闇の中の黒い闇

ツヨシ

文字の大きさ
14 / 47

14

しおりを挟む
「よお、久しぶりだな。こんなところで会うなんて、奇遇だな。って、奇遇でもなんでもないな。必然ってやつだ。なあ、大道さんよ」

「ご苦労様です」

小峠は近田よりも少しだけ若いが、大道に対する話し方はそっくりだった。

刑事と記者との関係になると、自然とそうなってしまうのだろうと大道は思った。

「まあ、堅苦しいあいさつはなしだ。おまえさんたちは警察の機嫌を損ねるといろいろと困ったことになるんで、そうなってしまうのは仕方がないが。で、これから聞き込みなのかい?」

「ええ、そうです」

「うちはたった今、最初の一人が終わったところだ。遠慮なくやってくれていいぞ。遠慮なくと言ったが、あんまりしつこくするなよ。住人を怒らせたら、こっちもやりにくくなるからな」

「それは心得ていますよ」

「ならいいが。それじゃあこのへんでな。ぼちぼちやれよ。ぼちぼちだぞ」

小峠はそう言って大道の横を通り過ぎようとした。しかしその時、大道だけに聞こえる声で一言つぶやいた」

「ここにはなんかいるぞ」


生田の部屋は記者である大道は、もちろん入れない。

同じ事件を調査していても、ここらあたりが警察と記者との差だ。

とりあえずいつものように左隣の部屋からせめてみる。

返事がない。

どうやら留守のようだ。

つづいて右どなり。

呼び鈴を押すと、誰が見ても一目で水商売を生業としているとわかる雰囲気をその全身にまとった女が出てきた。

「なんですか」

慣れた手つきで名刺を渡し、質問を開始する。

「生田さんね。なんでも悲惨な殺され方をしたって、テレビで言ってたわ。前代未聞の殺人事件だとか。並木さんのときも同じことを言ってたわよね。ほんと大げさだわ。マスコミなんてそんなものよね。ボキャブラリーも少ないし、バカみたい」

大道はテレビではないが、事件を本にしているのだからマスコミ関係者と言って差し支えはない。

それを目の前にして、よくもこんなことが言えたものだと思ったが、ここで腹を立てていたのでは仕事にはならない。

大道は何事もなかったかのように、涼しい顔で話を進めた。

「生田さんは、どんな方でしたか。ご近所の人から見て。たとえば、ご近所の人となにか揉め事を起こしたりしていませんでしたか」

女は、にやりと笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

処理中です...