地方公務員のおっさん、異世界へ出張する?

白眉

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第十章

10-17 温泉発見!

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 どす黒い顔をやめて、山を登り始める。
そろそろ一つ目の山頂付近か…。
煙も近くに見え始めた。そして硫黄の匂いも強くなってきた。

「やっぱりあった。」
「お館様、何があったのですか?」
「みんな、あそこを見てみなよ。白い煙の下にお湯が沸いているだろ。
 あれが今日見つけたかったモノなんだ。」
「え、お湯なら魔道具で出ますけど。」
「ふふ、魔道具では出ないお湯なんだよ。
 さぁ、近くに行こうか。」

 岩肌を歩きつつ、目的の場所に到達する。

「これが温泉だ!」
「温泉って…、カズ様が以前仰っていたお湯の事ですか?」
「そうだ。それがこれだ。」

 温泉に恐る恐る手を入れる。熱い…。熱すぎる…。

「大分熱いな…。それじゃ、少し土魔法をかけるとするか。」

 少し離れた平らな場所にディグで縦横10mくらい、深さ60㎝くらいの穴を掘り、周りを石で固める。
そこに先ほどの源泉箇所に水路を繋ぎ、この穴に持ってくるようにする。

「ベリル、すまないが周りの土と石をベリルの土魔法と火魔法で固めてくれないか。」
「主殿、分かりました。」

 ベリルが回りを固めている間、水路を作っていく。

「主殿、出来ました。」
「ありがと。んじゃ、こっちと繋ぐよ~。」

 源泉部分の最後の土を取り除き、水路に温泉が流れて行き、向こう側の穴、つまり湯船に集まっていく。多分これだけの水路と穴であれば、多少熱くても入ることができる温度になるだろう。
湯船側に行き、温泉が溜まっていくのを全員でジーと見ている。

 なかなか溜まらないので、皆にその辺にある鉱物を鑑定するようお願いした。

「お館様、この“いおう”というモノは何ですか?」
「お、流石ナズナだな。一番に見つけるとは。」
「うふふ。もっと褒めてください。」
「それじゃ、栄えある温泉に入る一番の権利をあげよう!」
「いえ、それはお館様が一番ですので。」
「んじゃ、一緒に入ろう。」
「はい。」

 ナズナがクネクネし始めた。
他の子もいろんな鉱物を持ってくる。
ただ、この地で一番大切なモノは硫黄だ。

「さて、そろそろ温泉が溜まって来たから、みんなで温泉に入ろうか。」

 皆で温泉に入る。勿論、俺とナズナが一番に入る。
少し熱いがお湯がぬるぬるしていて少し硫黄の匂いがする。

「さて、少しみんなに話しておきたいことがあるから聞いてほしい。」

 皆が俺の方を向く。

「さっき、ナズナが持ってきた硫黄というモノは、この温泉にも入っている。
 お湯から上がったら分かるけど、肌がツルツルになるんだ。
それにこの硫黄は、レルネさんやスピネル、ミリーがこの物質の大切さを理解してくれると思うが、簡単に言えば、いろんな用途に使われるって事だ。」
「お館様、いろんな用途とは、具体的には何でしょうか。」
「そうだな…、例えば皮膚の荒れを治す軟膏だったり、下着に使われているゴムを強化するものだったり、ワインの酸化防止にも使われている。
 それに、皆に知ってもらいたいのは、これが戦争などに使われることもあるという事だ。」
「どうして、そのようなモノを私達に教えていただけるんですか?」
「多分、これから先、誰かが発見し作るものだからだ。
 この硫黄に、ある物質とある物質を混ぜると“火薬”というものが出来る。
その“火薬”というのは、ベリルが火の玉を前方で弾けるものがあるだろ。あれを魔法無しで出来ると言うモノなんだ。」
「では、魔物を倒すときには楽…、あ…、主殿は戦争と…。」
「そうだ…、ヒトとヒトが争う際に使われるって事なんだ。
 それを自然にあるモノから精製してしまうという事になる…。
 俺の知識は、そういうモノもあるという事を覚えておいて欲しいんだ。
 だから、そういった知識を使おうとした時は、皆で俺を止めて欲しい…。」

