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第八章
8-8 メリアドール様
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「ふふ、カズさんは正直ですね。いきなり手が硬直しましたよ。」
自然な振りをして手を離そうとするも、メリアドールさんが手を握ってきた。
「こうしていると落ち着きます。」
「それは俺じゃなく、ヴォルテスさんとかで…。」
「子供に手を握ってもらう事って、なんか死ぬ時のような気がします。」
「はは、そうかもしれませんね。
状態も安定していますよ。再生魔法は気分が悪くなることもありますから、気になったことがあれば何でも言ってください。」
「では、胸が苦しいです。」
「え!胸ですか?
左胸でしょうか?それとも脇ですか?」
「ほんとに可愛いお方ですね。
齢は50でしたか?でも瞳と心は少年のようなお方です。」
「は? へ?」
「胸が苦しいのは、カズさんとこうして居ることができるからなんですよ。」
「ん?」
「好きな方と一緒に居られること、好きな方に手を握っていただけること、それだけで胸が苦しくなってきます。」
「はぁ…、そういうものでしょうか。」
「そういうものです。」
でもね、メリアドールさん、それは空の巣症候群を脱却するための代替、つまり置換だから。
「今、メリアドールさんは情緒が揺れているんですよ。
先ほどもお話ししましたが、子どもが成長した事により達成感よりも虚無感の方が大きくなってしまったんです。
それに、お孫さんが生まれれば、そちらに目が向きますよ。
今は一種の気の迷いです。」
「そうかもしれませんね。
でも、カズさん、女性からこんな事を言われるとどうですか?」
「あ、そう言えば、ディートリヒもナズナ、ベリルもスピネルも、そんな事を言ってきました。」
「そうなんですね。で、カズさんはそれに応えたと。」
「そうです。皆で助け合って生きて行こうと思っています。」
「その中に私はおりませんか?」
「あの…、メリアドールさんは貴族で王族の血を引いているんですよ。
そんな人が国のことも知らない“渡り人”についてきても何の得にもならないと思いますが。
それに貴族って、いけ好かないんです。」
「カズさんは正直ですね。
でも、私の役目はもう終わったのです。ヴォルテスとソフィアを産み、これで王家の血を残すことができました。そして、後はこの館に押し込まれたまま、齢をとっていくだけです。
同じ事を何度も言うようですが、そんな生活には我慢できません。」
「でも、俺は貴族なんてイヤですよ。」
「私が身分を離れれば良いだけですよ。」
「は?身分を離れるという事は王族ではなくなるという事ですけど…、それでいいんですか?」
「はい。」
「ダメです。」
「何故ですか。」
「スティナ様、ソフィア様が不安になります。皇族であるが故、上位の方が居なくなれば、その仕事などはスティナ様とソフィア様にかかってくるんですよ。
メリアドールさんが今まで行っていた仕事を放置して娘さん方に押し付けるなんて、メリアドールさんには出来ないと思います。
それと、そういった話はお一人で決めるものではありません。
しっかりとご家族とお話ししなくてはいけませんよ。」
「堂々巡りなんですね。」
「いえ、すべてはご家族と話し合えば良いという事です。」
「やはり、カズさんは情熱的な部分は外にお出しにならないのですね。」
「はは、それは分かりませんよ。
さぁ、もう休んでください。休んでいただけないと明日の面会もできなくなりますよ。」
「そうですね。必ず面会を実現できるように体力を付けないと、今後の話にも繋がりませんものね。
あ、ひとつお願いがあります。
私が頑張れるよう、何かおまじないをして欲しいのですが…。」
「頑張らなくても良いですよ。そこは踏ん張ってくださいね。
では、おまじないを…。ムニャムニャ…。『光の加護』」
メリアドールさんがほのかに輝く。
「カズさん、これは何でしょうか。」
「ははは、俺にも分からないです。ただ、メリアドールさんのオーラが輝くくらいですかね。」
「それですと、聖女になってしまいますね。
あ、でも聖女は生娘しかなれませんから私は何でしょうか?」
「何でしょうね。神の加護を受け病気を克服したって事ではないですかね?」
「そうなってしまうと、私の夢がどんどん遠のいていきますので、神の加護はやめましょう。
そうですね…、身体中からマナが溢れてしまうということにいたしましょうか。」
「ははは、それも良いかもしれませんね。
さぁ、もうお休みになってください。」
「もう、ほんとにつれないんですね。こういった時は、男性は女性に何かお渡ししていただけるものですよ。」
「あ、そうなんですね。
うーん…。では、これを渡しておきますね。」
俺はスポーツブラセットを出した。
