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第三章 温泉を作る俺

57、五人の冒険者

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 そして鉱山のトンネル内へと入った俺たちは、周りを見回していた。

「さて、お目当ての冒険者は……?」
「もう少し奥の方でしょうか? 私めが索敵魔法を使いますのでお待ち下さい」

 セーラさんはヒーラー兼索敵役だったのか。
 これは探す手間が省けそうだ。

「ここからさらに東へ500歩先、人の気配が5つあります」
「確か、冒険者たちは5人いたので間違いないです!」
「そうか、ならそっちに向けて進もう」

 そして俺たちは、セーラの誘導に従って慎重に前に進んでいた。
 俺は一応一番後ろを歩いているのだけど、割と呑気だった。

「マスター、服の中は少し息苦しいぞ」

 そう声がして、俺はドキリと前の3人を見た。
 どうやら前に集中していてこちらに気づいていないようだ。
 俺はホットすると、服の中にいるミニマムドラゴンを見た。レッドは体が熱いので、耐熱材の布に包まってて余計に苦しそうだった。

「レッド、もう少しの辛抱だから待っててくれよ」
「でも本当にこれを手伝ったら、俺様の家をもっと豪華にしてくれるのか?」
「ああ、それは勿論だ」

 俺はレッドに手伝って貰うために、何か一つ願いを聞いてやると約束したのだ。その願いがあの神殿を豪華に飾り立てることだった。
 そのぐらいなら俺にも出来そうだと、レッドと取り引きをしていた。

「バンテットさん、どうかしましたですか?」
「い、いや……何でもない」

 俺の前を歩くミラが、流石に気付いてしまったようで俺は慌てて服から手を離していた。
 そして、それはセーラさんの耳にも入ったようで怒られてしまった。

「もうすぐ着きますので、気を抜いてはいけませんのよ……」
「はい、すみません」
「しっ、静かにお願いします。どうやら見えてきたみたいです」

 先頭を歩くシガンが、立ち止まるとその場にしゃがむ。
 俺たちもつられてしゃがみ、噂の冒険者たちを覗き見ていた。

「今日は絶好調だぜ!!」
「他の冒険者いないと、すごく捗りますね」
「本当だな~」

 とてもハイテンションな冒険者たちは、どうやら近くの敵を倒すメンバーと、採掘をしているメンバーで完全に別れているようだった。
 そして男たちの話はまだ続いていた。

「それにしても、赤竜をせっかく眠らせたのに仕留められないなんて思わなかったよな~」
「キングに大口叩いて出てきてこれじゃあ、また怒られちまうよ」
「でもそのおかげでバカな冒険者を囮に出来て、鉱山も俺たちの貸切みたいな感じで最高じゃんかよ!」

 どうやら赤竜の件は、俺が思った通りだったようだ。
 そしてそれを聞いていた3人というか、セーラはやはり怒っていた。

「あの男たちに天誅を、あの男たちに天誅を、あの男たちに天誅を……」

 と、爪を噛みながら何度も呟いていて凄く怖い。

「セーラさん、僕が最初に飛び出すので援護お願いします。もしかすると僕なんかじゃダメかもしれませんけど……」
「何言ってるですか、シガンなら大丈夫です。私も援護しますですよ」
「シガン、タイミングは貴方に任せますよ?」

 セーラの言葉にシガンは頷き、目を閉じカウントを始めた。

「3、2、1……人格スイッチ、オン!!」

 目を見開いたシガンは緑の瞳をぎらつかせ、まるで別人のように採掘している冒険者たちのもとへと飛び出した。

「おうおう、てめぇら!! さっきはよくも騙してくれやがったな!」

 それに驚いたのは、そこにいる冒険者たちだけじゃなく俺もだった。
 えっと、あれがシガン? 別人じゃないよな?

「なんだクソガキ! って、さっきの奴等!?」
「あなた方、よくも私たちを騙しましたね?」

 いつのまに飛び出したのか、シガンの後ろにはミラとセーラの姿もあった。
 このままだと正面からぶつかるな……。

「赤竜を私たちに押し付けるなんて酷い人たちです!」
「あなた方が謝ってくださるまで、私たちに攻撃されても文句は言えませんからね?」

 そう言うと、セーラはもうすでに魔法を放とうとしていた。

「何言ってやがる! お前たちが赤竜に会ったかなんて俺たちは知らねぇって、つうか魔法を打つんじゃねぇ!」
「くそ、コイツら無茶苦茶じゃんかよ!」
「でも、こんなガキ3人いたところで俺たち5人に勝てると本気で思ってるのかよ!?」

 そう言うと5人の冒険者たちは慣れているのか、セーラの攻撃を軽やかに避ける。
 そしてすぐに反撃を始めたのだ。

「クソガキども、すぐにその心ごと折ってやるからよ。実力の差ってやつを知りやがれ!」
「オラオラ!! クソなおっさん共に言われてもしらねぇよ。この僕がお前らに天誅を与えてやるからな!!」

 シガンの剣を軽々と受け止めるその姿から、確かにこの冒険者たちが強いと言うことがわかる。
 流石、これでも赤竜に挑もうと思っただけはあるな……。
 俺は関心しながら、その様子をただひたすら見ていた。だって俺がこの乱戦に参加しても意味ないし、あの3人もそこまでは望んでないだろう。
 そして、俺が待っているのはタイミングだった。

「俺のダンジョンを荒らすやつらには、本物の天誅をくらわせないといけないからな……」

 ミラとセーラ、そして冒険者たちの魔法使い同士が魔法を使うたび、鉱山のトンネルが崩れていくのがわかる。
 このままだと、完全に崩落するのも時間の問題か……。
 そしてそれは思ったよりも早く訪れた。

「いい加減にしろ! このままだと鉱山が崩れるんだぞ!!」
「そうだとしても、僕は戦うのをやめられねぇんだよ!!」
「おい、崩れるぞ!」

 そう、誰かが叫んだ。
 俺はその瞬間を待っていた。
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