地方公務員のおっさん、異世界へ出張する?

白眉

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第六章

6-18 脆さゆえの葛藤

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 完全にスベッた俺は、もう一度静かに湯船に入りイジケてみせる。

「ふふ、カズ様は本当に弱くて脆い方です。
 そんなカズ様をお助けできるのは、私達ですよ。」
「恥ずかしいけど、それは本当の事だから何も言えないよね…。
「そんなカズ様を私達は愛おしく感じているのです。
 末永くお願いしますね。」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。」

「はい、言質取りましたよ。ベリル、スピネル、良かったですね。」
「はい(はい)。」

 ん?これ、完全にディートリヒに嵌められた?

「ディーさん、もしかして嵌めた?」
「はい。すみません。でも、カズ様はおそらくこういった事をしなければ何も動かれないことは分かっておりましたので。」
「で、ディートリヒもナズナも、君たちから見て彼女たちはどうなの?」

「お館様、私から説明させていただきます。
 ベリルさんはダンジョン探索で前衛として動いてもらいます。
 それは盾役ではなく、切込み役といったところでしょうか。
ですので、装備はもう少し強いものが必要だと思います。さらに切込みということは盾でシールド・バッシュで魔物を飛ばすよりも、より広範囲に倒すことができるよう、私のような双剣もしくは、双斧というスタンスが良いと思います。盾は背中に背負っていくと良いと思います。」

 ほう…。双斧という戦闘もあるんだ…。
ただ、それだと近接は変わらないよね。突っ込むことで相手が飛び散るような爆裂技が必要だという事か…。そうするとサムライか…。ナズナさん、しっかりと分析しているね。

「そしてスピネルさんは、お館様が仰るように、鑑定のスキルを伸ばし分析できるようになれば戦略を組み立てるようになれると思います。ただ、それだけだと自分を守ることができないので、お館様から結界と治癒を学んでいただきます。弓と治癒、後衛職としての役割を担っていただくのが良いかと思います。」

ふむ。分析と戦略ができれば、俺がダンジョンに入らなくても…と思うが、範囲攻撃が出来ないのが欠点だな…。そうすると、スピネルは攻撃も治癒もできるようなビショップのようなものになるのか…。

「ごめん。これ以上入ってると、俺のぼせちゃうからいったん出るね。
 それと、少し考え事があるから、皆今日はゆっくり寝てね。」

 俺は一気にお風呂を出て、バスタオルで身体を拭き、急いで寝室に戻りデスクに座る。
そして、今の彼女たちの職がどういった感じで進めていくのが良いかを書いていく。

 先ずはディートリヒ。
彼女は騎士だと言っていたが騎士のスキルもなかった。
戦闘は剣撃を飛ばし、相手を倒すのがスタイルとなれば、魔剣士かセイバーか…。
そうすると、剣を修練するための師匠が必要だよな…。魔剣士やセイバーであれば剣撃を増やすこともできるか…。
因みに俺は剣道2段であるが、剣撃は出せない…と思う。
まぁ、30年以上剣を振ったことがないので何も言えないが、この世界では創造魔法があるから、一度試してみよう。もし、何か教えることがあれば、ディートリヒに教えていくといったところか。

 次はナズナ。
斥候と俺は言っているが、ジョブとしては盗賊、スカウトか。
最終的には何になるんだ?忍者か?アサシンか?
そうすると一撃必殺に命をかけるというような形だから、ベリルとかが持っている認識阻害なども持っていると良いよな。
それにファンタジーでよくあるピョンピョン飛べる技…、あれはこの世界であるのかな?あぁ、何とか言ったよな…。そういった修練も必要になるんだよな。

 次にベリル。
彼女はサムライがベストだが、力の強い竜人族が力の抜き具合が分かるんだろうか。
イメージは叩き割るとか、ぶっ刺すといった感じだけど…。
あ、いかん。先入観にとらわれてはいけないんだっけ。
今度戻ったら居合刀持ってこよう。それで何とかなるかもしれないな。