 俺は皆に頭を下げる。

「俺は、皆に笑顔になってもらいたくていろんな事を教えていくし、教えたい。
 これは一部のヒトには言ったけど、この世界でいけば、数百年先の文化や文明なんだ。
 その文化や文明をこの世界に出していいのか否かを葛藤しているという事を理解してもらいたい。」

 馬車を改良した時から、ちぐはぐな感情が生まれていた。
ヒトを笑顔にしたい。そのために俺の知識と経験を世に出していく。しかし、行き過ぎた知識や経験を出していけば、ヒトは堕落する。
それに、ヒトとヒトとが争うモノを作るべきではない。
もしそういったモノを作るのであれば、管理下に置かないと…。

「カズ様、大丈夫です。私達がカズ様をお助けします。」

 ディートリヒが俺の後ろからゆっくりと抱いてくれる。
右肩にはナズナが、左肩にはベリル、そしてアイナもミリーもニコルも傍に来てくれる。

「皆、すまない。」
「ニノ様、私はまだ日が浅いですが、ニノ様の心の中には何かぽっかりと穴が開いているような感じがします…。それを埋める事ができるのかどうかは私達には分かりません。
 でも…、それでも…、私たちはニノ様と一緒に生きたい。そう思っております。」
「社長、難しい話はわたしには分かりません。
でも、社長とこうやっていろんなところに行き、いろんなモノを見て、いろんなモノを作り、いろんな思いを持つってことは、皆ワクワクしているんですよ。
 今度は、何しでかすんだろうって。」
「お前、おセンチな気分な俺を思いっきりディスってないか。」
「いえ、元気づけているんですよ。」
「お前、最悪なのか最高なのか分からんな。
 でも、ありがとな。少し元気出たよ。」
「え~、これだけ踏ん張って元気づけてるんですから、何かご褒美が欲しいですね。」

 アイナが座っている俺の腿の上に可愛いお尻を乗せてきた。

「アイナ…。こんなところではしないぞ。」
「え~、別に良いじゃないですか?みんなも見ている事ですし。」
「お前、そういう趣味があるのか?」
「何でも構いませんよ。社長と一つになれれば、私はそれだけで嬉しいですからね。」
「イチ様、では私も…。」
「ズルい、ニノ様、私もです。」

 ヤバい。このままいけば温泉で大運動会になる。
でも、温泉は湯あたりする子もいるだろう…。

「だめ。シェルフールだよ。
 さて、みんな湯あたりするから、皆出よう。」

 3人は物欲しそうな表情、残り3人はホッとしている。

「さて、皆、肌はどうかな?」
「カズ様、肌がツルツルしています。」
「何故こんなにツルツルになるんですか?」
「まぁ、それが硫黄の効果というか、温泉の効果なんだ。
 だから、クローヌを収める事になったら、俺はクローヌの街に温泉を掘り、温泉街を作りたい。
 それと、公共浴場を作って、みんなに風呂文化を伝えたいんだ。」
「カズ様、先ほどのお話になりますが、温泉と公共浴場は、ヒトが争うものにはならないと思いますので、私はカズ様のお考えに賛成です。」
「お館様、温泉は素晴らしいです。
 ただ、尻尾が少し臭くなるのは避けたいので、普通のお湯で洗い流せると良いです。」
「主殿、是非本館にあるサウナという施設も作ってください。」

 皆、瞳が輝いている。
それほどまで風呂が好きになっているんだな。

「よし、それじゃ温泉と公共浴場をみんなで作ろう!」
「はい!(((((はい!)))))」

 温泉をそのままにして、山を下りる。
温泉があることが分かった。あとは温泉を掘ることができれば完璧なわけだ。
それに俺たちが住む場所もおおよその候補地は見つけた。

「みんな、少しいいか?」

 皆が俺の方を向く。

「みんなに聞きたいんだけど、あの場所に俺たちの家を建てないか?」

 指さした先には、小高い丘というか山の上、反対側は崖となっている場所だ。
スロベニアにあるブレッド城のような場所だ。
ここに館を建てる!

「皆と一緒にこの場所で過ごしていきたい!」

皆がにっこりと頷く。

「ようやく、カズ様が何かを欲しいと言ってくださいましたね。」
「そうですね。ディートリヒさん。お館様が初めて欲求を出されました。
 こうしてはおられませんね。」
「主殿、流石です。ここは要塞のような場所ですね。守りやすい場所です。」

 いや、戦争はしないから…。
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