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にょっきりと手だけを出した雪華はリモコンを掴むと慣れた様子でザッピングを始めた。散々笑っておきながら番組に飽きたのだろう。適当にチャンネルを回している。
ふいに、たまたまぶつかったチャンネルに見覚えのある姿が映った。えっ、と声が漏れる。
大きな画面いっぱいに真っ白な雪原が映っていた。びゅうびゅうと吹雪く風の音のなかに興奮気味な声がまざった。
『おい、見たか?』
『なんだよ、あれ』
風の音に負けないような大声。
深い雪に覆われた山の中。吹雪の中を突き進む数人の男性が、興奮しきった声を上げている場面が流れている。
そして遠くに映るのはおおきくのっそりとした人らしき姿。素早い動きで画面を移動している。色のない世界に黄色が目立つように動いた。
『おい! 待てっ」
『追え追え追え』
ガサガサと防寒着がこすれる音とハアハアと荒い息づかいが緊迫感を煽っている。膝より上まで雪に埋もれながら男たちは黄色を追いかけている。
雪は舞い上がりダンスを踊るように渦巻くと前を行く生き物の姿を消した。
『消えたぞ』
『あれって……雪男……?』
その後グルっとカメラを回してもただ雪だけが降り積もり『なんだったんだ』という呟きで画面が変わった。
明るいスタジオに切り替わりニュースキャスターが真面目な顔でコメントを述べている。どうやらニュース番組だったらしい。
『こちらは今ネットを駆け巡っている動画ですね。〇〇市付近の山奥で撮影されたようです。謎の生物は一体何だったのでしょうか』
『人にも見えましたがあんなところに何故いたのでしょうか』
『不思議で』
コメントの途中で画面は真っ暗に消えた。リモコンを手にした雪華が、コタツの中からジトっとした視線を向けて唇を尖らせている。
「未確認生物の雪男は本当に存在しているのか……だって」
キャスターの言葉をそのまま拾って雪華は不貞腐れたように文句を垂れた。
「俺より先にテレビデビューですか。晃成サン」
「そういう問題では……」
慌ててもうチャンネルをつけると同じ画面がスローで流れていた。たぶん、というか間違いなく画像に映っていたのは晃成だ。
あの黄色はお気に入りのショピングバッグだ。ああ、白いマイバッグにしておけば見つからなかったかもしれないのに! あんな目立つ色を持たなきゃよかった。
荒れ狂う吹雪の中で買い物に出たのがまずかったのだろうか。こんな天気じゃ誰も外に出ないだろうとわざと出かけたのが裏目に出たのか。
油断した。
前どころか上も下もわからなくなる視界の悪さでよく見つけたもんだ。
「こんな辺鄙な場所まで何しに来たんだか。映すならこの超絶美形の俺だろっての」
ブツブツとこぼす雪華を後目に晃成はチャンネルを回した。他にもやっていないだろうかと確認する。だけどのんきに美味しいものを食べている番組ばかりで少しだけホッと胸をなでおろした。
「やばくないですか」
見つからないように人里離れた雪山の中に住んでいる存在を人間に知られるわけにはいかない。
なぜなら雪華は人間じゃないから。
普段はジャージ一択というゆるい姿をさらしているけど、本性は違う。
一目見ただけで魂を抜かれそうな冷たい美貌。
視線が合うと誘い込まれ自我を失う。流れる銀色の長い髪は吹雪を呼び、口から吐き出される呼気は冷たく触れるものを凍らせていく。
細くしなやかな身体が動くたび、辺りの空気の温度はビキビキと下がっていく。
すべての生命が彼の気持ち一つに委ねられている。
それが雪の王、雪華の本当の姿だ。
ふいに、たまたまぶつかったチャンネルに見覚えのある姿が映った。えっ、と声が漏れる。
大きな画面いっぱいに真っ白な雪原が映っていた。びゅうびゅうと吹雪く風の音のなかに興奮気味な声がまざった。
『おい、見たか?』
『なんだよ、あれ』
風の音に負けないような大声。
深い雪に覆われた山の中。吹雪の中を突き進む数人の男性が、興奮しきった声を上げている場面が流れている。
そして遠くに映るのはおおきくのっそりとした人らしき姿。素早い動きで画面を移動している。色のない世界に黄色が目立つように動いた。
『おい! 待てっ」
『追え追え追え』
ガサガサと防寒着がこすれる音とハアハアと荒い息づかいが緊迫感を煽っている。膝より上まで雪に埋もれながら男たちは黄色を追いかけている。
雪は舞い上がりダンスを踊るように渦巻くと前を行く生き物の姿を消した。
『消えたぞ』
『あれって……雪男……?』
その後グルっとカメラを回してもただ雪だけが降り積もり『なんだったんだ』という呟きで画面が変わった。
明るいスタジオに切り替わりニュースキャスターが真面目な顔でコメントを述べている。どうやらニュース番組だったらしい。
『こちらは今ネットを駆け巡っている動画ですね。〇〇市付近の山奥で撮影されたようです。謎の生物は一体何だったのでしょうか』
『人にも見えましたがあんなところに何故いたのでしょうか』
『不思議で』
コメントの途中で画面は真っ暗に消えた。リモコンを手にした雪華が、コタツの中からジトっとした視線を向けて唇を尖らせている。
「未確認生物の雪男は本当に存在しているのか……だって」
キャスターの言葉をそのまま拾って雪華は不貞腐れたように文句を垂れた。
「俺より先にテレビデビューですか。晃成サン」
「そういう問題では……」
慌ててもうチャンネルをつけると同じ画面がスローで流れていた。たぶん、というか間違いなく画像に映っていたのは晃成だ。
あの黄色はお気に入りのショピングバッグだ。ああ、白いマイバッグにしておけば見つからなかったかもしれないのに! あんな目立つ色を持たなきゃよかった。
荒れ狂う吹雪の中で買い物に出たのがまずかったのだろうか。こんな天気じゃ誰も外に出ないだろうとわざと出かけたのが裏目に出たのか。
油断した。
前どころか上も下もわからなくなる視界の悪さでよく見つけたもんだ。
「こんな辺鄙な場所まで何しに来たんだか。映すならこの超絶美形の俺だろっての」
ブツブツとこぼす雪華を後目に晃成はチャンネルを回した。他にもやっていないだろうかと確認する。だけどのんきに美味しいものを食べている番組ばかりで少しだけホッと胸をなでおろした。
「やばくないですか」
見つからないように人里離れた雪山の中に住んでいる存在を人間に知られるわけにはいかない。
なぜなら雪華は人間じゃないから。
普段はジャージ一択というゆるい姿をさらしているけど、本性は違う。
一目見ただけで魂を抜かれそうな冷たい美貌。
視線が合うと誘い込まれ自我を失う。流れる銀色の長い髪は吹雪を呼び、口から吐き出される呼気は冷たく触れるものを凍らせていく。
細くしなやかな身体が動くたび、辺りの空気の温度はビキビキと下がっていく。
すべての生命が彼の気持ち一つに委ねられている。
それが雪の王、雪華の本当の姿だ。
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