ツヨシ

文字の大きさ
上 下
1 / 6

しおりを挟む
それは私と父とのお話です。

私はもの心ついたときから、父が私を避けていることに気がつきました。

私には兄と弟がおり、娘である私が三人の中では父親に一番可愛がられるのが一般的だと思われるのですが、父は兄と弟ばかりに目をかけて、私が相手にされることは全くと言っていいほどありませんでした。

母が何度となくそのことについて尋ね、批判もしましたが、父はその態度を頑なに改めませんでした。

分別がつくようになった兄も、後に分別がつくようになった弟も母と同様に父を責めましたが、父の私に対する対応は、少しも揺るぎませんでした。

私はと言いますと、父に気に入られようと振舞うと同時に、幼いながら父が私を避けている理由を探ったりしましたが、兄や弟はもちろんのこと、母でさえわからないその理由を、私が探り出すことなんて出来るはずもありません。

ただ父は真面目に働き、母を大事にし、兄と弟に愛して充分父親としての役割を果たしていたので、私のことが原因で別居とか離婚とかと言った事態に発展することはありませんでした。

父は浮気も酒もギャンブルもやりませんでしたし。

いろいろと考えた末のことだと思われますが、母は兄と弟は半ば父に任せて、娘の私をえこひいきではないかと思われるほどに可愛がるようになりました。

普通、父親は娘、母親は息子とより密になる傾向がありますが、私の家ではそれが完全に逆転していました。

母親が恋しいざかりの兄や弟も、それを容認しました。

私は妹としても姉としても、二人に愛され慕われていたからです。


そんな幼少期を過ごしてまいりましたが、私はある日ふと、父が私を避けている理由を改めて考えて見ました。
しおりを挟む

処理中です...