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部活が終わり、二年三年は早々に帰った。
後片付けは一年生の仕事だ。
他の学校の事は知らないが、ここのバスケット部では昔からそういうしきたりとなっている。
ただ今年は例年になく一年生の数が少ないうえに、一人が風邪で学校を休んでいるために、残っているのは私と蘭子の二人だけだ。
二人で全ての作業をこなすのは、激しい練習の後では結構きついが、仕方がない。
とはいえ、年頃の女子高生が二人いて、何も語らずに黙々とただ身体をうごかすだけなんて、ありえない。
最初は先生の悪口から始まり、いつしか定番の恋話に移っていった。蘭子が聞く。
「ねえねえ、はるかは誰か好きな人はいるの?」
そう言われても、私には特に好きな男の子は誰一人いなかった。
大嫌いな男の子が二人ほどいるだけだ。
「そんなのいないわよ」
正直に言ったが、蘭子はどうにも納得していないようだ。
このままでは話がただ平行線に進むだけなので、話題の矛先を変えるために、私は蘭子に聞いた。
「私なんかより、蘭子のほうこそ、誰か好きな人はいるの?」
蘭子はわかりやすく驚いた顔で私を見たが、そのうちに下を向いてもじもじと恥らいながらも言った。
「芽瑠瀬出素君」
同じクラスの芽瑠瀬出素は、恐ろしいことにそのままメルセデスと読む。
もちろん先祖代々由緒正しい日本人だ。
なんでも父親が車好き、特にベンツ好きということで、息子に田舎の暴走族でも恥ずかしがるような当て字まみれの名前をつけたのだそうだ。
母親もそれにもろ手を挙げて賛成したと聞いた。
後片付けは一年生の仕事だ。
他の学校の事は知らないが、ここのバスケット部では昔からそういうしきたりとなっている。
ただ今年は例年になく一年生の数が少ないうえに、一人が風邪で学校を休んでいるために、残っているのは私と蘭子の二人だけだ。
二人で全ての作業をこなすのは、激しい練習の後では結構きついが、仕方がない。
とはいえ、年頃の女子高生が二人いて、何も語らずに黙々とただ身体をうごかすだけなんて、ありえない。
最初は先生の悪口から始まり、いつしか定番の恋話に移っていった。蘭子が聞く。
「ねえねえ、はるかは誰か好きな人はいるの?」
そう言われても、私には特に好きな男の子は誰一人いなかった。
大嫌いな男の子が二人ほどいるだけだ。
「そんなのいないわよ」
正直に言ったが、蘭子はどうにも納得していないようだ。
このままでは話がただ平行線に進むだけなので、話題の矛先を変えるために、私は蘭子に聞いた。
「私なんかより、蘭子のほうこそ、誰か好きな人はいるの?」
蘭子はわかりやすく驚いた顔で私を見たが、そのうちに下を向いてもじもじと恥らいながらも言った。
「芽瑠瀬出素君」
同じクラスの芽瑠瀬出素は、恐ろしいことにそのままメルセデスと読む。
もちろん先祖代々由緒正しい日本人だ。
なんでも父親が車好き、特にベンツ好きということで、息子に田舎の暴走族でも恥ずかしがるような当て字まみれの名前をつけたのだそうだ。
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