2 / 2
2
しおりを挟む
その次の日も、一人死んだ。
今度は中学生男子だ。
もう何人目になることか。
うちも引っ越しが決まった。
父が会社を休み、引っ越し先を探してきたのだ。
荷物をまとめていると、叔父がやって来た。
母方の親族だ。
叔父に会うのは久しぶりだ。
「ニュースで見た。大変なようだね」
「ああ、大変だ。命がかかっているし。もう明日引っ越すことにした。業者も引っ越し先も決まったし」
「その必要はないさ」
「えっ?」
「ばあさんはどこだ?」
「奥の部屋にいるが」
叔父は奥の部屋に入った。
そこには祖母がいた。
祖母は右手と柱を硬いひもでつながれていた。
不本意だが、こうでもしないと本当に危険なのだ。
叔父は祖母の前に立つと、持っていたカバンから何かを取り出した。
それは手鏡だった。
ひどく古いものに見えた。
その鏡を祖母の前に持っていく。
鏡に祖母の顔が映る。
「なにしてるんだ」
「悲しいけど、もうこうするしかないんだ」
祖母は鏡に映る自分をじっと見ていたが、しばらくすると祖母の顔が変わった。
明らかに苦しみだし、そのうちに全身をばたばたさせるようになった。
そして床に倒れ、倒れたまま激しく床を飛び跳ねる。
水から上がった魚のように。
「!」
父が思わずかけよろうとしたが、叔父が制した。
「動かないで!」
叔父の強く鋭い声で、父は止まった。
黙って祖母を見る。
祖母はとても八十四歳とは思えないほどに激しくのたうち回っていたが、やがて静かになった。
その顔に零れ落ちそうなほどの苦悩と恐怖を刻んで。
「終わったな」
「これはやばい。救急車を呼ばないと」
「必要ないよ。もう死んでる」
「なんだって」
叔父は大きくため息をつくと、言った。
「お前は知らなかったようだが、ばあさんは呪術師だったんだ」
「呪術師?」
「ああ、簡単に人を殺せるほどのな。もちろんむやみに殺したりはしないが、痴呆で訳が分からなくなったんだろう。無差別に近くにいるものを殺すようになった。自覚のないままに。だからこの近くで毎日人が死んだんだ」
「……」
「それを止めに来た。これを使って」
「その鏡はなんだ」
「これは呪術を跳ね返す鏡だ。ばあさんは鏡に映った自分に呪術をかけた。その呪術が跳ね返って、ばあさんに呪術がかかったんだ」
叔父はそう言うとうつむき、少し涙を流した。
終
今度は中学生男子だ。
もう何人目になることか。
うちも引っ越しが決まった。
父が会社を休み、引っ越し先を探してきたのだ。
荷物をまとめていると、叔父がやって来た。
母方の親族だ。
叔父に会うのは久しぶりだ。
「ニュースで見た。大変なようだね」
「ああ、大変だ。命がかかっているし。もう明日引っ越すことにした。業者も引っ越し先も決まったし」
「その必要はないさ」
「えっ?」
「ばあさんはどこだ?」
「奥の部屋にいるが」
叔父は奥の部屋に入った。
そこには祖母がいた。
祖母は右手と柱を硬いひもでつながれていた。
不本意だが、こうでもしないと本当に危険なのだ。
叔父は祖母の前に立つと、持っていたカバンから何かを取り出した。
それは手鏡だった。
ひどく古いものに見えた。
その鏡を祖母の前に持っていく。
鏡に祖母の顔が映る。
「なにしてるんだ」
「悲しいけど、もうこうするしかないんだ」
祖母は鏡に映る自分をじっと見ていたが、しばらくすると祖母の顔が変わった。
明らかに苦しみだし、そのうちに全身をばたばたさせるようになった。
そして床に倒れ、倒れたまま激しく床を飛び跳ねる。
水から上がった魚のように。
「!」
父が思わずかけよろうとしたが、叔父が制した。
「動かないで!」
叔父の強く鋭い声で、父は止まった。
黙って祖母を見る。
祖母はとても八十四歳とは思えないほどに激しくのたうち回っていたが、やがて静かになった。
その顔に零れ落ちそうなほどの苦悩と恐怖を刻んで。
「終わったな」
「これはやばい。救急車を呼ばないと」
「必要ないよ。もう死んでる」
「なんだって」
叔父は大きくため息をつくと、言った。
「お前は知らなかったようだが、ばあさんは呪術師だったんだ」
「呪術師?」
「ああ、簡単に人を殺せるほどのな。もちろんむやみに殺したりはしないが、痴呆で訳が分からなくなったんだろう。無差別に近くにいるものを殺すようになった。自覚のないままに。だからこの近くで毎日人が死んだんだ」
「……」
「それを止めに来た。これを使って」
「その鏡はなんだ」
「これは呪術を跳ね返す鏡だ。ばあさんは鏡に映った自分に呪術をかけた。その呪術が跳ね返って、ばあさんに呪術がかかったんだ」
叔父はそう言うとうつむき、少し涙を流した。
終
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる