地方公務員のおっさん、異世界へ出張する?

白眉

文字の大きさ
6 / 318
第一章

1-5 情報収集と生きる術

しおりを挟む
 残りの3匹は、どうやら4人で倒せたようだ。
俺は安堵する。

「助太刀、感謝する。」
4人のうちの一人が俺と会話することとなったようだ。

「俺たちは、“ヤハネの光”っていう冒険者パーティーだ。」
「自分はニノマエ ハジメと言います。」
「見たところ、すごい魔法使いですね。しかし、魔法使いの出で立ちではないように見受けられます。」
「バーン、人は見かけじゃないんですよ。」
 
 若い女性が男をたしなめる。
男性2名、女性2名、男性はタンクがブライオン、剣がバーン、女性の方は魔法使いがベアトリーチェでヒーラーがエミネと名乗った。
 聞けば、彼らは近くの街をホームタウンとしている“ヤハネの光”というDランクの冒険者グループ。
皆、ヤハネ村で育った幼馴染で、一緒に活動しているようだ。

今回は、街の依頼で森に巣食うゴブリン(緑の奴)20匹を討伐しに来たが、ゴブリンではなくオーク(白い奴)に出会い襲われていたところを俺が助けに来たとの事。
 ゴブリンであればDランクの冒険者で討伐は可能であるが、オークはCランク冒険者でないと倒せない、さらに複数体集まれば、討伐するのも困難らしい。

「もう少し私のレベルが高ければ、仲間に治癒の魔法をかけ優位に戦闘も進めることができたのですが、マナが枯渇してしまいどうしようもなくなってしまいました…。」

ヒーラ―役のエミネが恐縮しながら話す。戦闘中のマナ枯渇はメンバー全員の死を意味するようだ。
確かに後方からの援護射撃や側面支援が無ければ、戦争も優位に進めることはできない。ただがむしゃらに前に突っ込むだけでは、例え勝ったとしても甚大な被害を受ける。
マナは休めばある程度回復はする。それはさっき調子に乗って創造魔法をバンバン使っていた経験から言える。多分一晩寝ればほとんど回復するんだろう。

そうは言っても、エミネはまだ青い顔をしている。
まだ、マナが十分に回復していないんだろう。
残りの3人、特にブライオンの傷がひどい。頭から血を流すだけでなく、盾を持つ反対側の腕にも血が付いている。おそらく腕のどこかに傷があるのだろう。

「なぁ、差し出がましい事かもしれないが、治癒魔法をかけようか。」

4人はキョトンとしている。

「ん?自分、何か変な事言ったか?」
「いや、さっきの魔法を見て、ニノマエさんだっけ?あんたは魔法使いだと思っていた。」
「魔法使いは治癒魔法を使えないのか?」
「ここにいるベアトリーチェは魔法使いだが治癒魔法が使えない。エミネは治癒魔法は使えるがベアのような攻撃魔法は使えない。」
「ということは、魔法にも攻撃魔法と治癒魔法が棲み分けされているという事か?」
「まぁ、俺は詳しくは分からんが、出来るのであれば是非お願いしたい。」

頬をボリボリとかきながらバーンは言う。

「了解。」

俺はそう言うと、先ずは一番傷が酷いブライアンを治療する。

「スーパーヒール!」

掛け声は別にかけなくても良いのだが、何というか、雰囲気だよ。雰囲気。

 治癒魔法をかけると、彼のまわりを淡い光が包み消えていく。
それとともに、彼の身体から傷が消えていった。
次に、バーン、そしてベアトリーチェ、念のためにエミネの順にかけていく。
「おお…。傷が治った。感謝する。」
皆から感謝された。

エミネとベアトリーチェが目を輝かせて俺に近づく。

「あの、ニノマエさん、あなたの魔法って一体何なのでしょうか?」

何かおかしなことをしたのだろうか…。俺の生い立ちを話しても信じてもらえそうもないし、煙に巻く説明も思い浮かばない。

「なぁ、そんな事より、先ずは倒した奴を処理した方がいいんじゃないか?」

バーンが助け舟を出してくれたよ。
俺は、処理という言葉の意味が分からないまま「そうですね。」と知ったような顔で言う。

 彼ら(とは言っても、主にバーンとブライアンなのだが)は、早速白い奴に近づき持っていたナイフで胸元を抉る。抉った肉の中に手を突っ込み、何やらごそごそと探している。
その間、俺は茫然と立ち尽くしている。
「あった。」
と声を上げ、べっとりと血が付いた手の中にある石ころのようなものを俺に見せてくれた。

