走る女

ツヨシ

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マラソン大会に出た。
マラソン大会と言っても、国際大会や大きな市民マラソンではない。
地方で行われている誰でも参加自由のハーフマラソンだ。
走りに人一倍自信のある俺は、上位を狙っていた。
とは言っても、地方のハーフマラソンでも全日本クラスの招待選手もいるので、一位と言うわけにはとてもいかない。
それ以外にも強い選手が何人もいる。
去年が十八位だったので、それよりは上を目指すのが目標だ。
マラソンはスタートし、俺は順調な走りを見せた。
そして折り返しを過ぎ、あと半分と言うところで気がついた。
俺の横にぴったりとくっついて走っている若い女がいたのだ。
その姿ときたら、腰まである長い髪を束ねることもなく大きくなびかせ、上は長袖のシャツで下は足首まであるロングスカート。
そしてサンダルを履いているのだ。
とてもマラソンに参加する服装ではない。
おまけにこの女、前を見ずに俺のほうに顔を向け、始終にたにた笑いながら走っている。
まれに沿道から飛び入りしてくる奴がいるが、関係者が誰もこの女を止めないし、ずっと俺のスピードに合わせて真横を走っているのだ。
あの服装で、にたにたと笑いながら。
――なんだこいつは。
はっきり言って滅茶苦茶気持ち悪い。
俺はペースを上げた。
ゴールまでまだ距離があるのにペースを上げるのははっきり言って危険だが、その時の俺はそんな基本的なことさえ頭になかった。
それでも女はついてくる。
やはりにたにたと笑いながら。
俺はさらにペースを上げた。
女の笑いが大きくなったような気がした。
そしてまだ真横を走っている。
もう心臓はばくばくだ。
一瞬レースを止めてしまうことも考えたが、俺のプライドがそれを許さなかった。
数回ほど本気で死ぬかと思ったが、そのままゴールまで走り続けた。
ゴールした時も女は俺についてきた。俺はそこで倒れこんだ。
そして周りを見たが、ついさっきまで俺の横にいたはずの女は、どこにもいなかった。
俺は結果、九位だった。
後で親や友人が俺の走る姿を撮った動画を何本かみたが、それらのどこにも女の姿はなかった。

       終
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