「これは下着ですか?」
「下着の種類の一つだと思ってください。
売り出すものとは違いますが、これは胸をホールドするものです。
もし、スティナ様、ソフィア様やメイドさんが興味を示されても、まだ売り出していないものなので、お渡しすることができませんので…。」
「それは、肌身に付けるものという事ですね。」
「まぁ、そうなります。」
「では、つけてください。」
「あの…、そうなるとメリアドールさんの裸を見てしまうことになりますよ。」
「構いません。」
「俺は構います。」
「つれないですね。」
「こんなところで噂になったら、これから売り出すものにも影響がありますからね。
では、これ以外で何か探しま…」
「いえ、これで構いません。寧ろカズさんと一緒に居れると思うと…ゴニョゴニョ…。」
いかん。スルーしておこう。
「これは伸びる素材で作っていますが、作り方は俺しか知らないとしてくださいね。
付け方は簡単ですので。」
「分かりました。自分でつけてみますので、少し起こしてくださいませんか。」
「仕方ありませんね。では起こしますね。よっこいしょっと。」
メリアドールさんの上体をゆっくりと起こし、俺は後ろを向く。
病魔に蝕まれていたせいか、凄く軽く感じる。
しばらくして確認してほしいとの事だったので、背中を見て大丈夫と判断した。
「前の部分は見ないのですか?」
「はい。見ません。」
「乳が出ているかもしれませんよ。」
「ご自身でカップというか下着の膨らみの中に入れてくださいね。
で、キツくないですか。」
「ふふふ。ちょうど良いですわ。」
「では、お休みください。そろそろヴォルテス様も戻って来ると思います。
俺はいったん宿に戻り、風呂に入って着替えをしてからもう一度ここに来ます。
それまではゆっくり休んでくださいね。」
「はい。分かりました。早く戻って来てくださいね。
そうでなければ、死んでしまいますよ。」
「はは…、死にはしないと思いますが、なるべく早く帰ってきます。」
ヴォルテスさんが戻り、経過は順調である事、料理を置いておくので8時頃に一度食事についてメリアドールさんの食欲があれば出して欲しい事、そして、一旦風呂と着替えのために戻ることを伝えると了承してくれた。
厨房に行き、豆腐とお粥を準備しておく。
あと数時間もすれば料理人さんも来てくれるだろう。
俺も少し眠りたい。
今は朝4時か…。2時間は確実に寝れるな…。
そんな事を思いながら宿へと足を向ける。
宿に到着し、部屋に静かに入る。
残念ギャルズ達は寝ている。
良かった…。
俺は着替えをし、先ずはこの眠気を解消する。ただ、寝過ごすといけないな…と思いながら眠りに落ちていった…。
自然な振りをして手を離そうとするも、メリアドールさんが手を握ってきた。
「こうしていると落ち着きます。」
「それは俺じゃなく、ヴォルテスさんとかで…。」
「子供に手を握ってもらう事って、なんか死ぬ時のような気がします。」
「はは、そうかもしれませんね。
状態も安定していますよ。再生魔法は気分が悪くなることもありますから、気になったことがあれば何でも言ってください。」
「では、胸が苦しいです。」
「え!胸ですか?
左胸でしょうか?それとも脇ですか?」
「ほんとに可愛いお方ですね。
齢は50でしたか?でも瞳と心は少年のようなお方です。」
「は? へ?」
「胸が苦しいのは、カズさんとこうして居ることができるからなんですよ。」
「ん?」
「好きな方と一緒に居られること、好きな方に手を握っていただけること、それだけで胸が苦しくなってきます。」
「はぁ…、そういうものでしょうか。」
「そういうものです。」
でもね、メリアドールさん、それは空の巣症候群を脱却するための代替、つまり置換だから。
「今、メリアドールさんは情緒が揺れているんですよ。
先ほどもお話ししましたが、子どもが成長した事により達成感よりも虚無感の方が大きくなってしまったんです。
それに、お孫さんが生まれれば、そちらに目が向きますよ。
今は一種の気の迷いです。」
「そうかもしれませんね。
でも、カズさん、女性からこんな事を言われるとどうですか?」
「あ、そう言えば、ディートリヒもナズナ、ベリルもスピネルも、そんな事を言ってきました。」
「そうなんですね。で、カズさんはそれに応えたと。」
「そうです。皆で助け合って生きて行こうと思っています。」
「その中に私はおりませんか?」
「あの…、メリアドールさんは貴族で王族の血を引いているんですよ。
そんな人が国のことも知らない“渡り人”についてきても何の得にもならないと思いますが。
それに貴族って、いけ好かないんです。」
「カズさんは正直ですね。
でも、私の役目はもう終わったのです。ヴォルテスとソフィアを産み、これで王家の血を残すことができました。そして、後はこの館に押し込まれたまま、齢をとっていくだけです。
同じ事を何度も言うようですが、そんな生活には我慢できません。」