「これは、魔石。後は、こいつらの死体から肉をはぎ取れば…」

バイオレンスとスプラッタ劇が続く中で、俺はいつの間にか嘔吐していた。

「ニノマエさんは、こういう作業は慣れていないんですね。」

バーンは笑いながら話し続ける。

「地上に居る魔獣や魔物はこうして剥ぎ取りしなければ、素材が集まりませんから。まぁ、ギルドにそのまま死体を持って行っても、そこで処理はしてもらえるんですが、手数料取られて実入りが少なくなります。それに死体ごと持って行くのは一苦労ですから。
でも、ダンジョンに出てくる奴は、何故か剥ぎ取りしなくても素材だけがドロップするんですよね。不思議ですよね。」

なんて、ひょうひょうと作業を進めている。

「あ、ニノマエさんが倒した奴らも、処理しておきますね。」
「あぁ、よろしくお願いします。」

なんて親切なんだ。俺はスプラッタは無理だわ…ましてや死体に手を入れてゴソゴソ…剥ぎ取りなんてできんよ。

しばらく茫然と見ていたが、作業が終わったらしい。

「んじゃ、このまま燃やしちゃいますね。」

 あ、燃やせばいいんだ…。と同時に俺はさっき鞄の中に入れた緑の奴を思い出した。

「すみませんが、もう4体お願いしたいのですが…。」
「え、4体? どこにあるんですか?」
「いえ、ここにあります。」

 と言って、俺はビジネスバッグの中から、次々と緑の奴を出していった。

「ゴブリンですか。一人で4体ですか。すごいっすね。」
「いや、それよりもその鞄だよ…。それってもしかしてアイテムボックス付き?」

ん?俺が作った収納魔法ですが? それをこの世界ではアイテムボックスって言うんですね。
返答に困ったが嘘は付けないので、正直にアイテムボックスであると伝える。

「ニノマエさんって、すごいお金持ちなんすね。アイテムボックス持ちの冒険者なんてBランクかそれ以上しか持っていませんよ。」

 そんなもんなんだ…。
バーンはてきぱきとゴブリン4体を処理している。
ここで、俺アイテムボックス作る魔法かけれるよー、なんて言うもんなら、ヒーロー扱いされる…。
それだけは避けなければ…。

そんな事を考えているうちに処理が終わったようだ。
「はい。これはニノマエさんが倒した分です。」

俺の前には、魔石が6つと肉の塊、牙、こん棒のようなものが置いてある。
これをどうしろって言うんだ?

「これを…?」

 言葉に詰まり、途方に暮れていたら、今度はベアトリーチェさんが助け舟を出してくれた。

「この素材を冒険者ギルドなどで売ればいいんです。」

お、収入源確保!
ようやく生きていくための収入源を見つけた。でも冒険者ギルドとは?

「冒険者ギルドってのは、こんなおっさんでも入ることができるのかい?」
「誰でも加入はできます。けど、ニノマエさん、あんなに強いのに冒険者ギルドに加入していなかったってことですか?」

あ、ヤバい。俺の生い立ちどうしようか考えていなかった。

「多分、ニノマエさんは遠くの国から来られたんでしょう。」
「でも、ギルドはこの大陸では共通ですよ。」
「そうは言っても、この年齢で加入していないって事は、未開の地から?」

俺のことで何やら揉めている…。やめて!おっさん、この場から逃げたい…。

「すみません。自分が住んでいた村には、ここ何十年誰も外から来ないような辺鄙な村だったんです。なので、ギルドとか世間一般の常識には疎くて…。」

「だから不思議な雰囲気がするんですね。」
「さっき、処理してた時もゲロってたから、ニノマエさんの住んでいた所はダンジョンメインの生活だったんだな。」

何故かみんな納得してくれたようだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

処理中です...