夏祭りの女

ツヨシ

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ある年、私は妹と近所の夏祭りに出かけた。
地元の神社が主催しているもので、毎年けっこうにぎやかになる祭りだ。
そこで妹の友人の真奈美という女を紹介された。

妹がどういうつもりだったのかは今となってはわからないが、私と真奈美は意気投合してそのまま付き合った。
おだやかで幸せな時間が過ぎた。
そして一年後の夏祭りに真奈美と出かけ、そこでプロポーズをした。

彼女は涙を浮かべてうなずいた。

そのまま双方の両親を紹介しあったり、結婚式場を決めたりして忙しい時が過ぎ、結婚式まであと一ヶ月を切ったときの事だ。
真奈美が突然別れてくれと言い出した。
好きな男ができたと言うのだ。
親族を巻き込んで大きくもめたが、真奈美の意志が固く、結局別れることになった。
その後、真奈美はその男と同棲を始めたと聞いた。

そのうちに夏になり、その年の夏祭りは私一人で出かけた。
そして傷心の男が夏祭りに一人で行くものではないということをいやと言うほど思い知らされて、帰ってきた。

それからしばらくして、真奈美が死んだということを聞いた。
死因は心労ということだった。
なんでも一緒に住んでいた男の暴言と暴力が酷かったと言う。

周りの友人は別れるように言ったのだが真奈美は「それでも好きだから」と言って別れなかったそうだ。
そして心身ともに大きな傷を負い、最終的に命を落としたそうだ。
真奈美の両親が男を訴えて裁判沙汰になったそうだが、その結果までは私の耳には入ってこなかった。

やがて夏になり、その年の夏祭りは妹と二人で出かけた。
真奈美と別れてから妹がそれについて自分を責めていたので、兄妹の関係が少しぎくしゃくしていたのだが、最近になってようやく以前の関係に戻りつつあった。
夏祭りには私から誘ったのだ。

私は真奈美と初めて会ったのも、プロポーズをしたのもこの夏祭りだったことを思い出しながら、人のにぎわいをながめていた。
その時、不意に聞こえてきた。
「ごめんなさい」
それは真奈美の声だった。
私は妹と目が合った。
妹は驚愕の表情で私を見ていた。私は言った。
「聞いたか?」
妹は小さくうなずいた。
そして泣いた。

       終
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