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神社に着き、誰でもわかる丑の刻参りのやり方マニュアルの通りにやりとげた。

――ざまあみろ。これで片桐のやつは。うひゃっひゃっひゃっひゃ。

俺は車に戻った。

そしてエンジンをかけようとした時、突然胸が苦しくなった。

――なっ、なんだあ?

今まで経験したことがないような胸の苦しみ、圧迫感、それにくわえて痛み。

その三つが同時に襲ってきたのだ。

――くっ、苦しい……。

俺はそのまま意識を失った。


ふと気がつくと、俺は車の外に立っていた。

そして車の中には、なんと俺がいた。

その顔はどう見ても、もがき苦しみながら死んだ人間の顔だった。

――えっ、どういうこと?

そのとき、俺に何かが降りてきた。

どう表現していいのか悩むところだが、見えてきたと言うか、感じてきたと言うか、わかってきたと言うか。

とにかく死者には生者のわからないことでも、わかってしまうようだ。

俺が理解したのは、俺はもう死んでしまったということ。

そして俺が死んだ理由は、部屋で拾い上げた髪は片桐の髪ではなく、この俺の髪だったということだ。


       終
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