11 / 22
11
しおりを挟む
しばらくそいつと篠田は見つめあった状態になっていた。
が、突然そいつがものすごい勢いで上に飛んだように見えた後、そいつの姿は消えた。
そこで篠田はようやく我に返った。
慌てて自分の部屋に入ったが、気づけば外が騒がしくなっている。
頭の中は今見たやつのことでいっぱいだったが、やがて外の様子も気になってきた。
それでも外を見れずにいると、しばらくすると救急車、それにパトカーもやって来た。
最近このマンションでは連続して見かける光景だ。
――まさか!
そのまさかだった。
隣の部屋の桜井あんりが飛び降りたというのを篠田が知るまで、それほど時間はかからなかった。
篠田は隣の部屋と言うことで警察にも話を聞かれたし、人の心情よりも自分の好奇心が勝る人にも話を聞かれた。
だが誰に対しても、あのときに見たキメラのような女の話はしなかった。
そんな話を警察や近所の人にしたならば、後々とんでもないことになることを、篠田は十分すぎるくらいにわかっていたのだ。
篠田にはそれくらいの分別はあった。
大場さやが自分の部屋に帰ろうとしたとき、前方に女が立っているのが見えた。
――あの女だ!
何度となくマンションの入り口でマンンションをにらみつけているあの女がそこにいた。
そして誰に対しても徹底的に無視するのに、大場だけは二度会って二度とも大場をじっと見つめていた女。
その女が今目の前で大場を凝視しているのだ。
――どうしよう。
大場は考えた。
しかしこのまま逃げるというのも、あまりいいとは思えない。
おまけに女は大場の玄関よりもさらに奥に立っている。
女がそこから動かなければ、大場は何事もなく自分の部屋に入ることができる。
あの女がなぜこんなにも大場を見ているのかはわからないが、それは今後むこうの出方を見て考えよう。
大場はそう思った、
大場はそのまま自分の部屋に入った。
入ってしまえば女の姿は大場からは見えない。
大場はそのままテレビを見たりして時間をつぶした。
そして玄関から廊下に出てみた。
次に左右を確認したが、あの女はどこにもいなかった。
不安はまだ残るが、大場はそのまま自分の部屋に戻った。
今はそうするしかないと思った。
――そうか、あの女は大場さやというのか。
本部は調べて大場の名を知った。
もともと死んだ岡田たまきが住んでいた部屋に越してきた若い女で、マンション中の有名人になっているので調べるのにそう苦労はかからなかった。
――もっと視てみないとな。
本部はさっそく、大場の部屋に通ずる廊下で待つことにした。
待っていると、予想していた時間に大場が帰ってきた。
そして本部に気がついた。
あきらかに警戒をしている。
大場の中では本部はもともと不気味な存在なのに、このまるで待ち伏せのような行為だ。
警戒されないほうがおかしい。
しかし本部は視る必要があった。
大場の霊的な波動を。そしてその先のそのまた先を。
大場がそのまま部屋に入るのなら、視ていられる時間はそう長くない。
実際に大場は少し戸惑ったものの、そのまま自分の部屋に入ったのだから。
本部は全身全霊で大場を視た。
そして完全とは言えないが、視えてきたものがあった。
――よし、ある程度は視えたな。そうなると、あとは一人。
調べるまでもない。
全国ニュースにさえこの男は取り上げられていた。
そしてマンション中の有名人。
桜井健一。
死んだ桜井あんりの実の兄だ。
この男も視なければならない。
糸は一本よりも二本の方が断然いい。
本部はそう思い、決心し、実行した。
桜井が帰宅すると、部屋に通じる廊下にあの女が立っていた。
いつもマンションを睨みつけている女。
そろそろ不審者として通報されそうな女が。
しかも誰にも反応しないと聞いていたその女が、今までとは違って桜井のことを真っ直ぐな鋭い眼光で見ているのだ。
――なんなんだいったい。
女は桜井の部屋よりはむこう側にいる。
だから女に接することなく自分の部屋に入ろうと思えば可能なのだが。
だからと言っていつもどおりになにも気にすることなく自分の部屋まで帰れるわけではない。
桜井は変な緊張感を保ったまま女を見ながら部屋の前まで来た。
そして女がこっちに来ないことを確認してから部屋に入った。
入った後もあの女が呼び鈴を鳴らすのではないか、もしそうならどう対応すればよいのかと考えて、自分の部屋なのに気が休まらなかったが、誰も呼び鈴を鳴らすことはなかった。
――まったくどうかしてしまいそうだ。
が、突然そいつがものすごい勢いで上に飛んだように見えた後、そいつの姿は消えた。
そこで篠田はようやく我に返った。
慌てて自分の部屋に入ったが、気づけば外が騒がしくなっている。
頭の中は今見たやつのことでいっぱいだったが、やがて外の様子も気になってきた。
それでも外を見れずにいると、しばらくすると救急車、それにパトカーもやって来た。
最近このマンションでは連続して見かける光景だ。
――まさか!
