あのバス停を降りたときに

ツヨシ

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血の臭いが一つではないことに。

一つは濃く、腐りかけたようなねちゃねちゃとした血の臭い。

いつも老婆がバス内にまき散らしているものです。

ところが同じく血の臭いには違いないのですが、老婆のものと比べるとやや薄く、そして幼いと言うか若いというか、粘着性をそぎ落としたような血の臭いが私の鼻の中に入ってきました。

その正体はすぐにわかりました。

老婆の後ろから昨日山の中に消えた女子高生が乗ってきたのです。

そして老婆がいつもやるように、ゆっくりと振り返りました。

女子高生のセーラー服は前面が引き千切られたかのようになっており、若さに満ちあふれた二つの大きなふくらみが見えました。

そしてそのふくらみの下、腹部は老婆と同じように縦に大きく裂かれていたのです。

内臓は垂れ下がり、一部はバスの床の上に落ちていました。

そして血も老婆と同じく、腹部だけではなくその全身を真っ赤に染めていました。

――いいいいいいいいいいいっ!

私は叫びました。

心の中で声を限りに叫びました。

これまでに経験したことがない、全身の筋肉という筋肉が極限まで震え、それにより自身の身体がこなごなになってしまうのではないかと思えるほどの正真正銘の恐怖。

なぜ今まで強く感じることが出来なかったのか。
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