 最後にスピネル。
彼女はビショップ一色だな。
ただ、俺の魔法を付与できるだけのマナを持っているかだが、見た感じマナは多く持っていると感じている。

 うん。大体の職と動きが分かって来た。
とすれば、先ずはみんなのマナの動きをどれくらい動かせるかだ。
よし! それじゃこれからのスケジュールを立てよう。

 ベリルとスピネルの武具を再考する。
ベリルはディートリヒと同じような革製の鎧に金属プレート、動きやすいスレンダータイプが良いか。
武器は、二刀とするけど、できれば長刀と短刀が良いかな。
スピネルは武具よりも外套でカバー、俺と同じだ。
武器はロッドか…、あ、レルネさんに頼んでみるのも良いか。
ただ竜人族だから、ロッドよりもメイスが良いかもしれないし、フレイルってのもあるよな。
フレイルを持っている竜人族か…めっさ怖いな…。

 この4人で結構いけるんじゃないかね?
もしかすると、あのダンジョンの制覇も夢ではないかもしれない。
え、もしかして、俺必要無い?
いかんよ…、俺も魔銃や魔法だけに特化するのではなく、近接が紙を何とかしなくてはいけない…。
このおっさん体型も何とかしなくちゃいけないな…。
よし!ダイエットだ。
明日から筋力アップとランニングをするぞ!
あ、でも俺、朝弱いんだよな…。
あぁ、気弱になっている…。俺はやっぱ弱いなぁ…。こういう時には何をすべきなんだ?
うーん……。

 コンコンとノックの音がしているのに気づく。

「あ、ごめん。どうぞ、入って。」
「カズ様、すみません。よろしいでしょうか。」
「あぁ、ディートリヒか、良いよ。」
「今日は、いろいろと画策してしまい、すみませんでした。」
「ディートリヒから見て、彼女たちはお眼鏡にかなったという事だろ。それでいいんじゃないか。」
「そこなんですよ、カズ様。」

 彼女はズカズカと机の前に来る。

「カズ様は自分の気持ちに正直になられるのを恐れています。
 カズ様はカズ様で良いのですよ。」
「でもな…、みんな自分の姿を見てよ。みんな綺麗で美しいよ。でも俺は52歳のおっさんで体力もなく皆よりも見すぼらしい姿なんだよ。それなのに、何故俺にみんな寄ってくるんだい?」
「カズ様…。やはり脆くなっていますね…。
 カズ様はカズ様なのに…。
 良いですかカズ様、あなたは新しい女性が来ると必ず脆くなります。
 そこも分かっての事です。
 そう言ったところもすべて含めて、カズ様はカズ様なのです。
 ご自身が見すぼらしいですって!そんな事仰らないでください。
 カズ様は、私の愛した人です。ナズナもベリルもスピネルも同じです。
 じっくりと愛を育むことも大切です。ですが、一目ぼれという事も大切なのです。
 彼女たちはそれを運命と呼んでいます。
 あの日、あの場所で遭遇した事、命を助けた事、それが運命なんですよ。」

 ディートリヒが、俺の座っている後ろに来て、俺を抱きしめる。
柔らかな胸が俺の後頭部に当たる。
 とても心地よい。

「ディートリヒ、俺は脆いね…。
ディートリヒだけを愛していたいと思いながらも、ナズナやベリル、スピネルも愛していきたいと思う俺もいる。でも、不安なんだ…。
 これ以上多くなったら、ディートリヒにも皆にも迷惑をかけることになると思うと…。」
「カズ様?私達に何を迷惑をかけるのですか?」
「それは、愛する回数が減るというか…、一緒にいる時間が減るというか…。」
「カズ様、そんな事は愛している事に何の問題もないのですよ。
 カズ様も、シーラさんと一緒ですよ。
 私たちはモノではございません。それにカズ様を独占したいという気持ちはありますが、それは不可能だと悟っております。それに平等に愛してほしいという事もございません。
 私たちは私達です。皆で愛し合っても良いですし、一人を愛していただいても良いです。
 それに偏ったことになっても仕方がございません。
 それにより私たちに歪が生まれることもありません。」

「それが苦痛なんだ…。」
「カズ様…。」

「皆を苦しませてしまう事、悲しませてしまう事、それが怖いんだ…。」
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