汚れた人形

ツヨシ

文字の大きさ
上 下
1 / 1

1

しおりを挟む
妹がどこからか人形を拾ってきた。
それが可愛い人形ならまだわかるのだが、まるで可愛くはないし、汚れているし、おまけに額にはっきりとした傷があった。
しかし妹はその人形を可愛いと言う。
少し将来が心配だ。

そんなある日のこと。
僕の家のすぐ前にある児童公園から、妹の泣き声が聞こえてきた。
出て見れば、妹は地面に倒れて泣いていた。
駆け寄ると、妹は額から血をだらだらと流している。
地面には血の付いた大きめの石があった。
転んだ時に、この石に額をぶつけたようだ。
お母さんも家から出てきて、妹を抱え上げて走り、妹を車に押し込んだ。
お母さんも車に乗り込み、そのまま車は走り去った。
残された僕は、妹の心配をしながらもふと考えた。
妹が額をぶつけた石。
この公園はよく整備されているはずだ。
僕も家のすぐ前にあるこの公園で、こんな大きな石は一度も見たことがない。
いったいなんでこんな石がここにあったのか。
とりあえず公園に戻って石をどかし、家でおかあさんと妹を待った。
ずいぶん待ったと思われたころ、二人は帰ってきた。
おかあさんによると、お医者さんによると出血はひどいが傷自体は大したことがないそうで、そのうちにきれいに治ると言う。
僕はほっとした。
妹も今は落ち着きをとりもどしたようだ。
その時気づいた。
視界に入ってきた妹が拾った汚れた人形。
その人形の額の傷がなくなっていることに。

       終
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...