闇の中の黒い闇

ツヨシ

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とりあえず、今日のところは適当に話を聞いて、好子の顔を見たらすぐに帰ろう。

そして今後のことは、またあとで考えよう。

近田はそう思った。

ゆうぎ場に行くと、好子はいた。

相変わらず部屋の隅に座りこんで前方を見ている。

そしてその目はどこも見てはいなかった。

子供たちの中央に若い女性職員がいた。

近田が職員を見ていると、彼女は複数の子供たちを相手しながらも、時折好子のほうへ目を向け、心配そうな顔で見ていた。

あの中途半端な男と違って、彼女が本当の子供好きであることがその行動から見て取れた。

近田は心の中で彼女に感謝した。

――とりあえず、しばらくは安心かな。

近田はその場を去ろうとした。

が、なにかを、強烈ななにかを感じて振り返った。

そこには好子がいた。

そして好子の目は、しっかりと近田を捕らえていたのだ。


携帯が鳴った。見れば近田からだ。

「もしもし」

返事がない。大道はもう一度言った。

「もしもし」

「……俺だ」

大道は嫌な予感を覚えながらも、努めて平静をよそおった。

「どうしたんですか、急に」

「ああ、おまえに言っておきたいことがある」

いつもの近田とは違っていた。

重くて力ない口調だ。

「なんです?」

「あの子と目があった」

「あの子とは正木の娘ですか」

「そうだ。正木の娘だ。その子と目があった。しっかりと見ていたんだ。俺のことを」

「……」

「なにかよくないことが起こりそうな気がしてならない。……そこでだ。おまえに一言言っておきたいことがある」

「一言……ですか」

「ああ、一言だ。もし俺になにかあったら、あの子には決して近づくな」

「……」

「返事がないな」

「ああ、わかりました。近づきません」

「本当か?」

「本当ですよ。心配ありません。それに近田さんも、なにかあったらだなんて、縁起でもないこと言わないでくださいよ」

「……」

「もしもし」

「言いたいことは言った。じゃあな」

「あの、近田さん」
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