりも……このお面の男って……?」
そういうと、セシノはじっと俺を見つめる。
それを不思議に思いながら、俺はお面の男について感激していた。
「本当、このお面の男って言うのは正義感に溢れた凄い奴なんだな」
「そうじゃろ、そうじゃろ」
「なんでマリーが偉そうに言うんだよ」
「も、もしかして……マリーさ、んぐっ!」
そう言いかけてマリーに手で口を塞がれたセシノは、俺から少し離れると二人でそのまま何か話込んでしまった。
それは小声で俺には全く聞こえない。
でも俺は新聞を読みながら、これならセシノの両親も安心して生活できるな、と安堵していた。
それに俺も気にせずに宿屋をやれる、そう思った瞬間扉が勢いよく開いた。
「マスター! 大変だ、ギルドの奴らがここに向かってるぞ!?」
「ええ!? なんで……ってどう考えてもこのデカイ洋館のせいだよな……」
目を泳がす俺を見て、マリーが盛大にため息をついたのが見えた。
「当たり前なのじゃ、いきなり景色が変わったらギルドの調査が入るに決まっておる。ワシらはギルドの奴らと話す訳にはいかぬのからのぅ、ここはマスターだけで頑張るがよいのじゃ?」
「ええ、俺一人で!?」
皆一様に当たり前だろ、と言う顔で頷いていた。
「と、言う訳じゃからワシとセシノはまだ話すことがあるのじゃ、誤魔化すの頑張るのじゃぞ?」
「バンさん、お役にたてませんが料理して待ってますからね!」
セシノは軽く手を振ると、二人でキッチンの方へと歩いて行く。
その姿は姉妹のように見えて微笑ましい。
「俺も一応ここ周辺に霧を出しておくけどよ、何も出来ねぇから……でも終わったら俺をモフモフして癒されるといいぜ?」
「ありがとう、フォグ……俺モフモフのために頑張るよ!」
「よくわかんねぇけど、それでマスターのやる気がでるならよかったぜ。じゃあまた後でな!」
そしてフォグもいなくなってしまい、俺は一人になってしまった。
でもどうせギルド職員はもうそこまで来ているならと、俺は狼のお面を被り外にでたのだった。
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