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「どうせ目的は同じなんだから、かまわないでしょう。ただし、その命をかけることになりますがね。その点が昼間の山狩りとは、大きく異なりますね。ですから岩崎さん。武器が必要です。強力な武器が」
木藤はゆっくりとさがった。
「私は数日前から、夜の捜索を始めました。そして私の思惑通り、昨日からそれが三人になりました。神城は必ず動きます。わざわざ宣戦布告をしてきたのですから。一人でも目障りなのが、三人になりましたからね。うっとうしいやつはさっさとぶっ殺して、早く終わりにしたいはずです。神城の考えていることを私が全てわかっているわけではないのですが、少なくとも私なら迷わずそうするでしょうし、その点においては神城も同じだと思われます。おそらく今日か明日辺りが、山になるでしょうね」
「……」
「まことに申し訳ありませんが、今更辞めても、もう遅いですよ。神城があなた方のことを忘れるなんてことは、おそらく一生ないでしょうね。あなたの家に来たことが、その証拠です。おまえは敵だと言っているのです。絶対に逃がさないと言っているのです。あれはそんな女です」
木藤はそう言うと、どこか遠くを見た。
「……」
岩崎は何も言うことが出来なかった。
ただただ木藤を見ていた。
しばらく遠くを見ていた木藤だったが、再び続けた。
「私を恨んでくれてもかまいません。そうするのが当然なのですから。私は大きな目的があるときは、手段を選ばないんです。何でもやってきたんですよ。法律上、道徳上、倫理上において問題があるようなことでも。悩んだことはありますが、やらなかったことは一度もありません。今までそうやって生きてきたんです。そうなると当たり前のことですが、時には誰かの恨みを買うようなことも、何度もありましたよ。おかげで今ではそれなりの会社を経営しています。これが私の生き方なんです。まあこの性根は、おそらく死ぬまで変わらないでしょうね。岩崎さんにとって不幸なことは、こんな男に目をつけられたことですね」
「……」
「それではお互い命があったら、また会いましょう。せいぜい気をつけてくださいね。あっさりやられたんじゃ、私が困りますから」
そう言うと木藤は去って行った。
あれだけのことを岩崎に伝えたにもかかわらず、その歩みはまるで暇つぶしにその辺をぶらついているかのようだった。
北山は駐車場に車を停め、降りた。
そして目の前にある中小企業の所有する建造物をそのまま絵に描いたような建物に向けて、歩き出した。
北山は建物の前で止まった。
――懐かしいな。まさかもう一度、ここに来る日がやってこようとは思わなかったが。
北山は見事なまでに味気のない四角い建物を見ていたが、やがて裏に廻った。
――確かこのあたりだったな。
北山は前ではなくて、下を見ていた。
そして見つけた。
土の通路の端に無造作に置かれている、一つのレンガを。
その存在を知らない人なら、まず見落とすだろうと思えるほどに、目立たないものだった。
もうほとんど剥げかけているが、そのレンガには赤いペンキで何かが書かれていた。
ペンキがまだ剥げ落ちていない状態を見ていないものは、そのレンガに何が書かれているのか想像することは、かなり困難であろう。
しかし北山は知っていた。
何故ならレンガに赤いペンキで何かを書いたのは、北山自身なのだから。
もう十数年も前のことだ。
とは言っても何か特別なことを書いたわけではなく、ただの目印にすぎないのだが。
北山はレンガを持ち上げて、すぐ近くに置いた。
――やっぱり今でもあったか。
木藤はゆっくりとさがった。
「私は数日前から、夜の捜索を始めました。そして私の思惑通り、昨日からそれが三人になりました。神城は必ず動きます。わざわざ宣戦布告をしてきたのですから。一人でも目障りなのが、三人になりましたからね。うっとうしいやつはさっさとぶっ殺して、早く終わりにしたいはずです。神城の考えていることを私が全てわかっているわけではないのですが、少なくとも私なら迷わずそうするでしょうし、その点においては神城も同じだと思われます。おそらく今日か明日辺りが、山になるでしょうね」
「……」
「まことに申し訳ありませんが、今更辞めても、もう遅いですよ。神城があなた方のことを忘れるなんてことは、おそらく一生ないでしょうね。あなたの家に来たことが、その証拠です。おまえは敵だと言っているのです。絶対に逃がさないと言っているのです。あれはそんな女です」
木藤はそう言うと、どこか遠くを見た。
「……」
岩崎は何も言うことが出来なかった。
ただただ木藤を見ていた。
しばらく遠くを見ていた木藤だったが、再び続けた。
「私を恨んでくれてもかまいません。そうするのが当然なのですから。私は大きな目的があるときは、手段を選ばないんです。何でもやってきたんですよ。法律上、道徳上、倫理上において問題があるようなことでも。悩んだことはありますが、やらなかったことは一度もありません。今までそうやって生きてきたんです。そうなると当たり前のことですが、時には誰かの恨みを買うようなことも、何度もありましたよ。おかげで今ではそれなりの会社を経営しています。これが私の生き方なんです。まあこの性根は、おそらく死ぬまで変わらないでしょうね。岩崎さんにとって不幸なことは、こんな男に目をつけられたことですね」
「……」
「それではお互い命があったら、また会いましょう。せいぜい気をつけてくださいね。あっさりやられたんじゃ、私が困りますから」
そう言うと木藤は去って行った。
あれだけのことを岩崎に伝えたにもかかわらず、その歩みはまるで暇つぶしにその辺をぶらついているかのようだった。
北山は駐車場に車を停め、降りた。
そして目の前にある中小企業の所有する建造物をそのまま絵に描いたような建物に向けて、歩き出した。
北山は建物の前で止まった。
――懐かしいな。まさかもう一度、ここに来る日がやってこようとは思わなかったが。
北山は見事なまでに味気のない四角い建物を見ていたが、やがて裏に廻った。
――確かこのあたりだったな。
北山は前ではなくて、下を見ていた。
そして見つけた。
土の通路の端に無造作に置かれている、一つのレンガを。
その存在を知らない人なら、まず見落とすだろうと思えるほどに、目立たないものだった。
もうほとんど剥げかけているが、そのレンガには赤いペンキで何かが書かれていた。
ペンキがまだ剥げ落ちていない状態を見ていないものは、そのレンガに何が書かれているのか想像することは、かなり困難であろう。
しかし北山は知っていた。
何故ならレンガに赤いペンキで何かを書いたのは、北山自身なのだから。
もう十数年も前のことだ。
とは言っても何か特別なことを書いたわけではなく、ただの目印にすぎないのだが。
北山はレンガを持ち上げて、すぐ近くに置いた。
――やっぱり今でもあったか。
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