そのまさかだった。
隣の部屋の桜井あんりが飛び降りたというのを篠田が知るまで、それほど時間はかからなかった。
篠田は隣の部屋と言うことで警察にも話を聞かれたし、人の心情よりも自分の好奇心が勝る人にも話を聞かれた。
だが誰に対しても、あのときに見たキメラのような女の話はしなかった。
そんな話を警察や近所の人にしたならば、後々とんでもないことになることを、篠田は十分すぎるくらいにわかっていたのだ。
篠田にはそれくらいの分別はあった。
大場さやが自分の部屋に帰ろうとしたとき、前方に女が立っているのが見えた。
――あの女だ!
何度となくマンションの入り口でマンンションをにらみつけているあの女がそこにいた。
そして誰に対しても徹底的に無視するのに、大場だけは二度会って二度とも大場をじっと見つめていた女。
その女が今目の前で大場を凝視しているのだ。
――どうしよう。
大場は考えた。
しかしこのまま逃げるというのも、あまりいいとは思えない。
おまけに女は大場の玄関よりもさらに奥に立っている。
女がそこから動かなければ、大場は何事もなく自分の部屋に入ることができる。
あの女がなぜこんなにも大場を見ているのかはわからないが、それは今後むこうの出方を見て考えよう。
大場はそう思った、
大場はそのまま自分の部屋に入った。
入ってしまえば女の姿は大場からは見えない。
大場はそのままテレビを見たりして時間をつぶした。
そして玄関から廊下に出てみた。
次に左右を確認したが、あの女はどこにもいなかった。
不安はまだ残るが、大場はそのまま自分の部屋に戻った。
今はそうするしかないと思った。
――そうか、あの女は大場さやというのか。
本部は調べて大場の名を知った。
もともと死んだ岡田たまきが住んでいた部屋に越してきた若い女で、マンション中の有名人になっているので調べるのにそう苦労はかからなかった。
――もっと視てみないとな。
本部はさっそく、大場の部屋に通ずる廊下で待つことにした。
待っていると、予想していた時間に大場が帰ってきた。
そして本部に気がついた。
あきらかに警戒をしている。
大場の中では本部はもともと不気味な存在なのに、このまるで待ち伏せのような行為だ。
警戒されないほうがおかしい。
しかし本部は視る必要があった。
大場の霊的な波動を。そしてその先のそのまた先を。
大場がそのまま部屋に入るのなら、視ていられる時間はそう長くない。
実際に大場は少し戸惑ったものの、そのまま自分の部屋に入ったのだから。
本部は全身全霊で大場を視た。
そして完全とは言えないが、視えてきたものがあった。
――よし、ある程度は視えたな。そうなると、あとは一人。
調べるまでもない。
全国ニュースにさえこの男は取り上げられていた。
そしてマンション中の有名人。
桜井健一。
死んだ桜井あんりの実の兄だ。
この男も視なければならない。
糸は一本よりも二本の方が断然いい。
本部はそう思い、決心し、実行した。
桜井が帰宅すると、部屋に通じる廊下にあの女が立っていた。
いつもマンションを睨みつけている女。
そろそろ不審者として通報されそうな女が。
しかも誰にも反応しないと聞いていたその女が、今までとは違って桜井のことを真っ直ぐな鋭い眼光で見ているのだ。
――なんなんだいったい。
女は桜井の部屋よりはむこう側にいる。
だから女に接することなく自分の部屋に入ろうと思えば可能なのだが。
だからと言っていつもどおりになにも気にすることなく自分の部屋まで帰れるわけではない。
桜井は変な緊張感を保ったまま女を見ながら部屋の前まで来た。
そして女がこっちに来ないことを確認してから部屋に入った。
入った後もあの女が呼び鈴を鳴らすのではないか、もしそうならどう対応すればよいのかと考えて、自分の部屋なのに気が休まらなかったが、誰も呼び鈴を鳴らすことはなかった。
――まったくどうかしてしまいそうだ。
0
あなたにおすすめの小説
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/26:『はつゆめ』の章を追加。2026/1/2の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【1分読書】意味が分かると怖いおとぎばなし
響ぴあの
ホラー
【1分読書】
意味が分かるとこわいおとぎ話。
意外な事実や知らなかった裏話。
浦島太郎は神になった。桃太郎の闇。本当に怖いかちかち山。かぐや姫は宇宙人。白雪姫の王子の誤算。舌切りすずめは三角関係の話。早く人間になりたい人魚姫。本当は怖い眠り姫、シンデレラ、さるかに合戦、はなさかじいさん、犬の呪いなどなど面白い雑学と創作短編をお楽しみください。
どこから読んでも大丈夫です。1話完結ショートショート。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)
本野汐梨 Honno Siori
ホラー
あなたの身近にも訪れるかもしれない恐怖を集めました。
全て一話完結ですのでどこから読んでもらっても構いません。
短くて詳しい概要がよくわからないと思われるかもしれません。しかし、その分、なぜ本文の様な恐怖の事象が起こったのか、あなた自身で考えてみてください。
たくさんの短いお話の中から、是非お気に入りの恐怖を見つけてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる