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人間には考えられない速さでふもとのドラッグストアにつくと、雪華はキラキラと瞳を輝かせてお菓子コーナーやアイスケースを覗き込んでいる。食べ物がなくても生きていける雪華にとって食事は晃成に合わせてのごっこ遊びらしい。
本当に美味しいのはごはんよりも甘いデザートだと言い張る。
ローションを買いに来たはずが買い物かごにたくさんのお菓子が放り込まれてあっという間にいっぱいになる。
「ちょっと雪華サン、こんなにお菓子ばっかり食べたら太りますよ。ただでさえゴロゴロしているんだから」
晃成の小言に「セックスすればその分消費できるから問題ナシっ」と笑いかけた。すれ違ったお客さんがギョッとしたように振り返る。
「こんな場所で! そんなハレンチな言葉を出さないでください」
慌てて口を押えると手のひらをベロリと舐められた。真っ赤になってひっこめようとする手を捕まえてもう一度指の股に舌を這わす。
「誰も見てないよ」
高ぶりを愛するようにベルベットの柔らかさが動く。
晃成は全身を真っ赤に染めた。これくらいで感じてしまう自分も情けない。声を押し殺すように口を押えた。
「雪華さん……それ以上、は、ちょっと……っ」
引っ込めようとすると最後に指先にチュっと音を立てるキスを送り、やっと離してくれた。手のひらがジンジンと敏感になっている。
「ちょっとトイレに行ってくるので……カート、見ていてください」
「はーい。ごゆっくりー」
笑いを含んだ声色にさらに頬を染めた。
しっかりと興奮を萌した下半身が痛いくらいに張り詰めている。うつむきながらトイレの個室へと駆け込んだ。
ズボンを下げると勢いよく飛び出した。
「ほんとにあの人は……っ」
先端はいじらしいしずくを零し臨戦態勢だ。こんな場所で行為に及ぶのも憚られ、むりやり用を足した。もう少し待てば通常に戻るだろう。
ため息をつきながら腰を掛けていると、ドアが開く音がしてどやどやと人が入ってきた。数人いるのだろう賑やかになる。
「つーかどこにいんだよあいつ」
ガラの悪そうな声がドア越しに聞こえた。聞くつもりはないのに大きな声は嫌でも耳に届いた。
「せっかくニュースにも出て再生数もあがってたっつーのに。この天気で全然見つかんねー」
「いい加減捕まってくんねーかなあ。ゆ・き・お・と・こ・くん」
「ただのでっかいオッサンでもそれっぽければいいよな。フルボッコでいきゃ捕まえられるだろ」
馬鹿にした響きに一斉に笑いが起こる。
まさか、と思うけど間違いない。
こいつらが晃成を見つけて晒した奴らだ。ギリっと唇をかんだ。
今飛び出していったらやめさせることはできるだろうか。
これ以上付きまとうなと脅したら。
だけど騒ぎになって人が集まってきた方がやっかいだ。それこそたくさんのカメラを向けられてしまう。
一緒にいる雪華に害が及んだらと思うのも怖かった。
あの人だけは守らなくては。
奴らが出ていくのを確認してから、そっと個室を出た。
とにかく雪華に報告しなければ。何も知らずにいたら雪華まで一緒につかまってしまう。彼らに見つからないルートを探して、早く家に帰ろう。
トイレから出て雪華を探した。
彼を一人にしたことが突然怖くなる。目を惹く美貌にあいつらが群がっていく想像が膨らんで自然と早足になった。
雪華はすぐに見つかった。満足そうにカートにジュースを入れている。危ないことは何もなかったようでほっと息をついた。
「雪華さん」
「おー。遅かったじゃん。気持ちよかった?」
「そうじゃなくて!」
いつもの調子の彼を見たら力が抜けた。
緊張していたのだ。
へたりと座り込んだ晃成に驚いたように近づいてくる。
「どうした。うまくイけなかったの?」
「……違います」
晃成は彼の腕を掴むと、「何もなくてよかった」と小さく笑った。
雪華にトイレでの出来事を報告すると、静かに聞いていた雪華の温度が一瞬で下がる。
雪華の身体からキラキラとダイヤモンドダストが散る。
「しょーもね奴らだなー」
雪華はそう吐き捨てると大量にローションをカゴにいれレジへと並んだ。黙っていると怖いくらいの美貌が静かな怒りをたたえている。
普段のホワホワした姿はなりを潜め、うかつに声をかけられない雰囲気があたりと圧巻した。
外の出るとまたもや暴風雪で自分の足元さえ見えないくらいの雪が吹き荒れていた。まるで雪華の気持ちを表しているように風雪が渦巻く。
「晃成、ちょっとおいで」
雪華は着ていたコートに晃成を包むと、強く抱きしめた。手に持っていた袋がガサリと音を立てる。
「やっぱでかいからはみ出すな」
コートからはみ出す晃成を笑う雪華はいつもの柔らかさを取り戻している。
「ちょ、雪華さんっ人前……」
「しっかり捕まってろ」
え、と思った瞬間には景色が変わっていた。
何か起きているのか考える間もなく遥か下に白く煙る雪原が見えていた。
「雪華さ、」
次の瞬きで自宅の玄関の前にいた。
本当に美味しいのはごはんよりも甘いデザートだと言い張る。
ローションを買いに来たはずが買い物かごにたくさんのお菓子が放り込まれてあっという間にいっぱいになる。
「ちょっと雪華サン、こんなにお菓子ばっかり食べたら太りますよ。ただでさえゴロゴロしているんだから」
晃成の小言に「セックスすればその分消費できるから問題ナシっ」と笑いかけた。すれ違ったお客さんがギョッとしたように振り返る。
「こんな場所で! そんなハレンチな言葉を出さないでください」
慌てて口を押えると手のひらをベロリと舐められた。真っ赤になってひっこめようとする手を捕まえてもう一度指の股に舌を這わす。
「誰も見てないよ」
高ぶりを愛するようにベルベットの柔らかさが動く。
晃成は全身を真っ赤に染めた。これくらいで感じてしまう自分も情けない。声を押し殺すように口を押えた。
「雪華さん……それ以上、は、ちょっと……っ」
引っ込めようとすると最後に指先にチュっと音を立てるキスを送り、やっと離してくれた。手のひらがジンジンと敏感になっている。
「ちょっとトイレに行ってくるので……カート、見ていてください」
「はーい。ごゆっくりー」
笑いを含んだ声色にさらに頬を染めた。
しっかりと興奮を萌した下半身が痛いくらいに張り詰めている。うつむきながらトイレの個室へと駆け込んだ。
ズボンを下げると勢いよく飛び出した。
「ほんとにあの人は……っ」
先端はいじらしいしずくを零し臨戦態勢だ。こんな場所で行為に及ぶのも憚られ、むりやり用を足した。もう少し待てば通常に戻るだろう。
ため息をつきながら腰を掛けていると、ドアが開く音がしてどやどやと人が入ってきた。数人いるのだろう賑やかになる。
「つーかどこにいんだよあいつ」
ガラの悪そうな声がドア越しに聞こえた。聞くつもりはないのに大きな声は嫌でも耳に届いた。
「せっかくニュースにも出て再生数もあがってたっつーのに。この天気で全然見つかんねー」
「いい加減捕まってくんねーかなあ。ゆ・き・お・と・こ・くん」
「ただのでっかいオッサンでもそれっぽければいいよな。フルボッコでいきゃ捕まえられるだろ」
馬鹿にした響きに一斉に笑いが起こる。
まさか、と思うけど間違いない。
こいつらが晃成を見つけて晒した奴らだ。ギリっと唇をかんだ。
今飛び出していったらやめさせることはできるだろうか。
これ以上付きまとうなと脅したら。
だけど騒ぎになって人が集まってきた方がやっかいだ。それこそたくさんのカメラを向けられてしまう。
一緒にいる雪華に害が及んだらと思うのも怖かった。
あの人だけは守らなくては。
奴らが出ていくのを確認してから、そっと個室を出た。
とにかく雪華に報告しなければ。何も知らずにいたら雪華まで一緒につかまってしまう。彼らに見つからないルートを探して、早く家に帰ろう。
トイレから出て雪華を探した。
彼を一人にしたことが突然怖くなる。目を惹く美貌にあいつらが群がっていく想像が膨らんで自然と早足になった。
雪華はすぐに見つかった。満足そうにカートにジュースを入れている。危ないことは何もなかったようでほっと息をついた。
「雪華さん」
「おー。遅かったじゃん。気持ちよかった?」
「そうじゃなくて!」
いつもの調子の彼を見たら力が抜けた。
緊張していたのだ。
へたりと座り込んだ晃成に驚いたように近づいてくる。
「どうした。うまくイけなかったの?」
「……違います」
晃成は彼の腕を掴むと、「何もなくてよかった」と小さく笑った。
雪華にトイレでの出来事を報告すると、静かに聞いていた雪華の温度が一瞬で下がる。
雪華の身体からキラキラとダイヤモンドダストが散る。
「しょーもね奴らだなー」
雪華はそう吐き捨てると大量にローションをカゴにいれレジへと並んだ。黙っていると怖いくらいの美貌が静かな怒りをたたえている。
普段のホワホワした姿はなりを潜め、うかつに声をかけられない雰囲気があたりと圧巻した。
外の出るとまたもや暴風雪で自分の足元さえ見えないくらいの雪が吹き荒れていた。まるで雪華の気持ちを表しているように風雪が渦巻く。
「晃成、ちょっとおいで」
雪華は着ていたコートに晃成を包むと、強く抱きしめた。手に持っていた袋がガサリと音を立てる。
「やっぱでかいからはみ出すな」
コートからはみ出す晃成を笑う雪華はいつもの柔らかさを取り戻している。
「ちょ、雪華さんっ人前……」
「しっかり捕まってろ」
え、と思った瞬間には景色が変わっていた。
何か起きているのか考える間もなく遥か下に白く煙る雪原が見えていた。
「雪華さ、」
次の瞬きで自宅の玄関の前にいた。
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