赤いキャンプ場

ツヨシ

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「よう、行くぞ」

当日、能天気を絵に描いたような声で、正人が迎えに来た。

朝に来るといっていたのだが、もうお昼になっている。

もともと時間にはたいそうルーズな正人なのだが、ここまで遅れるのも珍しい。

「いろいろ準備に手まどってさあ」

言うだけあって、一泊二日のキャンプにこれほどの荷物が必要なんだろうかと思えるほどの大量の荷物を、後部座席いっぱいに積んでいた。

私は前の日にちゃんと準備しときなさいよ、と言おうとして、やめた。

そんなことを言って素直に聞くような正人ではないし、出発時間が遅れればそれだけキャンプ場での滞在時間が短くなるからだ。

そのほうがありがたい。

私が無言で車に乗り込むと、車は走り出した。


途中、昼飯がまだだと言う正人のためにファミレスに寄ったりしたので、キャンプ場に着くのがさらに遅れた。

すぐに夕食の支度をしなければならない時間となっていた。

車を乗り入れると先に一台、その先のもう一台の車が止まっていた。

「今はあそこ、人気がないからね。ひょっとしたら俺たちだけかもしれない。そうなったら、やりたい放題だぜ」

と正人は言っていたが、どうやらあてが外れたようだ。

正人の言うやりたい放題とは、夜の営みのことである。

この男にそれ以外なんてものが、あるはずもない。

「こんにちは」

私は正人と二人で先客に挨拶しに行った。

「どうも」

「こんにちは」
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