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ゲーム:前日譚
20:遺産
しおりを挟む継母と継父がなかなか満足しないのと、心地よいゆらゆらとした動きに、私は早々と眠りに落ちてしまった。継父に頬をぺちぺちと叩かれて目が覚めた時には、既に夜が明けていた。
継母はやはり眠ったままの義兄を抱えて寝室へ行き、下半身がむき出しのままの私は継父に立たされて納戸へと連れて行かれた。
「開けろ。」
納戸の奥にある宝箱のような錠前の付いた大きく頑丈な木箱の前に私を放り出した継父は、私に命令した。
なるほど。この宝箱に、私に遺された財産が保管されているのだろう。
この木箱の錠前は、私(か、恐らくはお父さんかお母さん)の魔力を注がなければ開ける事ができない、特別の魔道具のようだ。もとより鍵穴が見当たらない。
さて、どうしようか。
今後の事を考えると、魔物である継父と義兄は討伐しておきたいところなのだが、私にはまだ二人を討伐できるほどの魔法の腕はない。そうかと言って、お父さんが私に遺してくれた財産をみすみす取り上げられてしまうというのもなんだか癪だ。
隷属の儀式は失敗しているのだから、継父の言う事を無視するというのもありだが、そうなると成功するまで何度も儀式を繰り返したり、継父が私を直接犯す事も考えられる(ぶるっ)。儀式が失敗していると悟られると却って身の危険が増す。
前日譚では、次の儀式が行われる時にユリナスが来る事になっている。それまで辛抱するしかないか。無い袖は振れぬ。
「…うん。今開けるね。」
私は宝箱に近寄り、縛られている手で錠前に触れ、魔力を少し流し込んだ。
ぱちんという軽快な音とともに、錠前が外れ、床にごとりと落ちた。…良かった、砕け散って二度と使えなくなるとかじゃなくって。
錠前が外れると、継父が駆け寄って来て私を乱暴に押し退き、宝箱の蓋をゆっくりと開け始めた。私は体を起こし、横から宝箱の中を覗き込んだ。
宝箱の中には、確かに多少の財産が入っていた。箱の底に、百数十枚、様々な金種の硬貨がまばらにちらばり、納戸のドアの隙間から細く指し込む朝日の光線にきらきらと輝いた。
決して少なくはないが多いとも言い難い財産だ。私はお父さんの心遣いに嬉しさが込み上げたが、継父が期待していたほどのものではなかったようだ。顔面に不満の色を浮かべて私の方を睨み付け、木箱を乱暴に閉めると、空の布袋を私の前に投げ落とし、「金を入れておけ」と私に命じて、納戸から出ていった。…おい、縄を解いてくくらいしろ。
私は、一応言われた通りにするため、縛られた両手で木箱の重い蓋を持ち上げて、箱の向こう側へ思い切り倒した。そして、箱の中に体が半分入るような体勢で硬貨を集め、袋に一つ残らず詰め込んだ。
両手が縛られているせいか、作業に思いの外時間がかかってしまった。硬貨が詰まった袋を継父に渡そうと納戸から出たが、家には継父はおらず、どうやら出掛けているらしかった。村の見回りにでも行ったのかしら。
宝箱を元通り施錠しておこうと思い、私は納戸に戻った。そして、箱の蓋を持ち上げようと蓋に手をかける時、蓋の裏側が二重になっているのか、目隠しの嵌め板が外れているのを発見した。どうやら、蓋を勢いよく倒して開けた時に、衝撃で外れたのだろう。
お父さん…やるじゃん。
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