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第三章 温泉を作る俺
58、赤竜と一緒に
しおりを挟む大惨事になるのを待っていた俺は、混乱に乗じてレッドに声をかけた。
「レッド、行くぞ!! 巨大化して落ちてくる岩を吹き飛ばせ!」
「任せろマスター、俺様にかかればそれぐらい伸びをするだけですむんだからな!」
そう言いながら、レッドはどんどん大きくなる。
俺は大きくなるレッドに巻き込まれて、気がつけば頭の上に乗っていた。
このままだと俺が岩に潰される、と思う前にレッドの翼が勢いよく広がった。
それは落ちてくる岩を全て吹き飛ばし、その勢いのまま山の一部を吹き飛ばした。
「あー。おもったより、大惨事になったな……」
俺は見上げるとダンジョンの空がよく見えた。
確かにレッドのサイズでは、トンネルには収まらないとは、思っていたけど山の一部を吹き飛ばすとはな……まあ、ここはダンジョンなので明日には元通りになってると思う。
「な、何が起きた!?」
「トンネルが崩れる前に山が吹っ飛んだ……?」
「いや、よく見ろ!」
「あ、あれは赤竜じゃん!!?」
「なんでここに赤竜がいるんだよ!?」
突然現れた赤竜に、5人の男たちは腰を抜かしていた。きっと眠っている赤竜から痛い目にあった事でも思い出したのだろう。
しかし、男たちに比べてミラたちの怒りは変わってなかった。
「よくわかりませんですが、赤竜の空気が何故かあのときと違う気がしますです! アイツらに攻撃続けますですよ!」
「ミラ、シガン。きっと今が神が与えてくれたチャンスなのでしょう、いっきに畳みかけますよ!!」
「ぶっ殺す、絶対に殺してやるからなぁ!!」
そう言いながら向かってくるシガンに、男たちは動けないまま恐怖していた。
「な、なんで赤竜が出てんのにまだ攻撃してくるんだ!」
「コイツら頭がヤバイじゃん!?」
「お、俺は死にたくねぇ!!」
「あぁ!? それなら死にたくない奴から僕たちへ土下座するんだなぁ!!」
シガンの剣が後一歩で冒険者たちの首もとに触れそうになった。
まだ動けない男たちは震えながらも、どうにか頭を下げ始めたのだ。
「すみません!!」
「わるかった!」
「謝るから、その剣を閉まってくれぇ!?」
「お前らぁぁ! 本当に、罪を認めるんだな?」
「み、認めるから! 赤竜から逃げるの手伝ってくれ!!」
「それは、あなた方の態度によります!」
「「「「すみませんでした!!!」」」」
男たちは恐怖のあまり一斉に頭を下げて謝っていた。その姿を見たミラたちはそれで満足したのか、その後攻撃する事をやめていた。
しかし、それを上から眺めていた俺はそれだけでは物足りなくて、正直もう少しミラたちがあのとき感じた恐怖を知って欲しかった。
だからシガンが男たちから離れた隙を狙って俺はプロテクト・ゾーンを展開していた。
「対象は5人の男たちにして、固定っと。レッド、ファイヤーブレスいけるか?」
「おう、クシャミみたいなもんだから気軽に任せてくれよな!」
やる気充分なレッドを見て、俺は自分の靴が鱗の熱で限界になる前に早く終わらせようと思っていた。
そのためミラたちをもう少し5人の男たちから離す必要があり、俺は声を張りあげた。
どうせ竜の上から声がしても、誰がいるかなんてよく見えないだろうからな。
「貴様たち、よくもダンジョンを荒らしてくれたな。その落とし前はつけさせて貰うぞ!」
俺の声に反応したのは5人の男たちだけだった。ミラたちに許して貰えたことで安堵しているようだけど、ここから地獄を見せてやろう。
「だ、誰だ!? 一体どこから声がしてやがる?」
「み、見ろ!! 竜の上に男がいるじゃんか!?」
「あいつ、お面してないか……?」
「遠くてよくわからないぞ!!」
混乱し始める冒険者と、何故か唖然とこちら見つめるミラたちの様子を見て、俺はレッドに小声で指示を出す。
「レッド、ミラたちがもう少し男たちから離れるように少し脅しながらあいつらに近づくんだ!」
「わかった。動くからバランスを崩すなよマスター!」
レッドは広げた羽を戻すと、ドスドスと歩き始めた。
その事に驚いたのは、5人の男たちだけじゃなかった。
「ミラ、シガン! 赤竜が動き始めましたわ、少し離れますわよ!!」
「はいです!」
「アイツらは、どうするんですか……?」
性格がすっかりもとに戻ったシガンが、男たちを指差す。
「あの方々は後回しです。少し距離をとって見守りますよ」
「そ、そんなぁ~!! さっきと話がちげぇだろ!」
「俺たちも助けてくれぇー!!」
喚く男たちの目前までレッドは迫っていた。
上手くミラたちが逃げてくれたので、これはいいコースに入った。
「ひぃいい!!」
「いやだ、死にたくねぇ?」
「もう二度と竜を起こしたりしねぇからぁ!!!」
男たちは泣き叫び、顔を真っ青にしていた。
でも俺は容赦するつもりはない。正直結界を張ってやってるだけ感謝してほしいところだ。
俺は最後の仕上げだと、男たちに大声で言ってやった。
「貴様らは逃げる事は出来ない! 竜の怒りをその身に受けて反省するがいい!!」
レッドが口を大きく開く、そこには魔力が集まり炎の玉がどんどん大きくなっていく。
それを見た男たちの顔は絶望に染まり、諦めた者や神に祈る者、そして失禁してしまった者もいるようだった。
「やれ!!」
俺の声とともに、レッドがファイヤーブレスを放つのが見えた。
正直その反動で俺は落ちかけたのだけど、レッドが羽で受け止めてくれたおかげでどうにか助かった。少し髪と服が焦げたけど全然許容範囲内だろう。
そしてようやくブレスが途絶えて、男たちの様子が少しずつ見えてきた。
そこには結界で守られているから無傷なのに、失神している5人の男たちの姿があった。
「よし、制裁完了かな? 後は飛び立つフリして帰って来いよレッド!」
「ぐるるぅぅぁあぁぁ!!!!」
レッドが叫ぶとの同時に俺はレッドからどうにか飛び降りて、もといた場所へと素早く戻る。
見上げると、レッドが空へ羽ばたいて行くのがよく見えた。
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