「でも、俺は貴族なんてイヤですよ。」
「私が身分を離れれば良いだけですよ。」
「は?身分を離れるという事は王族ではなくなるという事ですけど…、それでいいんですか?」
「はい。」
「ダメです。」
「何故ですか。」
「スティナ様、ソフィア様が不安になります。皇族であるが故、上位の方が居なくなれば、その仕事などはスティナ様とソフィア様にかかってくるんですよ。
メリアドールさんが今まで行っていた仕事を放置して娘さん方に押し付けるなんて、メリアドールさんには出来ないと思います。
それと、そういった話はお一人で決めるものではありません。
しっかりとご家族とお話ししなくてはいけませんよ。」
「堂々巡りなんですね。」
「いえ、すべてはご家族と話し合えば良いという事です。」
「やはり、カズさんは情熱的な部分は外にお出しにならないのですね。」
「はは、それは分かりませんよ。
さぁ、もう休んでください。休んでいただけないと明日の面会もできなくなりますよ。」
「そうですね。必ず面会を実現できるように体力を付けないと、今後の話にも繋がりませんものね。
あ、ひとつお願いがあります。
私が頑張れるよう、何かおまじないをして欲しいのですが…。」
「頑張らなくても良いですよ。そこは踏ん張ってくださいね。
では、おまじないを…。ムニャムニャ…。『光の加護』」
メリアドールさんがほのかに輝く。
「カズさん、これは何でしょうか。」
「ははは、俺にも分からないです。ただ、メリアドールさんのオーラが輝くくらいですかね。」
「それですと、聖女になってしまいますね。
あ、でも聖女は生娘しかなれませんから私は何でしょうか?」
「何でしょうね。神の加護を受け病気を克服したって事ではないですかね?」
「そうなってしまうと、私の夢がどんどん遠のいていきますので、神の加護はやめましょう。
そうですね…、身体中からマナが溢れてしまうということにいたしましょうか。」
「ははは、それも良いかもしれませんね。
さぁ、もうお休みになってください。」
「もう、ほんとにつれないんですね。こういった時は、男性は女性に何かお渡ししていただけるものですよ。」
「あ、そうなんですね。
うーん…。では、これを渡しておきますね。」
俺はスポーツブラセットを出した。
「これは下着ですか?」
「下着の種類の一つだと思ってください。
売り出すものとは違いますが、これは胸をホールドするものです。
もし、スティナ様、ソフィア様やメイドさんが興味を示されても、まだ売り出していないものなので、お渡しすることができませんので…。」
「それは、肌身に付けるものという事ですね。」
「まぁ、そうなります。」
「では、つけてください。」
「あの…、そうなるとメリアドールさんの裸を見てしまうことになりますよ。」
「構いません。」
「俺は構います。」
「つれないですね。」
「こんなところで噂になったら、これから売り出すものにも影響がありますからね。
では、これ以外で何か探しま…」
「いえ、これで構いません。寧ろカズさんと一緒に居れると思うと…ゴニョゴニョ…。」
いかん。スルーしておこう。
「これは伸びる素材で作っていますが、作り方は俺しか知らないとしてくださいね。
付け方は簡単ですので。」
「分かりました。自分でつけてみますので、少し起こしてくださいませんか。」
「仕方ありませんね。では起こしますね。よっこいしょっと。」
メリアドールさんの上体をゆっくりと起こし、俺は後ろを向く。
病魔に蝕まれていたせいか、凄く軽く感じる。
しばらくして確認してほしいとの事だったので、背中を見て大丈夫と判断した。
「前の部分は見ないのですか?」
「はい。見ません。」
「乳が出ているかもしれませんよ。」
「ご自身でカップというか下着の膨らみの中に入れてくださいね。
で、キツくないですか。」
「ふふふ。ちょうど良いですわ。」
「では、お休みください。そろそろヴォルテス様も戻って来ると思います。
俺はいったん宿に戻り、風呂に入って着替えをしてからもう一度ここに来ます。
それまではゆっくり休んでくださいね。」
「はい。分かりました。早く戻って来てくださいね。
そうでなければ、死んでしまいますよ。」
「はは…、死にはしないと思いますが、なるべく早く帰ってきます。」
ヴォルテスさんが戻り、経過は順調である事、料理を置いておくので8時頃に一度食事についてメリアドールさんの食欲があれば出して欲しい事、そして、一旦風呂と着替えのために戻ることを伝えると了承してくれた。
厨房に行き、豆腐とお粥を準備しておく。
あと数時間もすれば料理人さんも来てくれるだろう。
俺も少し眠りたい。
今は朝4時か…。2時間は確実に寝れるな…。
そんな事を思いながら宿へと足を向ける。
宿に到着し、部屋に静かに入る。
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