転生双子姉妹は溺愛弟のために本業は休業中（仮）

序

プロローグ：転生と胎内

　俺は胎児に転生した。

　何週目なのかわからないが、まだ人の形はしていない。もっとも今後人の形をとるかどうかもわからないが。

　胎内には俺一人ではなかった。あと二人分の胎児がいた。

　三つ子だ。

　もともと多胎児出産の種族なのか、はたまたただの偶然か。

　何かヒントはないかと、俺は二人をじっくりと観察した。

「そんなにじろじろ見ないでよね、変態。」

　急に頭の中に声が聞こえてきた。

　テレパシーって奴か？一体誰から？

「私よ、今あんたの目の前にいるでしょ？」

　目の前？

　って事はこの二人の胎児のどっちかか。

　胎児なのに、俺に話しかけたのか！？

「私達もあなたと同様に転生したのです。」

　さっきとは違う声が頭の中に響いてきた。

　…今、「私達」って言ったか？

「ええ、私達は前世で死ぬとこうして胎児に転生するのです。」

「もう何百回と繰り返しね。」

「でも一緒に転生して双子になるのは初めてです。」

　あの、あなた達はお知り合い同士なので？

「そうよ。何を隠そう私は魔王よ。」

「そして私は聖女とか勇者とか呼ばれてました。」

「どう？恐れ入った？」

　魔王？聖女？なにそれ。

「え、私らを知らないの！？」

　魔王だの勇者だの聖女だの、そんなの小説とか童話とか、最近なら転生もののラノベとかの中の話でしょ。

「なんという事でしょう。魔王さん、こちらの方は異世界からの転生者のようですわ。」

「なんだ、つまんない。」

　まあなんでもいいや。

　俺らは三つ子。兄弟姉妹、仲良くしましょう。

「何が三つ子だ。私らは紛れもなく一卵性の双生児。だけどお前は違うし。」

　え、そうなの？

「それに私達は女性で、あなたは男性のようです。」

「…さっきいやらしい目で見てただろ。不敬だな。罰としてこの場で消してやる。」

　胎児なのに魔法が使えるとかなんかすごいな。

　いやでもまあ、別にこの生に未練もないし、消したきゃ消してくれても構わないんだけど。

「お待ちなさい、殺生はいけません、魔王さん。」

　直情径行な魔王に比べて、聖女は慈悲深いなあ。

「消えてなくなってそれでおしまいでは罰が軽すぎます。生きて、しっかり反省してもらいましょう。」

　慈悲深いんじゃなくて、根に持つタイプだった！

「なるほど！じゃぁ、魔法でこいつの成長を数年止めてやろう。んで、私らが先に産まれて、後から産まれたこいつを下僕のようにこきつかうってのはどうだ。」

「あらそれ素敵です魔王さん。」

　…およそ聖女と呼ばれる人の発する言葉じゃないよ！